ゴト
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ゴトとは、パチンコやパチスロに於いて不正な方法で出玉を獲得することを言い、それを実行する者をゴト師と言う。「ゴト行為」という表現をすることもある。
語源は「仕事」から来たものと言われる。
発覚すると窃盗罪で処罰の対象となる。店側でこの行為を発見した場合、全ての玉を没収の上出入り禁止か、悪質な場合は警察へ引き渡すことも多い。一度発見すると、店内の防犯カメラで撮影したゴト師の顔写真が近隣のパチンコ店に配られて、地域から追放するように連携がとられる事がよくある。普段はライバルである店同士も、ゴトに関しては団結する傾向にある。
単独犯は発覚しやすいので、打ち子を雇ったり、数人で徒党を組んで役割分担することが多い。特に、台に細工を仕掛ける「セットネタ」関連は、カバン屋(裏モノを扱う業者)と組んでいる。
ゴト行為による玉・メダルの獲得は「刑法235条・窃盗罪」、また不正行為が目的での入店は、店舗管理者の意思に反する立ち入りとして「刑法130条・建造物侵入罪」が適用され、法により罰せられる。
[編集] ゴトの種類
- セット打法
- 予め遊技台に裏基盤(Cモノ)を仕組んでおき、打ち子に特定の手順で玉やコインを抜かせる。合い鍵作製や仲間を従業員に仕立てたり、大がかりなゴトである。正規の場合でも遊技台のバグをついたセット打法も存在する。
- セルゴト
- 台枠の隙間からセルロイドなどのプラスチックの薄い板を差し込み、特定の入賞口に球が入りやすいように球筋を変えたり、普段閉じている入賞口をこじ開けたりする。
- ハリガネゴト
- 針金を使ってセルゴトと同様のことを行う。
- シャクゴト
- 磁石を使い特定の入賞口に玉を誘導し入賞させる。ガラス板越しに玉を誘導するためには強い磁力が必要であり、電磁石を手の中に隠し持つケースが多い。近年は小型で強力な永久磁石が容易に入手できるようになったため、シャクゴトの発見は困難になってきているが、メーカー側も台が磁力を感知したら高音のアラーム音がなるように対策を施すなどしてきている。
- ガセ玉
- 正規のパチンコ玉ではない玉(大抵はベアリングの玉)を使い、特定の入賞口に玉を入賞させる(これは正規のパチンコ玉が直径11.0mmに対し、10.0mmのベアリング球を使うことで入賞率をアップさせるもの)。ただし、この手法は数個のガセ玉では効果がほとんど無いため、大量の玉を持ち込むことになり、発覚しやすい。
- 電波ゴト
- 電役機(大抵はデジパチや権利物)の役物を電波発信機で開かせたり、玉の通過センサを誤作動させる。特定の周波数の電波を受信することによって不正なプログラムが始動するようにあらかじめ細工された不正台に対して用いられるというケースもある。
- 放電
- 自動車のバッテリーなどを鞄に隠して持ち込み、遊技台の盤面に指先から放電をすることによって遊技台内部の電子回路を誤動作させる。
- 体感器
- 遊技者に玉の打ち出しのタイミングなどを遊技台内部の特賞抽選の周期に合うように知らせるための特殊な電子機器を言う。打ち手はこれを身体に取り付けて打つ(パチンコ)、あるいはスタートレバーを叩く(パチスロ)。当たる周期を狙い打つということで窃盗とみなされる。特殊なパターンで玉を発射することによって不正なプログラムが始動するようにあらかじめ細工された不正台に対して用いられるというケースもある。また体感機と同類の器具として「低周波」と呼ばれる装置があり、これは低周波発信器により腕の筋肉を直接動かしてスロットのレバーをたたくことを可能とするもので、常に特定の周期が完璧なタイミングで狙える。また一部機種においてレバーと筐体の隙間に細い金属線を差し込み、微弱電流を流してレバーに直接信号を送ることで攻略できるものもあった。過去にはアルゼのヒット機種「大花火」などが大きな被害にあっている。
