でっち上げ
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でっち上げとは、私利私欲や政治的目的などのために、特定の人物や集団を標的に選び、虚偽の事実によって犯罪の筋書きを捏造し、また作為的に事件を惹起して、犯人をスケープゴートに仕立て上げ、邪魔者として排除し追放していく情報操作や事件操作の技術をいう。フレームアップ (Frameup) とも呼ばれる。でっち上げの攻撃対象とされ犠牲となる側から見れば、それは虚偽を動員した悪質な策略、不当な陰謀ということになる。とりわけ政治的フレームアップは、歴史の転換期や変動期に、支配勢力や権力奪取を狙う側から社会的偏見に訴えかける政治謀略として仕掛けられ、有意味な対抗相手を不当に陥れ排除する事態画策の便法として利用される。
歴史的に有名なでっち上げ事例として次のものがある。
- 大逆事件。1910年の日本において数人の無政府主義者による爆弾試作を捉えて、明治天皇暗殺計画の角で多数の社会主義者を逮捕し大逆罪に仕立てて、幸徳秋水以下12名を死刑に処した。
- ドイツ国会議事堂放火事件。作為的に事件を仕組んで共産主義者の仕業と宣伝し、アドルフ・ヒトラーによるナチス独裁成立の重要な契機となった。1933年。
- サッコ・バンゼッティ事件。1917年のソビエト連邦成立を契機に、アメリカ合衆国において急激に高まった「赤」への恐怖からその犠牲となった。
- キーロフ暗殺事件。1934年12月、ソビエト国家に対する反共産主義的陰謀の角でレニングラードの党指導者セルゲイ・キーロフらが暗殺され、以後のヨシフ・スターリンによる大粛清の発端となった。
2004年のイラク日本人人質事件では、被害者の自作自演の証拠であるとして「ヒミツの大計画」と呼ばれる文書がインターネットに広まり、政府関係者からも自作自演を示唆する発言がなされた。
歴史的見地からも、でっち上げとは、典型的には政治的反対者を疎外し弾圧・粛清する政治謀略の技術、また社会的な偏見や不安・恐怖を動員して象徴的犠牲を有標化し記号化する技術である。高度大衆社会・管理社会において従来にも増して利用されかねない操作の技術である。ネットを媒介に急激に広まった「ヒミツの大計画」騒動がこの操作の有効性を示している。