エタノール
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エタノール | |
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IUPAC名 | Ethanol |
別名 | エチルアルコール |
分子式 | C2H6O |
分子量 | 46.1 g/mol |
CAS登録番号 | [64-17-5] |
形状 | 無色透明の液体(常温常圧) |
密度と相 | 0.8 g/cm3, 液体 |
相対蒸気密度 | 1.6(空気 = 1) |
融点 | −117 °C |
沸点 | 78 °C |
SMILES | CCO |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
エタノール(Ethanol)はアルコールのひとつ。慣用名としてエチルアルコール(ethyl alcohol)と呼ばれる。酒類の主成分であるため酒精とも呼ばれる。 数多くあるアルコール類の中でも、最も身近に使われる物質の1つである。揮発性が強い。
近年日本では自動車燃料として脚光を浴びており、世界中でもさらに大きく注目を集めている。
目次 |
[編集] 性質
一般的なアルコールの性質を持つ。詳細はアルコールの項を参照。
エタノールは水を始めとする極性溶媒や炭化水素も含む各種有機溶媒など、ほとんどの溶媒と自由に混和できる。ただし水とエタノールの混合液を蒸留によって二つの成分に完全に分離することはできない。これは水とエタノールが共沸をするためであり、この時の共沸混合物はエタノールを96%(重量パーセント)、水を4%であるため、蒸留によって得られるエタノールの最高濃度はおよそ96%である。なお水1Lとエタノール1Lを混合しても2Lにはならず、2Lよりも小さい体積になるので計算の際には注意を要する。
適当な酸化剤を作用させると、または脱水素反応などを施すとアセトアルデヒドに変わり、さらに強い酸化反応条件下では酢酸まで酸化される。
以上の酸化の過程を化学式で表すと以下のようになる。
[編集] 所在・製法
工業用エタノールは、ニッケルや固体リン酸などを触媒としてエチレンに水を付加させることで得られる。酸触媒下の水和の機構については、求電子剤を参照。
工業的に合成された、エチルアルコール(95%相当品)の2004年度日本国内生産量は302,413t、工業消費量は7tである。
[編集] 利用
溶剤(有機溶媒)、有機合成原料、消毒剤などとして広く使われている。 用途別の使用量としては、飲用22%・工業用10%・燃料用68%である。(2003年)
飲用(酒類)及び医薬品以外のエタノール(いわゆる工業用アルコール)はほとんどが変性アルコールと呼ばれるもので、これにはエタノールにかなりの量~少量のメタノールやIPA等の物質が混入されている。こうすることによって、酒税の対象からはずし価格を下げることができるのである。したがって酒として販売されているもの以外のアルコールを、「エタノール」と表示されているからと言って、むやみに薄めて飲むなどは極めて危険である。
[編集] 自動車燃料
近年日本では、石油の代替燃料としてのエタノールの自動車用燃料用途に注目が集まっている。
自動車の登場期にすでに燃料として使われていた。米国では、1920年代にゼネラルモーターズが石油会社と共に(会社の利益となる)有鉛ガソリンを推進するようになったため、以降ほとんど使われなくなった。(トマス・ミジリー#エチルの発見も参照) フランスでは、1920年代から1950年代頃には砂糖大根で作ったエタノールをガソリンに混ぜて使っていた。石油が安価に手に入るようになりほとんどの国ではエタノールを使わなくなった。しかし、ブラジルでは、1973年の石油ショックによる石油の高騰に対処するため、1975年からプロアルコール(Proalcool)政策を実施し、自国のさとうきびから生産できるエタノールをガソリン代替にすることを進めてきた。既にブラジルでは年間に販売される新車の半数以上がエタノール燃料に対応した車となっている。2003年よりブラジルでのガソリンに対するエタノール混合率は25%となっている。
アメリカ合衆国でも、1970年代から中西部のとうもろこし生産地帯においてエタノール混合率10%のガソリン「ガソホール」が販売されてきた。1990年代になると、クリーンエア・アクト(大気浄化法)にもとづき、エタノール混合に優遇措置がなされた。これらは米国では農業生産者が政治に対して力をもっているからなしえたことでもあった。2000年代になり、米国内では、州によって状況が異なるが、通常E10とよばれる10%混合ガソリンが広く販売されるようになっている。しかし、すべての米国人がその実態を知っているとはいえない程度である。エタノールとガソリンの混合燃料(フレックス燃料)に対応した車(フレックス車)の販売も増加している。通常の米国車は基本的にE10対応となっており、普通にガソリンをいれていると思いながらE10フレックス燃料をいれているようなケースも実際には多く、使用者の意識がなくともフレックスを使用している場合がある。米国ではフレックスに対応している車はE10対応、E25対応とよばれるが、E10対応はすでに標準であり、フォードではE85というような車も販売をはじめている。[[1]]
日本においては、実験を進めていた経済産業省が、コストの観点から日本国内での生産よりも輸入によることによる普及促進を狙い、2006年2月にブラジルの国営石油会社と日本国内会社の50%出資で、「日伯エタノール」を設立した。2007年2月時点で経済産業省の政策に対し石油会社の協力が得られておらず、ガソリンとの混合およびその販売にはまだ明確な道筋が立っていない。
モータースポーツ分野ではインディ・レーシング・リーグで2007年より100%エタノール燃料の使用が義務付けられる。(記事 アルコール燃料に詳しい)
[編集] 医薬品
日本では日本薬局方により純度が規定されている。
- 無水エタノール(別名:無水アルコール)
- 15℃でエタノールを99.5v/v%以上含む。消毒効果はほとんどないが、肝癌治療に応用されている。
- エタノール(別名:アルコール)
- 15℃でエタノールを95.1〜95.6v/v%含む。
- 消毒用エタノール(別名:消毒用アルコール)
- 15℃でエタノールを76.9〜81.4v/v%含む。一般的な医療用消毒剤。
[編集] おもな誘導体
- エチルメチルエーテル
- ジエチルエーテル
- エチルフェニルエーテル
- 酢酸
- 酢酸エチル
- ブロモエタン
[編集] 法的規制
日本では消防法により危険物第4類(アルコール類 危険等級II)に指定されている。
[編集] 参照資料
[編集] 関連記事