グァンタナモ米軍基地
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グァンタナモ米軍基地( -べいぐんきち, Guantanamo Bay Naval Base)はキューバ東南部のグアンタナモ湾に位置するアメリカ海軍の基地である。面積は116平方キロに及ぶ。1903年以来、米国が租借権を主張しており、2002年からはアフガニスタンやイラクで拘束されたイスラム過激派テロ容疑者の収容所としても使用されている。管理者はアメリカ南方軍。
[編集] 概要
1898年の米西戦争で米軍が占領し、米国の援助でスペインから独立したキューバ新政府は1903年2月23日、グァンタナモ基地の永久租借を認めた。主権はキューバにあり、米国は租借料として金貨2,000枚(今日の価格で約4,000ドル)を支払ってきた。しかしキューバ革命によって成立したフィデル・カストロ政権は米国の基地租借を非合法と非難しており、租借料は1度受け取った以外は受け取りを拒否している。アメリカ・キューバ双方が基地周辺を地雷原としていた(アメリカ側は1996年に撤去)。
周囲が地雷原で脱走が不可能な上、マスメディアにも実態が見えない海外基地、更にはキューバ国内でもアメリカ国内でもなく軍法のみが適用される治外法権区域ということで、20世紀後半からキューバやハイチの難民を不法入国者として収容した。2002年のアフガニスタン戦争以来、アルカーイダやタリバンなどイスラム過激派のテロリスト容疑者が収容された。
2003年のイラク戦争以来、収容者は増加しており、パキスタン系イギリス人やイラク系カナダ人(両者釈放済み)、イギリス人、オーストラリア人もテロ容疑者または関係者として収容されているが、これらの容疑者はテロリストと見なされれば裁判にかけられる事もなく逮捕・長期拘留されるようであり、“犯罪者”と“捕虜”の処遇を使い分けるアメリカ連邦政府の都合で無期限に拘留されるので問題となっていた(捕虜であればジュネーブ条約を適用する義務があるが犯罪者にその必要はなく、また当地はアメリカではないので合衆国憲法に定める被疑者の権利も保障されない)。
米軍としては容疑者の処罰より、テロ組織壊滅のための情報収集(自白・密告誘導など)を目的として拘留を行っている。2004年11月、米軍は同基地収容者に対して心理的、時に物理的な強制を加えており、拷問に等しいとする赤十字国際委員会の報告書がリーク、2006年5月にはアムネスティ・インターナショナルからも「世界の人権状況に関する年次報告書」によって、“対テロ戦争を口実にした収容所での人権侵害”の告発がなされた。キューバ政府は同基地の返還を求めており、世界的にも閉鎖を求める声が高まりつつある。
2007年1月、収監され拷問を受けた末に無関係と判明し釈放された、3人のパキスタン系イギリス人青年の体験を素材にした映画『グアンタナモ、僕達が見た真実』が公開された。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- アムネスティ・インターナショナル日本: アクション「グアンタナモにNO!」
- 『グアンタナモ、僕達が見た真実』(映画公式サイト)
- 「グアンタナモ、僕達が見た真実」ブログ(公式ブログ TSUTAYA online)