アブラムシ
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?アブラムシ上科 | ||||||||||||||
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アブラムシはカメムシ目ヨコバイ亜目のアブラムシ上科(Aphidoidea)に属する1群の昆虫である。アリマキとも呼ぶ。植物の上でほとんど移動せず、集団で維管束に口針を突き刺して師管液を吸って生活する、小型で弱々しい昆虫である。しかし、繁殖力が強く、農作物につくものでは、作物に害を為し、ウイルス病を媒介することもあるので、農業や園芸の面から害虫として扱われる。アブラムシには多数の種類があるが、その種類に応じて宿主にされやすい植物がある。主に4月から6月に野菜・果樹の茎上や葉の表面・裏面に現れ始め、9月から11月には野菜・果樹から移動し、その後、主奇主植物で越冬する。また、アリと共生し、分泌物を与えるかわりに天敵から守ってもらうことがある。
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[編集] 生物的特徴
植物の師管液を吸う。体は太短くて柔らかく、他のヨコバイ亜目の昆虫のように飛んだり跳躍したりすることはない。羽根がある場合、膜状でちいさく、ふわふわと飛ぶ。しかし、羽根があるものはごく限られた期間に出現するだけで、多くのものは羽根を持たず、宿主植物上でじっと汁を吸っている。単為生殖で雌を産み(交尾を行わず生殖できるものを胎生雌虫と呼ぶ)、しかも卵胎生で子を産むことができ、短期間で激しく繁殖し、宿主上にコロニーを作る。繁殖力の強さは胎内にいる子の中に既に次の胚が準備されているほどである。
柔らかくて集団で生活しているので、これを補食する動物は数多い。 特に代表的な天敵は、ナナホシテントウ、ナミテントウなどのテントウムシ類と、ヒラタアブの幼虫である。
アブラムシ類は、自分自身の防御力が弱く、それを補うためか、アリに頼るものがある。(それゆえアブラムシの事をアリマキと呼ぶ事がある)。食物である師管液には大量の糖分が含まれるので、肛門からの排泄物には余剰の糖分が大量に含まれ、甘露と呼ばれる。しばしば、この甘露を求めてアリが集まる。中には、はっきりとアリとの共生関係を持ち、アリに守られて暮らすものもある。また、アブラムシの中には1齢幼虫と2齢幼虫の一部が兵隊アブラムシに分化して積極的に外敵に攻撃する真社会性ものもいる。この幼虫は成長せずに死ぬ。虫えいを形成するものでは、排出された甘露を幼虫が虫えい外に押しだして「掃除」を行うなどの社会性が見られる。
体内でブフネラという大腸菌近縁の細菌と共生しており、ブフネラは師管液からアブラムシにとって必要な栄養分を合成している。アブラムシはブフネラの生育のために特化した細胞を提供しており、ブフネラは親から子へと受け継がれる。ブフネラはアブラムシの体外では生存できず、アブラムシもブフネラ無しでは生存不可能である。
[編集] 防除法
有機リン系(マラチオン、MEP、アセフェート等)、合成ピレスロイド系(ピレトリン等)、クロロニコチル系(アセタミプリド等)などの多くの殺虫剤が有効である。しかし、最近の研究結果では、特に有機リン系や合成ピレスロイド系に対し、高い薬剤抵抗性を持つ傾向が顕著であるとの報告が多数ある。アブラムシは薬剤抵抗性を持ちやすいので、あまり同一の殺虫剤の散布を長期間繰り返すよりも、系統の違うもの(2~3種)を定期的に散布していく方法がある。また、最新の防除法として、アブラムシを捕食あるいは、アブラムシに寄生する多くの天敵類(寄生蜂類、テントウムシ類、ヒラタアブ類など)を利用した生物的防除が、ハウス栽培野菜を中心に実施されつつある。但し、天敵類の多くは薬剤に対して抵抗性を持たず、農薬との併用による総合的病虫害管理(IPM)を行う際には一考の余地が必要である。
また、葉を巻いてその中に潜む種類や、はっきりした虫えいを形成するものもある。このようなものは虫体に殺虫剤が接触しにくいので、浸透移行性のある殺虫剤が効果的である。
化学的なものを使用せずに除去する場合、脂肪分の多い牛乳を薄めたものを霧吹きで散布する方法が有効である。これは牛乳が乾燥するときにアブラムシの気門を塞いで、窒息死させるからである。
[編集] 分類
- アブラムシ科
- ワタアブラムシ(Aphis gossypii)
- カサアブラムシ科
- ネアブラムシ科
[編集] 外部リンク
- 有田ミカン(アブラムシの写真やテントウムシによる生物農薬について)
- カッティングエッジリサーチ(益虫による生物農薬について)
- 害虫駆除ドットコム(ブフネラなどアブラムシの情報も)
- グリーンコミュニケーション(アブラムシの詳細と防除剤についても)