カンテラ
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カンテラ (cantera) は、スペインにおけるサッカーの下部組織(ユースなど)のこと。直訳すると「石切り場」となる。
スペインではヨーロッパの他のサッカー強豪国と同様に各クラブチームが下部組織を所有しており、そこから多くの名選手が輩出されている。スペインの地域性から、チームのカンテラ出身の選手は地元の誇りであり、彼らが活躍すると地元のサポーターは非常に盛り上がる。 スペイン国内でもレサマ、クエルポ、ラ・マシア等独自の名称が有名なクラブもある。ちなみにリーガ・エスパニョーラ・プリメーラ所属選手の中で、最も数が多いのはレアル・マドリード・カンテラ出身選手である。
[編集] バルセロナのカンテラ
バルセロナのカンテラはFCバルセロナのそれが最も有名であり、ラ・マシアという寮名も知られている。
9~10歳の所属するベンジャミンA・B、11-12歳のアレビンA・B、13-14歳のインファンティルA・B、15-16歳のカデッテA・B、17-20歳のフベニルA・B、それ以上のバルサC、バルサBの12段階のカテゴリー(A,B,Cの順に上位)に分かれており、バルサBから昇格することでようやくトップチームの選手としてプレーすることが出来る。世界一の下部組織と評されるこのカンテラは「スター製造工場」とも比喩され、古くはペップ・グァルディオラ、今はプジョル、シャビなど多くのスター選手を輩出している。また、リヴァプールのルイス・ガルシアとレイナやニューカッスル・ユナイテッドのルケ、エスパニョールのデ・ラ・ペーニャなど、他チームで活躍する選手も多い。
現在もメキシコ人の「ロナウジーニョ2世」と呼ばれるジオバンニや各カテゴリの得点記録を軒並み塗り替えているFWボージャンなどスター選手候補達が所属している。一方で、「18歳未満の選手とはプロ契約を結ぶ事が出来ない」というスペインの法律を逆手に取り、主にイングランドFAプレミアリーグのクラブが選手の両親に職を与えるなどして選手を引き抜いてしまう事件も度々発生している。最近では、アーセナルによるセスク、フランの引き抜きが有名。
尚、アーセナルは現在もカデッテカテゴリ所属のアスリン・ガイという選手の引き抜きを計画している。
[編集] バスク地方のカンテラ
スペインの中でも特にバスク地方のクラブ(アスレティック・ビルバオやレアル・ソシエダ)はカンテラでの育成に非常に力を入れている。2005-2006シーズン躍進を果たしたCAオサスナもパチ・イスコ会長がカンテラの整備を計ったことでラウール・ガルシアを筆頭に若手で優秀な選手を輩出して躍進を果たす一因となった。
彼らは地域性から(バスク人以外の)スペイン人をチームに入れるのを嫌っており、バスク人もしくはバスクにゆかりのある選手のみでチームを構成する傾向にある。 「外国人は入団させてもスペイン人は入団させない」といった話も出るほどである。また、この2チームの間では数少ないバスクの優秀な若手選手の取り合いになることもある。 1980年代後半にソシエダが(スペイン人ではない)外国人の獲得に動き出したのはビルバオがソシエダのカンテラの優秀な選手たちを多数引き抜いてしまったことが背景にあるらしい。近年でもバスク純血主義を貫くビルバオは優秀な若手選手の獲得に必死になっており、オサスナやデポルティーボ・アラベスからの選手強奪も珍しくない。そのためクラブ同士の関係は悪いとされる。しかし、バスクダービーになると両チームのサポーターが肩を組んで応援するなど、バスク人としての繋がりは強いものとされる。
カンテラが充実しているためか、バスク出身の選手には優秀な選手が多いが、クラブはそれほど裕福ではないため、多くのクラブにその才能が流れている。