ケインズ政策
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ケインズ政策(Keynesian revolution )とは、政府が積極的に歳出を行なうことで失業(労働市場の不均衡)などを解決しようとする経済政策である。
[編集] 概要
19世紀の経済成長の中で、小さな政府が自由主義の高まりと共に主流となっていった。また均衡財政が望ましい政府のあり方であるとされた。このような中、工業部門における民間投資により緩やかな経済成長が続いた。
19世紀末から20世紀にかけて、重化学工業の割合が次第に高まっていくとそれまでの景気循環のパターンは次第に崩れていった。重化学工業の設備投資は巨額であり、経済に与える影響が絶大であったためである。第一次世界大戦により急速に重化学工業が拡大すると、循環パターンはますます崩れた。戦後、世界的に反動不況が訪れたが、アメリカにおいて民間投資が伸張し世界経済は小康状態に入った。
1929年、アメリカの景気が腰折れ世界恐慌が勃発すると、未曾有の経済不均衡が発生した。アメリカにおいてはピーク時で失業率は25%に達し、失業者は1千万人を越えた。この中で、均衡財政を維持しようと歳出削減や税率引き上げを企図したため、恐慌はいよいよ深刻になった。
その後、日米独ではそれぞれ独自に政府支出主導で問題打開を図るようになった。これにより、途中で政策転換したアメリカを除いて日本(高橋是清蔵相)とドイツ(シャハト財務相)は経済均衡を達成した。なお、アメリカは第二次世界大戦参戦による軍事支出膨張により経済均衡を達成した。
同時期、イギリスにおいては経済恐慌により古典派経済学の問題点が議論の的となっていた。ケインズは賃金の下方硬直性に注目し、古典派の枠組みでは現下の問題が解決できないと考え、雇用・利子および貨幣の一般理論を著した。
以後、様々な経済学者により再編されケインズ経済学として成立し、戦後の経済政策における理論的支柱の役割を果たした。
こうして、均衡財政にとらわれず景気に合わせて裁量的に政府支出を変動させる時代が訪れた。