チューニングカー
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チューニングカーとは、市販その物でない自動車(改造車)の事を指し、その内容がドレスアップよりはサーキットでのラップタイムを上げる、ドリフトでよりアングルをつけるなど、性能を走り方向に振った車両の事である。
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[編集] 日本における歴史
一般的な意味合いとしてアフターマーケットにて入手した改良用品等をユーザーがショップへ取り付け依頼等個人で純正品から交換ないし部材加工を施し、減価償却された型落ち車両等で新型車、他メーカーライバル車や高性能車より性能の潜在能力を突詰めて新型車を出し抜く為の改造、及び改善の為に社外強化用品があり、そういった部材で改変した車両を指す。 傾向としてはその様な用品を売る為のショップ、又は一部を変えただけでは車両のトータルバランスが著しく無い為、バランスを保つ為のアドバイス、ノウハウを知る為にチューニングショップが存在し、レースで活躍しているチューナーこそ人気が集中する。
[編集] 初期
こうした車両の作成例は国内ではモータリゼーション、スーパーカーブーム、富士グランドチャンピオンレースの1970年代頃から市販車ベースに盛んになっており自動車専門誌への投稿、当時少数では在るもののショップへの依頼からのプライベートレース出走等によって広まり続けている。腑分けとしてオーナーは街道レーサーや族車、エンスー等から枝分かれする。サスペンションシステムの改変の一例をオーナー種別毎にみてみると、族車ユーザーの例として見た目重視的なスタイルからか車高をベタベタに低くする方法としてサスペンションシステム中のスプリングを外してホイール径ダウンを施す例が少なくなかった(所謂ノーサス)。しかしこれでは車高が下がりスタイルが変わったとしても、トータルバランスが著しく崩れる等、速く走らせられる範疇から外れてしまう改造例が少なくない。又、見た目重視の改造の為、タケヤリ、デッパ等の不必要なまでいかつく主張をした部材を装着する車両が多いのもこの部類の特徴。製作素材もFRPないし太いタイヤを履かせる為によるブリスターフェンダー等に見る鉄板叩き出し、タコ足、横出し直管、タケヤリ、デッパの補強の為の吊り下げワイヤでの断裂、脱落防止の強化等実用性への方向性に向くのはもっとも軽く強い素材がコストダウンされた後であるが、当時は町工場等で作成される為苦労していた模様である。現在に至るまでこれらユーザーは少子化になるにつれVIPカー、バニングに流れていっており、流れに沿わない残党が旧車のミーティングイベント等で少数混じって失笑を買われる事がしばしばある。
街道レーサー、エンスーユーザー向けセッティングとして社外海外製強化ショック導入、スプリング長を短くした上でのバネ定数アップやブッシュ類の強化、タワーバー導入をすることにより、ホイールアライメント変化の抑制、車体の低重心化というバランスを保つ方向性から、コーナリング特性を含む運動性能を向上させる節があり、プライベートレース出走を考慮に入れた構成。又、車体のバランスを考えたエアロパーツを社外、純正フル装備で装着したり、国内レース仕様をオーバーラップさせる改造を行うユーザーが街道レーサーには多い。又、エンスーは外車ユーザーや、外観だけ純正仕様とするユーザーに当てはまる傾向が強い。だが、メーカ純正リリース時点で運輸省、警察の圧力での死亡事故撲滅の為か環境対策の為にメーカーはパワーを自己規制する時代と重なると同時にターボ車が台頭してくるまで市販車ベースのワークスレース活動を縮小していた時代である。そう言う時代に旧車でのノウハウを積んで来たチューナーも数多く存在しており、漫画よろしくメカドックでチューンの意味はエンジンのパワーアップだけではない事、暴走族との腑分けを世に知らしめ、チューン技術をターボ車が台頭してくる当時の視点で解り易く解いており、漫画の主旨がレース方向になったものの、この漫画が影響されているチューニングカーもチューナー等を架空とした上で数多く実在する。その中で個人ユーザー向けで中心となった当時のチューンの要素として国産の空燃技術はキャブレータ車のNAオンリー時期でもあり、空燃比の効率化を目的としたフィルター取り外しや圧縮空気導入を考慮する為に模索していた。そのアイデアが後年のマッスルカートランザム等の純正装備に見られるラムエアである。次に点火システムのCDI化であり、当初デスビといったイグニッションコイルから来た昇圧電流を機械式に気筒の本数分ある点火プラグへ振り分け、タイミングをとる部分を電子化し、点火の確実性をあげ、メンテ周期、燃費を伸ばす後付け用品の装着が多く、これだけでも満足いける手法が主流であった。特に旧車等へはメジャーと言って良いほど装着例は多粋に渡る。この頃からボアアップ系の話題はレストアのジャンルから引っ張ってきた技術では在るが、アメリカ等から雑誌等で来る話題程度に日本では車検は通せない為、アンダーグラウンドに知られていた程度である。
