ジェイムズ・ティプトリー・Jr.
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ジェイムズ・ティプトリー・Jr.(James Tiptree, Jr.、1915年8月24日 - 1987年5月19日)は作家。SF作家。本名はアリス・ブラッドリー・シェルドンで、別名としてラクーナ・シェルドン(Racoona Sheldon)。
目次 |
[編集] 生涯
1915年、アリス・ブラッドリーとしてアメリカ合衆国シカゴで生まれる。父は探検家のハーバード・ブラッドリー、母は作家のメアリー・ブラッドリー。
子供時代の大半をイギリス植民地下のアフリカ、インドで過ごす。アフリカでは野生のゴリラを見た最初の白人女性の一人になったとのこと。10歳にして、グラフィックアーチストを志し、16歳の時にはすでに個展を開いていた。大学在学中に最初の結婚をするが、妊娠中絶掻爬手術の失敗によって子供が産めなくなったことをきっかけに、1941年離婚をしている。
1942年、陸軍に入隊し、ペンタゴンに勤務。結婚後しばらく軍から離れるが、1952年から1955年までCIAに勤務。CIAを辞職後、大学に入り実験心理学を専攻、博士号を取得。この博士試験のストレス解消のためにSF小説を書き始めた。その後、ジョージ・ワシントン大学で実験心理学の講師を務めるが、1968年、身体を壊して辞職。
1968年、作家としてデビュー。最初に活字になったのはアナログ誌に掲載された『セールスマンの誕生』だが、博士試験中に書いていた4編がすべて採用されてしまったため、本当の処女作がどれなのかは良く分からない。その後、人気作家となり、筆名が男性名なこともあり「もっとも男性らしいSF作家」と評価された。男性と女性の性を中心的なテーマにした、短編ながら深い味わいを持つ作品が多いことが特徴。当初は覆面作家であったが、後に女性であることが判明。文壇に「ティプトリー・ショック」と呼ばれるほどの衝撃をあたえた(シオドア・スタージョンも「ジェイムズ・ティプトリー・Jrを例外とすれば、最近のSF作家でこれはと思うのは、女性作家ばかりだ」とあるSF大会でスピーチした)。
1987年5月19日、老人性痴呆症が悪化した夫を、前々からの取り決め通りにショットガンで射殺し、みずからも頭を撃ちぬき死亡。享年71。
[編集] 受賞歴
- 1973年 - 『愛はさだめ、さだめは死』でネビュラ賞を受賞。
- 1974年 - 『接続された女』でヒューゴー賞を受賞。
- 1976年 - 『ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?』でヒューゴー賞、ネビュラ賞を受賞。
- 1977年 - 『ラセンウジバエ解決法』でネビュラ賞を受賞。(ラクーナ・シェルドン名義)
- 1981年 - 『星ぼしの荒野から』で星雲賞海外短編賞を受賞。
- 1985年 - 『たったひとつの冴えたやりかた』でローカス賞、星雲賞海外短編賞を受賞。
- 1987年 - 『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』で世界幻想文学大賞を受賞。
[編集] 作品リスト(主に短編集)
- 『故郷から10000光年』"Ten Thousand Light-years from Home", 1973, ハヤカワ文庫SF(伊藤典夫訳)
- 『愛はさだめ、さだめは死』"Warm Worlds and Otherwise", 1975, ハヤカワ文庫SF(伊藤典夫・浅倉久志訳)
- "Up the Wall of the World", 1977, 未訳(長編)
- 『老いたる霊長類の星への賛歌』"Star Songs of an Old Primate", 1978, ハヤカワ文庫SF(友枝康子・伊藤典夫訳)
- 『星ぼしの荒野から』"Out of the Everywhere and Other Extraordinary Visions", 1981, ハヤカワ文庫SF(伊藤典夫・浅倉久志訳)
- "Brightness Falls from the Air", 1985, 未訳(長編)
- "Byte Beautiful", 1985, 未訳(短編集)
- 『たったひとつの冴えたやりかた』"The Starry Rift", 1986, ハヤカワ文庫SF(浅倉久志訳)
- 『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』"Tales of the Quintana Roo", 1986, ハヤカワ文庫FT(浅倉久志訳)
[編集] 参考文献
- 『ジャングルの国のアリス』"Alice in Jungle Land":メアリー・ヘイスティングス・ブラッドリー " Mary Hastings Bradley"、未知谷、(宮坂宏美 訳)、ISBN 4-89642-066-7