ジョン・ディクスン・カー
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ジョン・ディクスン・カー (John Dickson Carr, 1906年11月30日 - 1977年2月27日) は、アメリカ合衆国の推理作家。カーター・ディクスン (Carter dickson) 、カー・ディクスン(Carr Dickson)、ロジャー・フェアベーン(Roger Fairbairn)という別名でも作品を発表している。
目次 |
[編集] 作風
1930年の処女長編『夜歩く』から数作はアンリ・バンコランというフランス人探偵が活躍したが、カーの創作した探偵としては、1933年の『魔女の隠れ家』でデビューしたギデオン・フェル博士と、1934年の『プレーグコートの殺人』でデビューしたヘンリー・メリヴェール卿(通称H・M卿)の方が有名である。その他短編ではロンドン警視庁D3課長マーチ大佐が登場する。なお、メリヴェール卿ものとマーチ大佐もののほとんどはカーター・ディクスンのペンネームで発表された。
アメリカの作家であるがイギリスに長く在住し作品の舞台もほとんどがイギリスのため名鑑などにはしばしば「米-英作家」と記載される。
密室トリックに優れ、「不可能犯罪の作家」の異名を持つ。1935年の『三つの棺』の密室講義は、密室トリックを分類したものとして単独でも名高い。また、アマチュア奇術師で推理作家・イラストレーターのクレイトン・ロースンと親交が厚く、自らも奇術・怪奇趣味も相まった独特の世界を作り出している。
他にファースものとされるドタバタ喜劇ものを多く執筆している(主にメリヴェール卿登場作品)。上記のトリックメーカーとしての顔と併せて、常に読者に刺激を与えるというのが作風の基本姿勢である。
1950年の『ニューゲイトの花嫁』以降は、上記の探偵が登場しない歴史ミステリも増えた。こちらは綿密な資料読み込みにより、当時の風俗などの描写が生き生きと描かれている点でも評価が高い。
[編集] 関連情報
- 名前の頭文字をとってJDCと呼ばれることもある。しかし最近では清涼院流水の作品に登場する「日本探偵倶楽部 (Japan Detective Club)」の略称もJDCであるため、JDCと聞いてどちらを思い浮かべるかでその人の推理小説に対する造詣がわかる。
- ウィリアム・ブルテンの作品に『ジョン・ディクスン・カーを読んだ男』という、カーの作品をパロディーにした短編ミステリーがある。
- また、カー自体の伝記や研究書は数多い。
- ドロシー・L・セイヤーズはいち早くカーの筆力を認め賞賛した。
- シャーロック・ホームズの熱烈なファンであった。作者ドイルの死後、彼の次男と共にホームズのパスティーシュを執筆している。
- チェスタトンの作風に通じる所があり、自身も敬愛していた。フェル博士、H・M卿の外見はチェスタトンを模したものといわれる。
[編集] 主な作品リスト
[編集] 長編
[編集] アンリ・バンコランもの(全5長編)
- 1930年 夜歩く (It Walks by Night)
- 1931年 絞首台の謎 (The Lost Gallows)
- 1931年 髑髏城 (Castle Skull)
- 1932年 蝋人形館の殺人 (The Corpse in the Waxworks)
- 1937年 四つの凶器 (The Four False Weapons)
[編集] ギデオン・フェル博士もの
- 1933年 帽子収集狂事件 (The Mad Hatter Mystery)
- 1934年 盲目の理髪師 (The Blind Barber)
- 1935年 三つの棺 (The Three Coffin)
- 1936年 アラビアンナイトの殺人 (The Arabian Nights Murder)
- 1938年 曲がった蝶番 (The Crooked Hinge)
- 1939年 緑のカプセルの謎 (The Problem of the Green Capsule)
- 1966年 仮面劇場の殺人 (Panic in Box C)
[編集] ヘンリー・メリヴェール卿もの
- 1934年 プレーグ・コートの殺人 (The Plague Court Murders)
- 1934年 白い僧院の殺人 (The White Priory Murders)
- 1935年 赤後家の殺人 (The Red Widow Murders)
- 1938年 ユダの窓 (The Judas Windows)
- 1939年 読者よ欺かるるなかれ (The Reader is Warned)
[編集] ノンシリーズ作品・歴史ミステリ
- 1937年 火刑法廷 (The Burning Court)
- 1937年 第三の銃弾 (The Third Bullet)
- 1942年 皇帝のかぎ煙草入れ (The Emperor's Snuff-Box)
- 1945年 青銅ランプの呪 (The Curse Of The Bronze Lamp)
- 1950年 ニューゲートの花嫁 (The Bride of Newgate)
- 1951年 ビロードの悪魔 (The Devil in Velvet)
- 1957年 火よ燃えろ! (Fire, Burn!)
- 1971年 死の館の謎 (Deadly Hall)
[編集] 短編集
- 1940年 不可能犯罪捜査課 (The Department of Queer Complaints)
- 1947年 Dr.Fell,Detective and Other Stories
- 1954年 The Third Bullet
- 1963年 The Men Who Explained Miracles
[編集] 評伝
- 1949年 コナン・ドイル (The Life of Sir Arthur Conan Doyle)