特に1970年代後期~1980年代時の道路交通法では、スプリングを抜くことはもちろん、交換でさえも申請無しでは違法行為であった程、一般的に手を加えただけでも車検(継続検査)を通すには困難であった。この頃錘の反射板があるという下らない理由で車検落ちすることがあったり、KPGC10スカイラインGT-Rの標準装備であるオーバーフェンダーでさえ注意されることもあった。この影響から当時、どうやって突発的な警察の取り締まり(ネズミ捕り)に対する言い逃れが課題となっていった。
本来、マル改車検と言われる改造自動車申請をすれば合法となったものの、この申請には専門的知識が要す。例えばサスペンションやシャーシ形式の変更等は耐久検査も含む為もう1セット作成しておき、図面も提出する等。ごく普通の個人オーナーが行うには困難であった。その厳しさゆえ、申請をパスできる車はごく一握りしか存在していない。
根からのストリートファイターであったRE雨宮代表、雨宮勇美は、ほぼ全てのデモカーをマル改車検に通すことに成功している(失敗例としてAZ-1ベースのGreddy VI)。
[編集] 成長期
BNR32 スカイラインGT-Rの登場とともに、チューニング業界は一気に加熱する事となる。
それまでチューニングの対象としてポピュラーなエンジンであった1G-GTE、7M-GTEやL型ではフルチューンに近く、それに伴いエンジンライフも極端に減少していたパワーを、マージンをたっぷり取ったブーストアップ仕様でほぼ横ばい(450PS - )。軽度なエンジンチューンとタービン交換(600PS - )によりあっさりと抜くRB26DETTと、強力なトラクションを発揮するアテーサ4WDシステムのおかげで、ナンバー取得がどうあがいても不可能な、RRCプロクラスの車さえをあっさりと抜き去る能力を持っていた(当時のプロクラスが11秒台だったのに対し、ヴェイルサイドの2.7L+TD06Sツイン仕様が街乗り可能なのに10秒台前半を連発)。
Optionでは自走可能な車で300km/hオーバーな車が続々と登場し、HKS関西サービスのGT-Rは280km/hアベレージで30分間の走行を行い、チューンドカー=耐久性の減少と言う言葉を無き物にした。
[編集] 爆発期
1995年(平成7年)、アメリカからの圧力もあり、自動車の部品に対する規制が一気に緩和される。これによって今まで非合法とされてきたチューニングカーが合法になった例は少なくない。
また、旧基準ではマル改車検を取れないような大幅な改造でもマル改車検を取得する事が出来るようになった。 かつてマル改車検が取れず、涙を飲んだRE雨宮 Greddy VIも東京オートサロンにて、リニューアルと共に車検を取得している。
しかし、パワーを上げるため触媒を取り払う、爆音マフラーを入れるなどの違法チューンは相変わらずで、ディーラーでもあまり良い顔はされなかった。 この頃はまだパワー全盛期であり、パワーが無ければ楽しめないという風潮があったため、このような事になっていたと思われる。 ただ、これによりチューニングカーがレーシングカー顔負けの能力を持つ事になったのは事実である。
[編集] 沈静期
ゼロヨン、ドリフト、グリップ、最高速と、ジャンルが特化して行った結果、どのジャンルも均等に楽しめるチューニングメニューが存在せず、どのジャンルで楽しむにしてもお金がかかり過ぎるようになってしまった。 バブルがはじけてしまったため、パーツ1つ買うのに60万~70万かかるようなフルチューンが出来ず、ライトチューンレベルに引き下げる事になってしまった。 しかしこれが功を奏したのか、爆音をとどろかせる事が少なくなってきて、ディーラーレベルでも保安基準適合マフラーや、ローダウンサスを販売する所が出始めてきた。
[編集] 転換期
1999年(平成11年)、一部(主に騒音)の規制が強化される。これにより各社とも方針の転換を余儀なくされる。
しかしここから得た物は非常に大きい。例を上げるとT.P.O.に合わせた音量を出せる可変バルブ式マフラー、排気抵抗を下げつつ、浄化能力は純正同等なメタル触媒などである。
また、技術革新はどんどんすすみ、どんなジャンルも少しのセッティング変更で楽しめるような、汎用性を持ったチューニング(所謂ストリート仕様)が推奨されるようになった。
日常生活を犠牲にせず、いざとなったら楽しめるというスタイルは、1台しか車を持てない一般家庭にヒットしていく事となる。 部品の進化が進んでいった結果、SUPER GT出場のGT300クラスの車をしのぐ速さを手に入れる車も出るようになった。
かつては騒音などにより忌み嫌われてきた「ドリフト」もモータースポーツの一つとしての地位を築きつつある。そしてチューニングカー限定のD1グランプリ、車検をパスできる車限定のD1ストリートリーガルなども少しづつではあるが認知されてきており、チューニングカーはほぼ市民権を勝ち取ったというレベルに達しているという見方もある。
[編集] 現在
人の心が変わってきたのか、自分のスタイル以外の車を良しとする人が多くなってきた。 以前はエアロチューンのみの車は割と嫌われてきたが、いまではそういう楽しみ方も増えスポーツコンパクトというジャンルにまで発展している。 新型のスポーツカーが少ない為、スポーツカー以外の車を快適性を損なわないで速くするというスタイル(通勤快速仕様などと呼称される)が大半を占めるようになる。 改造ではなく、自分の気に入らない部分を調律(チューニング)するという考えである。