- クレマン
- スロット機のコイン投入口に特殊な装置を挿入してコイン通過センサを誤検知させる。何枚のコインが投入されたかをカウントする「クレジット」を「満タン」にするという意味で「クレマン」と呼ばれる。
- ホッパ抜き
- ハリガネなどを差し込むことにより、スロットのコイン払い出しホッパーを誤作動させる。払い出しホッパーの手前にはスピーカーが付いていることが多いが、このスピーカーのコーン紙を突き破って針金を突っ込むことが多いため、ホッパ抜きは「コーン破り」と呼ばれることもある。
- ビラビラ
- 1cm幅の透明のビニールひもに黒の縞模様をつけた物を、パチンコ玉計数機(ジェットカウンター)に差し込んで計数機を誤作動させる。玉の計数作業の様子が極めて不自然になるために発覚しやすい。また、ビラビラを含めた不正計数を防止するために、玉の計数は客にやらせずに店員が行うという店も多い。
- 現金サンドゴト
- 100円玉や500円玉を入れると玉が出てくる薄型の台間玉貸し機に異物を挿入して玉を出させる。台間玉貸し機のことをパチンコ店では「サンドイッチ」または略して「サンド」と呼び、これに不正操作を働くことを「サンドゴト」と呼ぶ。
- 設定変更ゴト
- スロット台の扉をこじ開けるなどして、不正に入手した設定鍵を使って設定値(大当たりの出やすさ)を変更するゴト。一部機種では筐体の隙間から金属の板などを差し込み、回線をショートさせて設定変更状態に出来るものもある。古くは「ニューペガサス」で設定5、6に変更するゴト、最近では「ミリオンゴッド」で天国モードに変更する(液晶画面上で変更できる)ゴトなどがあり、その破壊力はすさまじいものであった。
- 台叩き
- 台を叩くなどして振動を与え、玉の流れを変える。古くから行なわれているゴト行為で、かつては一発台で行なわれることが多かった。最近では羽根モノで行なわれることが多く、マジカルカーペット・CRレレレにおまかせ!などがターゲットになっている。そのためマジカルカーペット登場以降、振動センサーを取り付けるなどして対策を行なった店もある。
体感器については、「それを用いて「当たり」の周期をねらい打つことは店の予定している遊技方法ではなく、またその機械の使用を禁止する掲示もされているため、その使用をもってメダルを取得することは窃盗罪の窃取にあたる」という地裁の判例がある。
遊技台をこじ開けて内部の電子部品を不正なものに交換する行為もゴトの内に含める人もいる。また、玉貸しを行なう際に使用するプリペイドカードなどを偽造することもゴトに含める人もいる。
遊技台を一度こじ開けて細工する場合など、比較的大掛かりな細工をする場合には、数人で台の回りを取り囲むようにして店員や他の客から見えないようにすることが多い。その際、ゴト現場とは離れた場所で一般の客を装って店員を呼び、店員の注意をそらせるということもよく行なわれる。
上記のようなゴトを防止するために、最近の遊技台には、開閉センサ、電波センサ、磁気センサなどの各種センサが取り付けられていることが多い。また、特にスロットにおいては投入コインと払い出しコインの計数を二重化してチェックを強化するなどの策をとっている店も増えている。
パチスロ機の一部(『トゥームレイダー』など)には、ゴト防止のために「ある特定の操作を行うと台が動かなくなる」といった機能を搭載しているものがあるが、実際には通常のプレイを行っている場合にもゴトと誤認識され台が動かなくなってしまうことが多いことから、このような機能を搭載する動きは広がっていない。
一時期、一般の携帯電話の電波でパチンコ玉の通過センサが誤作動するという問題があったため、店内への携帯電話の持ち込みをゴト行為に準ずるものとして禁止した店もあった。