カラリオ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カラリオ (Colorio) は、セイコーエプソンが発売し、エプソン販売から販売するインクジェットプリンタ(インクジェットプリンタ複合機)・デジタルカメラ・スキャナの一般家庭向け製品のブランド名。デジタル技術を利用した写真環境の提案を事業戦略としている。
目次 |
[編集] 概要
1995年に前年のインクジェット方式のマッハジェットプリンタ(MJシリーズ)のヒットを受けて、1995年よりコンシューマー向けに「カラリオ」ブランドによるプリンタ・デジタルカメラ(カラリオ・フォト・CPシリーズ)・カラリオスキャナの販売を開始し、1996年11月にプリンタとしては稀にみる大ヒット製品であった「フォトマッハジェットプリンタPM-700C」を発売する。
その後、年を追う毎にカラリオシリーズは高性能化し、2002年には、褪色性や耐水性に優れていながらも発色で劣っていた顔料インクを写真向けに改良した「PXインク」を開発、「PM-4000PX」を発売した。2003年には発色と耐久性を更に強化した「PX-Gインク」を開発、「PX-G900」を発売した。
PM-700Cのヒットにより、1995年以来インクジェットプリンタのシェアトップだったキヤノンを1994年に続き再び逆転する。2004年はキヤノンに首位を譲るも、翌年には複合機を前面に打ち出しシェアトップに返り咲いている。
カラリオ・プリンタは、再現可能な色範囲が一般的なCMYKよりもずっと広く、その発色のよさはプロの写真家やデザイナー、イラストレーターなどからも一定の評価を得ている。
同時代の民生用他社製品に比べれば比較的解像度の高い製品が多く、印刷物に小さなインクの点が見えてしまうことにより、滑らかなはずの表面もザラザラして見えるという「粒状感」が少ないともされる。しかしながら、プリントヘッドが詰まりやすい、普通紙への印刷では文字の滲みが他社製品より目立つ点などはしばしば批判されることもある。
最近は銀塩写真に代わることのできるデジタル写真というあり方を強く意識しており、印刷したものの保存性を高めるという点にも力を入れてる他、空気中のオゾンによる退色を改善した「つよインク」や人物写真を中心とした画像補正機能「エプソンカラー」など業界に対する影響は大きい。
[編集] 主な製品
[編集] カラリオ・プリンタ
[編集] MultiPhoto Colorio
[編集] PM-700C
PM-700Cはインクの粒子を大幅に極小化するノズルを搭載した新開発のインクヘッドにより、発売当時最高水準の720dpi×720dpiの高解像度と、従来の4色カラーインクから6色カラーインク化により粒状性と階調表現力に優れたこの機種を、「超・写真画質」のキャッチコピーを売りにし発売した。家庭(個人)ユーザーでも手に届きやすい価格(メーカー標準小売価格59,800円)も相まって、後継機のPM-750C(1997年を11月発売。さらなる高性能化で1440dpi×720dpiの高解像度・印刷スピードが向上した。)が発売になるまで累計売上台数約70万台を記録した。
[編集] PM-770C
PM-770CはPM-750Cと同等の1440dpi×720dpiの高解像度に加え、当時世界最小6ピコリットルのドットサイズを実現している。ノズル数も倍化し、従来比1.5倍の印刷速度を実現している。また、従来機種では用紙下端に14mmのマージンが必要だったところを、上部、左右と同じ3mmのマージンに揃えた。これによって年賀状印刷により適したプリンタになっている。
[編集] PM-800C
PM-800CはPM-770Cと同等の解像度を確保し、更にインク滴を当時最小の4ピコリットルを達成する。※同年発表のキヤノンプリンタF850もインク滴で追随、印刷速度に至ってはエプソンの15分に対し、6分弱と圧倒していた。なお、印刷品質(デフォルトのガンマ調整により明るすぎるとの指摘がある)や耐候性などに関しては関連項目を参照のこと。
なお本機の一番の特徴は、トイレットペーパーのようなロール紙をもちいて、印刷後自分で不要な上下をカットすることで縁無し印刷を可能にしたことといえる。家庭用プリンタでは、紙を抑えられない最上部、最下部の印刷品質の低下が避けられず、マージンとして確保する必要があった。本機では、そうした技術的な問題を、ロール紙という形で回避し、写真屋(DPE)にあるような縁無し印刷を可能にした初めての機種といえる。
また、後期に発売されたPM-820CではA4に対応し、一部印刷において赤が黒っぽく印刷されるカラーマネージメント部分を改良していとされている。
[編集] PM-900C
PM-900Cはインク滴を最小2ピコリットル(正確には2.4ピコリットルと、後にITMediaで表明されている)を達成すると共に、インクジェットで難しいとされる暗の階調表現にダークイエローを追加。合計7色と多色化される。