[編集] 問題点
- いまだに爆音マフラーで暴走する車が後をたたず、一般市民の迷惑になっている。
- 一般車を巻き込んだ事故を起こす車も多い。
- 規制緩和によって合法・非合法の認識が大きく変わったが、未だに正確な知識を持たない警察官や(車検の)検査員により、言いがかりに近い整備不良を付きつけられた例もある。
- 安全に走れるサーキットも存在するが、数が少なく走行料金も高い。
- チューニング費用が中古のレーシングカーと貸しガレージ代に匹敵する場合もある。
[編集] 主なジャンルとチューン内容
[編集] ストリート
快適性を犠牲にせず、乗りやすい速さを求めるスタイル。現在の主流。
内装はがしや、エアコン、オーディオユニットの取り外しなどの極端な軽量化は行わず、逆にカーナビゲーションや追加スピーカーなどを搭載し、重量増になっている事もある。
エンジンも低速トルクが無くなるほどの極端なチューンを行わず、吸排気系チューン+ECUチューン。それに加えターボ車ではポン付けタービンと呼ばれる、エンジン内部を強化しなくても使えるターボチャージャーを装備することがある。
これに加え、自分だけのかっこよさを追求するため、外装にエアロパーツを取り付ける、ローダウンサスペンションや車高調整式サスペンションを装備し、車高を下げることも多い。
これと言ったメイン車種が決まっておらず、自分の好き勝手な車をチューニングしていくのも特徴であり。以前と比較すると、現在は幅広い車種にまでアフターパーツが販売されていることも理由の一つである。
[編集] グリップ
街乗りと兼用する車では、ストリートカーの内容に加え、Sタイヤの装着でグリップ力を上げる、ロールバーの装着でボディ剛性を上げるなどを追加するぐらいだが、極端なチューンとなると、内装はすべて軽量化のために剥がされ、エアコン、オーディオ、場合によってはパワーステアリングまで軽量化のためと外される場合がある。
これに加え、室内はロールバーのパイプでジャングルジム同然になり、外装は空力でグリップを得るため、羽根だらけになることも。
エンジン関係は鋭いピックアップを得るため、極端なパワーチューンにはならないが、あまりにも低速トルクがありすぎるとヘアピンコーナー立ち上がり等でホイルスピンを誘発し、タイムが上がらなくなる原因にもなるため、あえて高回転寄りの特性にすることがある。
[編集] ドラッグ
まず大切なのがエンジンパワー、そして前に進めるだけを要求されるトラクション性能である。 そのため、極端にパワーを追求したエンジンと、トラクションを得るため、他のジャンルとは全く違うセッティングになるサスペンションが特徴的である。
また、タイヤもほかのジャンルでは使えないような直線グリップ重視、コーナリンググリップ軽視の特殊なタイヤが使われる。
パワーとトラクションが重要視されるため、パワーを得やすい大排気量車やトラクションを得やすい4WD車が主に使われる。コンパクトカーや軽自動車などの小型・軽量な車両が使われることも。
[編集] 最高速
これもドラッグ仕様同等のパワーが要求される。しかし、空力で車体を押さえ込んだり、高速域でも安定したコーナリングが要求されるため、ボディ側はグリップ仕様に近い物となる。 ただ、サスペンションは硬すぎるとギャップで跳ねてしまい、危険なので、若干やわらかめに設定される。
初期の最高速はフェアレディを中心とした日本車勢と、スーパーカー、そしてポルシェ911の三つ巴状態だったが、雨宮勇美はマツダ・シャンテに12A ロータリーエンジンを換装しターボ化した物を使い、TRUSTのカンブ大川はトランザムを使い、異彩を放っていた。
その後、バブル崩壊の影響で莫大な維持費がかかり、そもそものコンセプトが日本車やポルシェと異なるスーパーカーはほとんど姿を消した。
[編集] ドリフト
ドリ車の項目を参照されたい。
D1ストリートリーガルに出られるような車両が多いのだが、中にはD1グランプリに出られるようなハイチューンの車も使われる。
[編集] 呼称における注意点
「チューニング(tuning)」とは本来「調律・同調する」という意味であり、「改造」の意味合いは全く無い。チューニングカー=改造車と扱われる事から、しばしば誤解を招く事があるが、両者とも「手を加える」という点では一致しており、「現状の物(車)に手を加える事で、好みの状態に調律させる」と考えるのが妥当である。
[編集] 関連項目
- 改造車
- Option - Optionの歴史はチューンドカーの歴史と自負するほど、チューンドカーと共に生きる雑誌。
- 走り屋 - 主にチューニングカー(バイクも含む)に乗り、走ることを趣味とする人の総称。
- 頭文字D、湾岸ミッドナイト、よろしくメカドック - チューニングカーがメインの漫画。
- 東京オートサロン - チューニングカーメインのモーターショー。
- 大阪オートメッセ - 大阪で行われる、チューニングカー、ドレスアップカーメインのモーターショー。
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