クリーンルーム
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クリーンルーム(clean room , CR)とは、空気清浄度が確保された部屋のことである。
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[編集] 用途
[編集] 工業用途
精密機械などの製造工場がクリーンルームとなっていることがある。これはLSIの焼付け工程において、塵埃が隣接する線との短絡を引き起こし不良が発生するため、清浄空間での作業が必要とされるからである。
[編集] 医療用途
塵埃を排除すれば細菌も排除できるため、手術室などを清浄化すれば感染症を予防できるという考え方に基づいている。
[編集] 食品用途
細菌を含め、異物、虫などの混入できない環境で食品製造を行うことが品質確保の面で必要な場合に、調理場や製造ラインをCR化する場合がある。
[編集] ハザード
放射能が外部へ流出しないよう、また、遺伝子組み換えなどの実験が行われる場所での排気を通して外部に有害物質が持ち出されることのないように、排気の塵埃を除去する場合がある。厳密に言えば、中が汚れていても外部を汚さないという点で通常とは逆のクリーンルームの考え方となるが、基本的に構造上同じ設備を逆向きに設置することとなる。生物的なハザードという意味で、バイオハザードルームと呼ばれたりする。
[編集] 構造
空気中の塵埃を除去するため、超高性能エアフィルタ(HEPAなど)を通した空気を送り込み、そして室内から吸い込んだ空気を排気または循環させる。 外部からの塵埃の流入を防止するため、室内気圧を外気圧より5~10Pa程度上げ、陽圧とする。 ただしハザード用途の場合は若干下げ、陰圧とする。 冷暖房も必要である。 CR内部での塵埃の堆積防止、清掃の容易性、フィルタ交換の維持管理の容易性などにも考慮が必要である。 また、用途に応じて気流の制御が行われる。
- 一方向流
- 気流が部屋全体で一定の方向に流れていく気流の方式。さらに、天井吹き出しで床面一体の吸い込みの垂直流と、壁面吹き出しの逆壁面の吸い込みの水平流に分類される。塵埃は気流に沿って押し出されるように除去され、レベルの高い清浄度が得られる。層流と呼ばれることもあるが、流体力学等で用いられる層流とは意味が異なる。
- 非一方向流
- 気流が部屋の中で複雑に流れていく気流方式。塵埃はCR内で清浄空気によって希釈される形で排除される。換気風量は必要な清浄度と換気回数(換気風量を室内容積で割った値)によって決められる。一方向流方式と比べ清浄度は低いが、コストの点でメリットがあるため広く用いられる。
更衣や材料の準備などを行うために前室が設けられることがある。 また、特に清浄を要求される小さな領域をビニールカーテンなどで覆って清浄度を上げる工夫も行われる。
[編集] 清浄度
どの程度の塵埃を許容するかの指標として、1立方フィートあたりの空気に、粒径0.5マイクロメートルの塵埃がいくつあるかの数字で表すことが多い。 通常の(CR内でない)外気はクラス1,000,000程度である。 クラス100といえば、100個しかないので、スーパークリーンルームなどと呼ばれる。 もちろん、それ以上の大きな塵埃はゼロでなければならない。 最近は塵埃量に加え、ガス成分、静電気、電磁波なども管理の対象となることがある。 さらに医療、食品産業用の場合は浮遊微生物も対象となる。
[編集] 入退出
人間は大量の塵埃を発生させるので、専用のクリーンウェア(無塵服)やマスクを着装し、二重扉になった場所で、清浄空気(エアシャワー)を浴びて塵埃を落としてから入室する。 物品の搬入もドアの開閉時の外気からの塵埃流入を防ぐため、パスボックスを用い二重扉の間でやり取りする。 出入口の床には粘着マットが敷かれ、靴底や装置下面の塵埃を除去する。 CR内部には便所がないのが普通なので、出入りのたびに手間がかかる。 火災などの発生時には非常口が設けられている場合もある。
[編集] 用具
CR内では塵埃の発生はタブーであるため、使用できる用具には特殊なものがある。 紙はその繊維などが塵埃となるため、発塵を抑えたクリーンペーパー(無塵紙)というものを使用する。 また、鉛筆やシャープペンシルは発塵するため使用不可であり持込み禁止である。清掃も、水道水や洗剤を用いると水分蒸発後の残留成分が塵埃となるため、超純水やエタノールで行われることが多い。
[編集] 関連項目
- クリーンルーム方式
- 無菌病室
- クリーンベンチ
- ソフトウェアクリーンルーム