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サッカーのポジション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

サッカーのポジションについて記す。ここではサッカーにおける11人のプレーヤの配置、及びその役割について記す。

目次

[編集] 概要

サッカーポジションは、後ろからゴールキーパーGK)、ディフェンダーDF)、ミッドフィルダーMF)、フォワードFW)の4種類に分けられる。

なおこれらの名称については現在用いられているもので、歴史的には別の名称で呼ばれていたこともある。

GKを除く3つのポジションについては、さらに細分化することができるが、その詳細については、それぞれの項目に譲る。また、ゴールキーパーを除くプレーヤーフィールドプレーヤーと呼ぶ。

一般的にシステム論議で用いられる、3-5-2や4-4-2と言った全体のフォーメーションについては、これらのポジションを後ろから、DF-MF-FWの順にその人数を数えたものである。 すなわち3-5-2と言った場合はDFが3人、MFが5人、FWが2人、4-4-2の場合は、DFが4人、MFが4人、FWが2人と言う具合である。

GKを数えないのは、ルールによって必ず1人だけと決まっているからである。ただし、スペインでは1-4-4-2などのようにGKの1を含めて表記する、3バックは5バックとして考えられ、1-5-3-2のように表記される、などの特徴がある。

また、日本ではポジションを図示したときは、図の上がフィールドの前になり、上からFW・MF・DF・GKの順に表示するので、3-5-2などの表記がわかりにくいが、ヨーロッパでは上からGK・DF・MF・FWの順に表示することも多く、こちらに慣れていれば3-5-2などの表記もわかりやすい。

[編集] 歴史

フットボール・アソシエーション1863年に誕生し、最初のサッカーのルール" Law of the Game"たが規定された時のルールは現在と比較して以下の点において大きな違いがあった。

即ち

  1. プレーヤーの人数に関する規定が設けられていない。
  2. ゴールキーパーに関する規定が設けられていない。
  3. ボールより前のポジションはアウト・オブ・プレーとされ、プレーに関与できない。

と言う点である。このため、ポジションについては以下の特徴が生まれる事になった。ポジションの殆どがフォワードのみであったという事である。この当時のゲームの基本的な戦術は、ドリブル中心のゲーム展開で、時々、前に大きく蹴り込んで、そこに走りこむ「キック・アンド・ラッシュ」が展開されていた。現在のラグビーの基本戦術とさほど変わりが無いと理解して、大きな相違は無い。

このスタイルは1866年にアウト・オブ・プレーに関する規定が大幅に見直されて3人制オフサイドに移行すると、従来のポジションよりやや後ろに位置する選手が現れ始めた。但し、この従来のポジションよりやや後ろに位置するポジションの概念として明確にバックバックスと言う概念があったかどうかは疑問である。イングランドでは1870年代の初頭まで、ドリブル中心のゲームにキック・アンド・ラッシュが時折混ざるという展開のされ方がされており、フィールド全体に選手が散らばるという発想は未だ一般的ではなかった。

但し、この期間にフォワードのみのポジションの概念に新たに加わったポジションが誕生した。1871年にルール上に規定されたゴールキーパーである。

更に、ゴールキーパーとフォワードのみと言う概念に大きな変化がもたらされるのが、1872年に行われた、最初の国際親善試合、イングランド対スコットランドである。この試合でイングランドは、従来通りのドリブルゲームと、キック・アンド・ラッシュを展開したが、スコットランドはパスを繋いでゴールの前に迫ると言う戦術を展開した。これが「パス・ゲーム」の始まりである。パス・ゲームの登場はフィールド全体に選手を散らばらせるという概念を生み出した。こうした概念の中で生み出されたのが、ゴールの前で守備を行うバックバックスと言うポジションと、バックとフォワードの間を埋めるハーフバックのポジションで1870年代中ごろまでには、この4つのポジションを配置する事が一般的になった。

これによって現在に連なる、ゴールキーパー、バック(=ディフェンダー)、ハーフバック(=ミッドフィルダー)、フォワードの基本的な4分類が出揃った事になる。

ゴールキーパー
ゴールキーパー

[編集] ゴールキーパー

ゴールキーパーは11人のプレーヤーの中で唯一手を使うことを許されたポジションである。(但しルールによって手を使うことができるエリアは限定されているが)。このポジションには一般的に背の高い人物が好まれる。

かつては来たボールを取っていればいいというポジションであったが、現在ではスウィーパー的要素も求められる。また11人のプレーヤーの中で最も運動量が少なく、全体を見渡せるポジションであるため、DFラインのみに限らず、フィールドプレーヤー全体に指示を行う重要な役割を担っている。

ゴールキーパーの調子如何がゲーム全体の流れを決定してしまう場合もあるため、花形ポジションの一つともなっている。

[編集] ディフェンダー

1920年代から30年代までは、バックスと呼ばれていたポジション。このポジションも一般的には背の高い人物が好まれるが、スピードタイプのFWが増えてきた現在では、それに対応できるだけの俊敏さを兼ね備えていることも必須の条件となっている。

