エクラノプラン
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エクラノプランとは、旧ソ連で開発された地面効果翼機 (WIG)の総称で、平滑な地表面ないし水面上を機体の幅と同程度の高度を保って飛行し、それによって得られる地面効果を利用することで高速性と大量輸送を両立することを可能とするものである。
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[編集] 概要
冷戦期において、エクラノプランは大型かつ高速展開可能な輸送戦力として長期にわたってカスピ海沿岸部に配備されていた。"カスピ海の怪物"という俗称は、外側の翼を切り落とされた航空機のようにしか見えないこの機体を発見したアメリカの諜報機関によってつけられた名前である。 初期の小型機による実験の結果を元に大型のエクラノプランであるKMが作られた。KMは全長約100m、最大積載時の離床重量は540tにまで達し、水上数mを時速400km/h以上で巡航することが出来た。 設計上重要なことは、この機体は地面効果を利用するために機体のとる高度が増加するほど翼にかかる揚力が減少することである(参考:地面効果#航空機等における地面効果)。従ってこの種の機体は垂直方向に対して動的安定を維持する。つまり一度巡航速度に達してしまったエクラノプランは(何らかの原因で速度が落ちない限り)水面や氷面、あるいは地面といったものに対して決して接触することなく飛行することが出来る。 これらの機体は、第一にカスピ海および黒海で運用されることを念頭に置いた超高速(数100km/h)軍事輸送機関として旧ソ連で開発され、最大の機体は100t以上の貨物を積載できた。エクラノプランの開発はドミトリー・ウスチノフ(ソ連国防相)によって支援された。最初に約120機のエクラノプラン(A-90(オリョーノク))がソ連海軍省に導入される計画が立てられた。この数字は後になって30機以下へと削減されたが、それでも主に黒海およびバルト海艦隊に配備される計画が進められた。しかしながらウスチノフ提督が1985年に死去し、後任となった国防省大臣ソコロフ提督は事実上この計画への予算の配分を取りやめさせた。艇体を改設計されたうえで、稼動可能なA-90(オリョーノク)が3機のみと1機のLun級が結果的に建造され、Kaspiysk近くの海軍基地へ配備された。 ソビエト崩壊まで、エクラノプランはヴォルガ造船所[1]で製造されていた。
[編集] エクラノプランが登場するフィクション
- Seas of Crisis - Joe Buff
- メタルギアソリッド3 - 小島秀夫 (ゲームデザイナー)
- 機神兵団
[編集] 近況
2006年9月6日にオリョーノクとランのそれぞれ1機ずつのエクラノプランがKaspiyskに存在することがグーグルアースで観察された。近くの海岸にあった構造物はおそらく解体された3機目のエクラノプランであろう。Web上では[2]から3機すべてが確認できる。
[編集] 参考
- ペリカン (航空機) - ボーイング・スカンクワークスチームが構想している地面効果翼機。船舶と航空機の中間のコスト・輸送力・速度を目指して研究が進められている。
- AN-225, C-5 - 米露の大型軍用輸送機。特にAN-225の輸送能力は300tにまで達する。
- Be-2500 (航空機) - 開発中の地面効果翼機。
[編集] 外部リンク
- The WIG Page - WIGの歴史
- Commemorating the 85th anniversary of Rostislav Evgenievich Alexeev, an outstanding designer of highspeed ships
- Between Wind and Waves: Ekranoplans
- Graham Taylor's Model Research featuring footage of both model- and full-size ekronoplans
- Volga造船所 世界で唯一エクラノプランを製造している造船所