また、昨年度に続き縁無し印刷を進化。A4カット紙における四面縁無し印刷を可能にする。※本年度のキヤノンは解像度を倍にする、印刷速度を1.5倍(エプソンは2倍)にする、インク更新など、基本機能の充実と保存性を上げる等対抗するに留まっている。
また、ディスプレイが苦手とする鮮やかな緑(ライトグリーン)表現などを鮮やかにする、エプソンナチュラルフォトカラーを実装し、エプソンカラーを革新する。
その他、CDにプリントできるようになり、後期発売されたマイナーチェンジであるPM-920にて、発色など印刷カラーにおいてカメラとの親和性を高める為に造られた PRINTImageMatchingが搭載される。※なお、インターネットからのダウンロードでPM-900等でも利用可能。
[編集] PM-950C
PM-900Cはインクドロップの変更はないものの、解像度を倍に2880dpi×1440dpiにするなど、引き続き高画質化を進める。また、今年から一部機種において、独立インクタンクを採用し、キヤノンと差別されていたインクの無駄がでないエコロジーシステムを採用。
※今年度のキヤノンは2年遅れで縁無し印刷機能を追加し、印刷速度を2倍に。エプソンとの差別化を図りつつ、高画質を高速にというイメージ戦略を続ける。なお、技術的な変更はなく高画質化は昨年度モデルと比べてなされていない。ソフト的な変化のみである。
[編集] PM-970C
PM-970Cは2880dpi×2880dpiという超解像度に到達。また、最高画質モードにて、複数のドロップサイズを打ち分けるMSDTの採用を見合わせた、近年カラリオでは非常に珍しい機種の1つ。なお、エプソンではそれまで【早くて、綺麗の為の技術】としてMSDT(MultiSizeDropTechnology)を採用しており、最高画質モードにてMSDTの採用を見合わせたのは、競合他社製品の対抗意識と思われる。なお、最高画質モードにて印刷速度の低下や、縁無し印刷に利用できないなど技術的な問題点も浮き彫りになっている。また、最小ドロップは1.8ピコリットルとなり、2ピコリットルを下回る。
[編集] PX-G900
PX-G900は、PM-970Cよりも落ちる2880dpi×1440dpiに解像度を落としたものの、最小インクドロップを1.5plまで極小化したプリンター。従来機種に搭載されていた染料インクとは異なる、顔料インクを搭載している。今までにも顔料インクを搭載したプリンターは存在していたが、特定の色のみに限定していたり、光沢感を持たせることが出来なかったが、インクを均一化し、吸着性の高い樹脂コーティングを行ったこと、光沢感を補う透明なインクを搭載することにより、光沢感を持つ写真印刷を実現した。
同時にこの年より「つよインク」というプロモーションを開始。もともと高い耐光・耐ガス性をもつ顔料インクを採用した「顔料つよインク」、分子構造を改良して高い耐光・耐ガス性を実現した染料インクを採用した「染料つよインク」により、以前の機種よりも色あせに強くなった。
なお、この年より型番のつけ方が変化する。昨年度まではPM-xxx(C/PT/DU/PX)の定型でxxx部の数字により型番が決められ、末尾のアルファベットによりそのプリンタの特徴(C=カラープリンター/PT=プリントン/DU=PhotoPC Linkによりダイレクトプリント可能/PX=顔料PXインクを採用)を示していたが、(PM/PX)-(A/D/G)xxxと型番のつけ方が変更となった。頭のアルファベット(PM/PX)でインクの種類、中間のアルファベット(A=インクジェット複合機/D=ダイレクトプリンタ/G=インクジェットプリンタ)によってプリンタの機能というつけ方となった。
[編集] PM-A850
PM-A850はプリンタ・スキャナ・コピー・ダイレクトプリントの1台4役を実現したインクジェット複合機である。前述のPX-G900と同時の2003年に発表された。写真画質に力を入れた複合機として、市場で好評を博した。それまでの複合機はコピー主体での使用が前提となっており、搭載インク数が4色であったり、L判写真印刷に非対応であったりしたが、搭載インク数を6色まで増やし、カラー液晶ディスプレイを標準搭載したことにより、写真印刷が高画質化し、パソコンを使わないダイレクトプリントも実現した。
[編集] PM-A900・PM-A870
PM-A900は、好評を博したPM-A850の上位後継モデルとして登場したインクジェット複合機である。前年春に登場したPM-D1000と同様の、インクカートリッジとプリントヘッドを分離したオフキャリッジ方式により、メンテナンスの手間軽減(インクカートリッジを本体手前から交換できる)、印刷時に発生する振動の軽減を実現している。
新機能としては、手書き合成機能が挙げられる。デジタルカメラの写真と、手書きした内容を本体のみで合成し印刷する機能となっており、手書き文字を入れたオリジナル写真付き年賀状を作成することが出来る。
