サンボ (格闘技)
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サンボ(露:Самбо、英:Sambo)はソビエト連邦で開発された格闘技、または旧ソビエト連邦において徒手格闘技、徒手武術をあらわす。
Самбоは、самозащита без оружия(samozashchita bez oruzhiya、武器を持たない自己防衛の意)の略であると言われている。つまり、広義では徒手格闘技、徒手武術のことである。 また、Samboには黒人への蔑称の意があるためアメリカではSomboと表記することもある。
狭義では日本で一般に知られているスポーツ、格闘技であるスポーツサンボのことをさし、この意で使われることが最も多い。このスポーツサンボはソビエト連邦で開発された格闘技である。
旧ソビエト連邦の軍隊で採用されている徒手軍隊格闘術をコマンドサンボ(露:борьбы Самбо)と言う。日本でコマンドサンボと呼ばれるサンボは正確には英語でコンバットサンボ、ロシア語でバエヴォエサンボと言う。
また、ロシア古来の着衣徒手格闘技でニコライ・ズーエフが修得していた英語でロシアンサンボ、ロシア語でルースカエサンボと呼ばれるものもある。多彩な関節技を有している。スポーツサンボのベースにもなっている。
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[編集] サンボの特徴
スポーツサンボは柔道やレスリングや古流柔術やブフ(蒙古相撲)等の外来徒手格闘技、グルジアのチタオバやロシアンサンボ等ソビエト連邦各地方の徒手格闘技をベースにしており、打撃技を利用することはできない。投げ、関節技による一本か、一本に至らない投げ、抑え込み等のポイントを競う。
柔道と異なり、足への関節技が認められ、絞め技は禁じられている。柔道は道着の掴み方に制約が多いが、サンボでは帯より上ならば掴む場所に関しての制限はほぼ無く、柔道には無い組み手での攻防、そこからの投げ技が多用される。また、抑え込みも柔道と異なり、両者の胸が接していれば、ハーフマウントやインサイドガードでも認められ、総合格闘技で有用な寝技におけるポジショニング技術への意識はこのサンボ独特の抑え込みへ分散されるため、薄くなっている。ポジショニングとは、寝技での打撃を考慮したときに有効な概念であり、同じく打撃を禁じている柔道には根付いてるもののサンボには根付かなかった。また、関節技が失敗したらブレイクになるため、インサイドガードからの足関節技のリスクが少なく、パスガードも発達しなかった。抑え込んだあとも、柔道とは異なり、一試合で最大4ポイントまでしか加算されず、抑え込みで一本になることはない。そのため、サンボの寝技では関節技がより重要視される。関節技が重視されるのは打撃等に比べてダメージコントロールが容易な為だとも言われている(殺すつもりで殴った相手が生きている、無力化するつもりで殴ったら殺してしまった等の事態が起きにくい)。ちなみに、クローズドガードは禁止とされている。
説明では柔道をベースに語られることが多く、設立も20世紀中頃と柔道より遅いため、柔道に何かを足した物というイメージを持ちやすいが、実際はそうではない。投げ技・腕の関節技において、サンボ設立当時の柔道にはなかったテクニックも多い。ただし、現在は柔道も海外を中心に(サンボからの輸入により)そのようなテクニックも包括している。また、逆に柔道の技術書では、ある程度の割合をもって記載されるパスガード、スイープの技術が、サンボの技術書では、全く記載の存在が確認されておらず、重視されていない。しかしながら、サンボ経験の少ない柔道家がトーナメントで優勝してしまったり、逆に柔道の試合でサンボ経験者が日本の柔道家を破るるケースも少なくないくらい、似た競技でもある。日本では柔道と知名度・競技人口に大きな差があるため、前者が圧倒的に多い。世界的に見ても、知名度・競技人口で柔道が上であり、世界舞台の世界サンボ選手権大会でもサンボ経験の無い柔道家ダヴィド・ハハレイシヴィリ(グルジア)が優勝したというようなこともある。
レスリングとはジャケットの有無・関節技の有無が大きな相違点である。
上半身は青か赤のサンボジャケット+帯、下半身はジャケットと同系統色の短パン或いはスパッツで、サンボシューズ(またはレスリングシューズ)を履く。サンボジャケットは柔道着に似るが、袖なしジャケットでの格闘技チタオバの技術が使えるよう肩の部分に掴みやすいよう返しがあり、帯がはだけにくいよう帯をジャケットに固定する穴がついている。帯で段位を表すようなことはない。アマチュアレスリングマットと同じ円形のマット場で競技を行う。
コンバットサンボは打撃や絞め技も行う他、武器への対処法も含む。コンバットサンボでは自身の置かれた状況の的確な把握、対象の迅速な無力化が最重視される。
[編集] IOCとスポーツサンボ
1980年、当時スポーツサンボは国際レスリング連盟 (FILA) の管理下にあり、モスクワオリンピックの際はレスリング内の正式種目での実施をアピールしたがレスリングの種目が多すぎるということで実現には至らなかった。このままではオリンピック参加は無理と判断し、FILAから国際サンボ連盟 (FIAS) は独立した。一時、IOC承認競技であったが、そののち、IOCの承認は取り消されている。また、IOC後援ワールドゲームズの公式競技であったが1989年の大会を最後に実施されていない。IOC公認団体GAISF(国際スポーツ団体総連合)にはFIASがいまだ加盟している。
[編集] 代表的なサンボ選手
- ビクトル古賀
- ヴォルク・ハン
- アンドレイ・コピィロフ
- ニコライ・ズーエフ
- エメリヤーエンコ・ヒョードル(第2代PRIDEヘビー級王者)
- イリュ-ヒン・ミーシャ
- 大山峻護
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