DFラインのシステムは、3人の場合は3バック、4人の場合は4バックと言うように表される。3バックもしくは4バックが主流であるが、相手が守りを固めていたり、点を取る必要に迫られた時は2バックも用いられる。逆にサイドハーフの選手がDFラインの位置まで降りてきて、ほとんど攻撃参加ができない場合は5バック、6バックのように見られる場合もある。

DFのポジションは大きく2つに分けることができる。すなわち、ディフェンスラインからサイドライン付近を駆け上がり攻撃参加を行うサイドバックSB)とゴール前の守備を固めるセンターバックCB)である。4バックの場合はその両端にSBを付けSB-CB-CB-SBと言う並びになるのが一般的である。3バックの場合はその全てがセンターバックで構成されCB-CB-CBと言う並びになる。サイドバックの役割についてはサイドハーフの項目も参照されたい。

センターバックについてはさらに、ストッパーリベロに分かれる。ストッパーは相手FWについて、攻撃機会をつぶすことが期待される。相手が2トップの場合、3バックでは1人分ディフェンス側に余裕がある。この残った1人がリベロとなる。ストッパーがつぶした相手FWからボールを奪い取り、DFラインからの攻撃参加を行う役割が期待される。3バックの場合両端にストッパーを置き、真ん中にリベロを置くのが一般的である。

相手が2トップであれば、ここまでで話は終わるのであるが、3トップであれば、FWとDFが3対3となり、DFの数的優位が消えてしまう。ここで登場するのがスウィーパーと言うポジションである。これによりDFの数的優位を取り戻し、前3人のDFがつぶした相手FWからボールを奪い取ることが期待されるポジションである。

古くはどのチームも守備の一番の名手をスウィーパーとして最後の砦として一人余らせておいていた。 しかし、ACミランのゾーンプレスやオフサイドトラップという戦術とともに、オフサイドゾーンをできるだけ広くするため、スウィーパーもストッパーと並び、「攻撃時にはディフェンスラインを上げる」「ボールを持った選手が後ろを向いたらディフェンスラインを上げる」などといったラインのコントロールをするようになった。そのコントロール係は、日本ではリベロと呼ばれる。

特性上、4バックの場合はラインディフェンスを、3バックの場合は相手に付くディフェンスを行うことが多い。フィリップ・トルシエが模索した3バックでラインディフェンスを行う、いわゆるフラット3はかなり特異な戦術であると言える。

[編集] ミッドフィルダー

現代サッカーにおいて、最も重要な中盤を支配するポジションである。このポジションでは身体的特徴よりも、純粋に技術的な上手さが求められるポジションである。彼らには、素早くボールを繋ぎFWに決定機をもたらせるようなパスを供給することが求められる。

ミッドフィルダーのポジションは大まかにセンターミッドフィルダーサイドハーフトップ下に分けられる。以下にその詳細を記す。

[編集] センターミッドフィルダー

中盤の中央に位置するポジション。ディフェンスラインの前に位置する。前から数えると3列目、もしくはイングランドのサッカーに特徴的な、ミッドフィルダーが横一列に並ぶ場合は2列目になる。日本ではこのポジションをボランチということが多い。Volanteポルトガル語であり、その意味についてはリンク先を参照のこと。厳密に言えば役割名であり、ポジション名とは言い難い(フォワードとストライカーの関係)が、現代の日本ではポジション名として使用されており、ほぼ守備的ミッドフィルダーと同義で使われている。1人の場合は、ワンボランチ、2人になるとドイスボランチ、ダブルボランチ、3人ではトレスボランチ、トリプルボランチと呼ばれる。

センターミッドフィルダーの役割は、ディフェンスラインと前線のスペースを埋め、守備、攻撃双方に参加することである。いつの間にかディフェンスをしていることもあれば、いつの間にか前線に上がってきてゴールを決めているポジションでもある。

「守備的ミッドフィルダー」という面を強調して言えば、センターバックとの互換性が高く、センターバックから守備的ミッドフィルダーへ、あるいはその逆というコンバートを経験する選手も多い。この双方をこなすことができるプレーヤーは監督からみればかなり重宝な存在と言える。4バックの場合はセンターバックが2人しかいないため、相手FWの数を考えるとどうしても数的に不利に場合が多い。そこで先ず彼らには、センターバックを助け守備において数的に有利な状況を作ることが期待される。時として完全にディフェンスラインに吸収されてしまう場合もある。

攻撃の面から言えば、この位置から精度の高いボールを蹴れると攻撃にバリエーションが生まれ、前がかりになった相手にスペースを埋める機会を与えないまま攻撃に移れるため、パス、キックの上手いプレーヤーと言うのは非常に好まれる。翻って、この位置にフリーキッカーが多いことにもなる。また現在では、より深い位置からの攻撃参加によって相手ゴールに対し波状攻撃を仕掛けることは常識となっており、3列目からの攻撃参加は非常に重要である。

現代サッカーにおけるセンターミッドフィルダーには攻守両面に渡る戦術眼、豊富な運動量、対人プレーの強さなどの高度な資質が求められており、今後もこのポジションの重要性は増す方向にある。

