スピードコア
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スピードコア(Speedcore)は、ハードコアテクノの一種。攻撃的なテーマと高速なBPMが特徴として挙げられる。BPMで示すと240BPMから1000BPMの帯域に分布している。
スピードコアのサブジャンルであるエクストラトーン(Extratone)は、更に先鋭的なスピードコアとして分類されている。一般的なスピードコアが200BPMから1000BPMの帯域であるのに対し、エクストラトーンの曲は、スピードコアの上限と考えられている1000BPMを超えた付近が最低限のBPMとなっている。すなわち、ジャンルとしてのスピードコアとエクストラトーンの判別は、単にBPM速度の違いという事にもなる。
他ジャンルの要素を取り入れる事が多いため、未熟なリスナーにとっては、同系統のスタイル(すなわちノイズコア、ガバ、テラーコア等)はどれも似たような曲調に聞こえる。
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[編集] 特徴
典型的なスピードコアは、いわゆるアンチミュージックと反体制な主張と位置付けられる。曲調は荒れ狂っており、非常に攻撃的であり、リスナーへ敵意を煽るようなものが多い。スピードコアのDJは、エレクトロニック・ダンスミュージック(EDM)の限界を超えた極端な状況を作り上げるために、このような攻撃的な曲を好んでプレイする。大半のスピードコアのアーティストは、ありきたりな普通の音楽、果てはスピードコアの元となったガバですらも攻撃的に非難している。スピードコアの極端論主義は、ごく一部の極端な者を洗脳し、あらゆる標準的な価値を嘲笑してパロディー化している。
作成の手法としては、関連ジャンルのハッピーハードコア、またはガバ、ハードコアテクノに関係するサンプル(音の素材)の使用が多い。また、ビング・クロスビーやフューチャラマのような底抜けに明るく、かつ狂気じみたサンプルも多用される。240BPMを下回る事のない高速テンポは別として、スピードコアは頻繁に猛り狂ったスネアドラムとタムタムの連打によるドラムパーカッション・トラックが使用される点も、他のハードコアテクノと区別する特徴となる。
Roland TR-909のようなドラムマシンが生み出すバスドラムを、いかにして異常に歪ませて魅力的にパーカッション・トラックへ使い回すかも、スピードコアのアーティストの必要能力の一つとなる。シンセサイザーについては、どんな安価なアナログシンセでも基本的には問題はないが、強いて言えば、ローランドJuno-106に代表されるアナログシンセサイザーが、スピードコア・アーティストのお気に入りシンセとして挙げられる。反面、デジタルシンセサイザーの使用は、スピードコアには比較的珍しいものとなっている。
マーティン・スコセッシやスタンリー・キューブリックが監督する映画からのサンプルは、特によく使用される。これらの映画には、暴力的なセリフが多いために、そのサンプルはスピードコアのような攻撃性のある曲調をより高める演出に用いられている。また、ジョー・ペシとリー・アーメイのような俳優のサンプルも人気が高く、特に古いスピードコアの作品によく見受けられる。一部アーティストに至っては猥褻な叫び声を取り入れる事も多い。
レコードプレーヤーまたはターンテーブルは、通常ベルトドライブやダイレクトドライブのモデルを独自に加工して使用している。これらは、レコーディング過程においてシンセサイザーで作成するのが困難な、さまざまな「スクラッチノイズ」や高速な歪んだ音を産み出してくれる。この特性のため、スピードコアのアーティストにとっては、ターンテーブルはライブに必要不可欠な機器であると考えられている。
[編集] 歴史
最初の本格的なスピードコアのアーティストは、Sal Mineo、Nick MarchettiとCarl Carinciによって1993年にニューヨーク市で結成された、Disciples of Annihilation (D.O.A.)と言われている。一年後に彼らは、"Industrial Power 9D4"をはじめとしたシングルをインダストリアル・ストレングス(Industrial Strength Records) からリリースした。スコットランドのハードコアテクノのホームベースで幾つかのパフォーマンスを行った後で、D.O.A.はイギリスのレコードレーベルであるイヤーエイク・レコードと契約し、デビューアルバムとなる"New York City Speedcore"を1997年前半にリリースした。その後、メンバーのMarchettiが死去する事によりD.O.A.は解散したが、彼らの作り出したサウンドは現在も生き続けている。
[編集] 主要アーティスト
- DJ Sharpnel
- DJ Skinhead
[編集] 関連リンク
[編集] 外部リンク
主に英文サイト