PM-A870は、PM-A850の純後継モデルとして登場したインクジェット複合機である。基本性能は変わっておらず、ボタン改良による操作性向上や製造コストの低価格化の小改良にとどまる。
[編集] PM-A950・PM-A890
PM-A950はPM-A900の後継モデルとして登場したインクジェット複合機。基本設計に大きな変更は無いが、印刷パス数(ヘッドが行き来する枚数)の最適化により印刷速度を高速化したモデルとなる。この年より自動画像補正のオートフォトファイン!6がバージョンアップし、オートフォトファイン!EXとなる。顔判別機能による逆光補正や色彩補正により、積極的に画像を補正するようになった。
この「オートフォトファイン!EX」、「純正写真用紙」、「つよインク」の3つを組み合わせにより実現する写真印刷品質を、「EPSON COLOR(エプソンカラー)」というブランドとして展開し始める。
PM-A890はPM-A950と同様、「EPSON COLOR」に対応。印刷速度も高速化している。従来モデル、PM-A870の弱点であったCD-Rレーベル印刷機能を搭載し、機能の死角を減らしている。これにより、上位モデルとの機能差がほぼ縮まった。
[編集] 今後の行方と方向性
2002年を境に、家庭用インクジェットプリンタの高画質戦争は急激に下火になっていく。理由は諸説あるが、まず度重なる高画質化にて、すでに十分高画質に、当時フラグシップのみだった写真画質が、普及機にまで十分浸透してきたことなどが上げられる。
また、コンピューターが一般的に普及するに従い、スキャナーなどの機能がついた多機能プリンタ市場が急速に拡大、更なる高画質を求める声に向けたプリンタ市場が縮小しているとの声もあり、取り扱いが小さくなる傾向にある。
こうした流れは商品や宣伝にも反映され、最高画質モードとしてMSDTを採用しない印刷モードが搭載されたプリンタは、近年のエプソンプリンタに限って言えば、PM-970Cと同年に発売された2機種に限定され、次の年からはすべてのモードにてMSDTが採用されている。※2006年冬の一部の新機種からMSDTを成熟させたAdvanceMSDTが採用されている。また、多色に関しては翌年から染料に限り6色印刷に帰依しており、高画質戦略を後退させたといえなくもない。※顔料プリンタは染料と違い、多色を組み合わせるなどおこない難いため、多色化が行われやすい。
[編集] カラリオ・ライト
CL-700からCL-760までの型番”CL”から始まる製品で、主にテレビショッピングのセット商品や、初心者向けの低価格プリンターとして販売された。シリーズ全機種がインクを4色搭載しているタイプ。現在シリーズ製品は発売されていない。
[編集] プリントン
1998年より発売された「Printon(プリントン=PT=)」シリーズは、現在ごく一般的にみられるカラーインクジェットプリンタと・PCカードリーダーが一体となったカラー複合機の先駆けで、早くもホームDPEを模索している。(2000年にPTシリーズはカラリオ・プリンタに統合(内包)されている。)
[編集] カラリオ・コピー
2001年に発売されたCC-500Lから2003年に発売されたCC-600PXまでの、型番”CC”から始まる製品で、インクジェットプリンターとカラースキャナを組み合わせてカラーコピーを実現したインクジェット複合機がこれにあたる。
シリーズ全機種がインクを4色搭載しているタイプで、うちCC-600PXのみ独立インクを採用する。インクを6色搭載し写真画質を高めたPM-A850が発売されて以降、シリーズ製品は発売されていない。
[編集] カラリオ・フォト
[編集] CP-100
1996年に発売された、同社初のデジタルカメラ。
[編集] CP-500/CP-600
CP-500は1997年7月発売。81万画素で量販店での実売価格が8万円弱(発売当時)~4万円強(発売から1年経過時)程度、総画素数を130万に引き上げて1998年5月に発売されたマイナーチェンジ機種のCP-600もCP-500と同等な実売価格(メーカー希望小売価格は両機種とも同価格)であり、1998年のヒット製品であった富士フイルムの「FinePix700」(150万画素、実売価格9万円~6万円(発売1年経過時))と比べれば比較的コストパフォーマンスに優れた製品であり、雑誌などの売り上げランキングにしばしば上位にランクインしていた。
カラリオ・プリンタのMacintoshシリアルポート端子とカラリオ・フォトをMacintosh用のシリアルケーブルで接続するとパソコン無しでカラリオ・フォトの画面上で印刷指定が可能な「ダイレクトプリント」機能がCP-500から搭載され、現在市販の殆どのプリンタやデジタルカメラに搭載されているこの機能の先駆けとなった。
[編集] カラリオ・スキャナ
{stub}