[編集] サイドハーフ

サイドハーフはミッドフィルダーにおけるサイドのポジションである。右と左で2人置かれる。役割としてはサイドバックとほぼ同じであり、4バックの場合はサイドバック、3バックの場合はサイドハーフ(またはウィングバック)と呼ばれるだけの違いでしかなく、チームのシステム如何によって、同じプレーヤーであってもポジションの名前が変わるに過ぎない。

このポジションは90分間絶え間なく上がったり、下がったりすることが求められるポジションで、全てのポジションの中でも最も最もタフなポジションの一つである。このポジションに期待されることは、攻撃の面から言えば、可能な限り敵陣の奥深くまで切れ込んで、FWに対して決定的なクロスボールをあげることである。守備の面から言えば、対面のサイドハーフのプレーヤーに絶対に負けないことが期待される。現代サッカーにおいては両サイドは最もプレッシャーを受けずに攻撃を組み立てられる位置であり、このポジションでの両サイドハーフの勝敗如何が、ゲーム全体の勝敗を決定付けてしまう場合もあるため、非常に重要なポジションとなっている。

このポジションのプレーヤーに求められる能力は、正確なクロスボールをあげることができる能力と、ドリブルでサイドを突破していく能力である。

[編集] トップ下

FWのすぐ下に置かれるポジションである。MFの中でも最も攻撃性の高いポジションである。イタリアではトレクァルティスタTrequartista、3/4列目の選手の意)とも呼ばれる。

このポジションは前線における攻撃をマネージメントし、前のプレーヤーに対して決定的なパスを通すと共に、自らも積極的に攻撃を仕掛けゴールを決めることが要求される。

4バックの場合1人あるいは2人置かれる。但し一方をシャドーストライカー的なプレーヤーを置く場合もある。一方3バックの場合このポジションが省略される場合もあり、その場合FWは3トップとなり攻撃のメーキングはボランチに一任される。

[編集] フォワード

サッカーの全てのポジションにおいて、最も注目を集めるポジションである。俗にトップとも言う。サッカーは1点で試合を決めることができるため、優秀なフォワードがいるチームはそれだけで勝利に大きく近づく。このポジションは一般的に背の高い人物の方が好まれるが、速さによって相手ディフェンスラインを抜きにかかるスピードタイプのFWも増えている。

フォワードに期待される役割は何と言ってもゴールを決めることである。しかし現在ではそれに加えて、前線からのディフェンスもFWにとっての責務となっている。FWがディフェンスを行ってボールを取れれば、自陣から見てかなり高い位置から攻撃を開始できるため、それだけで得点機会に直結することになる。またボールを取ることができなくても、FWがディフェンスをしている間に、時間的余裕が生まれ、中盤、ディフェンスラインにおいて守備を行う体系を整えることができるというメリットを生じさせることになる。

FWのポジションも幾つかの役割に分類することができる。まずポストプレーヤーと呼ばれるプレーヤーが相手DFを引き付けた上で、ポストプレーを行う。すなわち中盤、もしくはディフェンスラインから供給されたボールを体の一部分に当てて、ボールを落ち着かせる。ディフェンダーを自分に集中させ、他の選手にボールを供給し(「落とす」と呼ばれる)、ゴールに近いところで、かつ前を向いてプレーをさせることが目的である。 シュートを打ち、ゴールを決めるのがストライカーである。

通常フォワードは1~3人配置される。一人の時はワントップ、二人の時はツートップ、三人の時はスリートップと呼ぶ。 ワントップは通常中盤の人数を増やす場合に用いられ、中盤の選手が前線に飛び出して攻撃を行う。この際、フォワードには得点力に加え、裏をねらうスピードや、ポストプレーなど、すべての能力が求められる。センターフォワードと呼ばれる。 相手に得点を与えないよう守備に人数を増やす場合や、退場者が出て人数が少ない場合にもよく見られる。 ツートップは以前は常識であり、現在も非常に多い戦術である。 二人のフォワードが連携して得点をとることが目的とされる。 二人とも得点力が求められるが、片方がポストプレーヤー、片方が足の速いドリブラーもしくは裏へ飛び出すタイプと、異なるタイプが配置されることが多い。 ポストプレーヤーや力のあるタイプが9番、足の速いタイプが11番をつけることが多い。どちらもセンターフォワードと呼ばれる。 スリートップは最近ヨーロッパで非常によく見られる戦術で、真ん中にいるセンターフォワードの両サイドにウィング(ウィンガー)を配置した戦術である。 センターフォワードはワントップに近い仕事が求められる。 ウィングはサイドの選手の中で最も攻撃に比重が大きいポジションである。非常にスピードがあり、ドリブルがきわめてうまく、クロスボールがあげられ、中に切れ込んでミドルレンジもしくは至近距離からのシュートも強い選手が求められる。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • アルフレッド・ヴァール「サッカーの歴史」2002年創元社 ISBN 4-422-21161-7
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