高層天気図
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高層天気図(こうそうてんきず)とは、上空の気象状態を観測結果から描いた天気図のこと。
[編集] 概要
気球に観測機材を積んだラジオゾンデ(主にレーウィンゾンデやGPSゾンデ)と呼ばれる無線機付き測器を上空に飛ばし、上空の気象状態を観測した結果を使用して描く。この際に上空の風に流される様子を捉えることでその地点の風向、風力を観測する。高層天気図に対し、地表(海面)付近の気象状況を表したものを地上天気図という。
高層天気図と地上天気図の大きな違いは、地上天気図ではその地点の気圧を表記し同じ気圧の地点を結んだ等圧線を記述するが、高層天気図では同じ気圧の高度を記述し、同じ高度を持つ地点を結んだ等高度線を記述していることである。 一般的には850hPa、700hPa、500hPa、300hPaなど決まった気圧の天気図を作成する。天気予報には欠かせないものである。
等圧面で解析する理由は、ラジオゾンデは気圧を直接測定しており、地上の気圧と温度がわかれば測高公式から高度を算出するのでデータを得やすいこと、さらには等高度の解析では測定が難しい密度を扱わなければならないが、等圧面で解析することで密度項を扱わなくてもよいので解析が簡単になることなどが上げられる。
[編集] 代表的な高層天気図の等圧面
- 850hPa
- 対流層下層を代表する層で、地上の摩擦力などの影響がなくなる高さにあたる。主に前線の解析や、相当温位から暖気移流、寒気移流などを解析する。この高さの気温が-6度以下の場合冬に雪が降る目安といわれる。海抜高度では約1,300~1600m付近(気温、湿度、地上気圧、重力加速度等によって変動する。以下同じ)に相当する。
- 700hPa
- この層では収束、発散が少なく、上昇流( p 速度)を解析できる。上昇流が強ければ対流が強いということで、対流雲の発生と悪天候が予想される。また、気温から露点温度を引いた湿数が3度以下の地域は雲が発生している可能性が高く、雲の位置がおおよそ解析できる。海抜高度では約2,700~3,100m付近に相当する。
- 500hPa
- 中層を代表する層で、高層気象図の代表格。主に中層の移流や気圧の谷、峰を解析し、また寒冷渦(寒冷低気圧、切り離し低気圧、カットオ・フロー)などの存在を解析する。寒気については冬に-36度以下の場合大雪になる可能性があるので、天気予報でよく耳にする「寒気が上空に入って」「寒気の影響で」「この冬一番の寒気」と呼ばれるのはほとんどがこの-36度の等温線が日本にかかったときなどの表現となる。海抜高度では約4,900~5,700m付近に相当する。
- 300hPa
- 上層を代表する層で、ジェット気流を解析する。海抜高度では約8,500~10,000m付近に相当する。
[編集] 関連項目
- 高層気象観測
- 高層気象
- 測高公式