テレホンカード
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テレホンカードとは、公衆電話を利用するためのプリペイドカードである。
一般的にテレカと略される事もあるが、これはNTTカードソリューションの登録商標である。
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[編集] 概説
日本では1982年12月に旧日本電信電話公社が発行を開始した。1972年に日本国内で100円硬貨の利用できる黄色の公衆電話機が設置され始めたが、100円硬貨が電話機の金庫に収納された通話の場合に釣り銭の返却はなく(※)、現在も同様である。当初は釣り銭式電話機の開発も検討されたが、製造・運用コストの増嵩が見込まれ、見送られた。そこで、釣り銭の現金払い出しに代わる手段として磁気媒体を利用するカード式公衆電話が製造された。
- ※公衆電話の硬貨収納 投入された硬貨は一旦機内に保留され、10円硬貨から1枚づつ、通話時間が始まる毎に金庫に収納される(落ちる)。100円硬貨は同時に投入した10円硬貨による通話時間が終了してから金庫に落ち、落ちた100円硬貨の通話時間分は釣り銭が出ないが、金庫に落ちず保留された状態の硬貨は通話終了後返却口に戻る。100円硬貨単独で掛けた電話が間違いであった場合などは100円分が不意になってしまうので、まず10円硬貨で通話を始める事が奨められた。
利用者にとっては、通話したい時の硬貨の用意や釣り銭の出ない不満、長時間通話の場合の通話切れの心配(多量の硬貨の追加)が無用となり、設置者にとっても、金庫満溢による停止を避けられる他、硬貨集金の巡回経費を節減できるメリットがあり、このカード式電話機用のプリペイドカードとして、現在でも広く使用、販売されている。
オリジナルの絵柄をプリントしたフリーデザインカードが、一時期は記念品や商品の特典など贈答用として有効活用された。テレホンカード全盛の頃は、蒐集家(しゅうしゅうか)が「カードコレクター」と呼ばれ、稀少価値の高いカードの蒐集に力を入れていた。特に人気タレントのテレホンカードは、50度数(使用済み券の場合もある)でも何十万円もの価格で取引された時期もあり、カード毎の時価が記載されたマニア向けの雑誌やカタログも多数発行された。
蒐集家の団体としては、「テレカ収集協会」(東京都)があり、毎月1回交換会を東京(池袋)で行っている。この他、各地に収集家の会がある。
かつては贈答用や新規オープンの店舗が名刺代わりとしてオリジナルのテレホンカードを配る事が頻繁に行われていたが、現在では公衆電話が携帯電話の普及により減少傾向であるため少なくなった。現在では、クオカードや図書カードなどが増えている。
「テレフォンカード」と表記される事があるが、NTTでは「テレホンカード」と表記する。
[編集] 磁気テレホンカード
一般的に、テレホンカードと言えばこの磁気テレホンカードを指す。後に登場したICテレホンカードと区別するため、NTTなどではこの呼称を使用している。
発売開始当初は、カード購入時に公衆電話での使用方法を書いた「ご利用の手引き」も渡された。現在のテレホンカードは50度数と105度数の二種類が販売されているが、かつては320度数や540度数のテレホンカードも存在していた。しかし偽造テレホンカードを用いて国際電話を掛けたり、ダイヤルQ2につないでNTTから情報料を詐取するといった不正行為が増加したため、1991年12月28日に廃止され、以降105度数を越えるカードの使用はできなくなり、さらに翌1992年からはテレホンカードによる国際電話もできなくなった。因みに使用不能となった105度数を越えるカードは、東西NTTに申し出れば、等価分の105度数カード(端数分は現金)に交換してもらえる。
電電公社時代に最初に発売された岡本太郎デザインのカードの一部など、それなりに希少性のあるものは、現在でも数万~10万円程度のプレミアムが付加されている。
テレホンカードは、未使用であれば東西NTT固定電話の通話料の支払いに充当できる(1989年より。但し、基本料金への充当は不可。さらに手数料として1枚あたり税込みで52.5円が差し引かれる。)。請求された通話料分以上を支払った場合でも、余った分は繰り越して翌月以降の支払いに充当する事が可能である。東西のNTT営業所窓口か郵送での受付となっている。郵送(配達記録郵便を推奨)に関わる費用については利用者が負担する。 かつては金券ショップでテレホンカードを安く仕入れて支払いに充当するといった裏技も存在したが、NTT営業所の支払い窓口の殆どが営業合理化の名目で閉鎖されていき、有効な裏技とはいえなくなっている。(東京では2003年に営業所窓口のほとんどを閉鎖してしまい、充当処理を直接受け付ける窓口は西新宿営業所のみとなっている。)
[編集] ICテレホンカード
1999年に、日本では横行する偽造テレホンカード対策としてそれまでの磁気式に加えて、ICを利用したICテレホンカードと、これに対応するICテレホンカード対応公衆電話機が登場し、320度数と540度数のテレホンカードも復活した。
ICを使用しているため、「偽造はほぼ不可能」との触れ込みで、鳴り物入りのデビューであったが、
- デビューした時には既に携帯電話が普及しており、公衆電話の利用頻度が下がっていた。
- 従来の磁気カードとの互換性がなく、専用のICテレカ対応公衆電話機でしか利用できない。
- 専用公衆電話の設置台数も従来型と比べ1割程度と伸び悩み、利用しづらかった。
- 磁気カードと違い有効期限があるため、期限内に使い切る必要がある。
事が仇となり、結局は大きく普及せず、2006年3月末を以てその役目を終えた。今後は磁気カードのみになり、未使用分のICカードについては磁気カードと交換するなどの措置をとっている。
2002年に開催されたFIFA WORLD CUP KOREA JAPANでは、記念カードが販売された。
105度数には電話番号を1つだけ記憶できるダイヤルメモ機能が、320度数には電話番号を10件登録できる電話帳機能があるが、ダイヤルメモと電話帳の両機能に互換性はない。
50度数・320度数・540度数については先に販売を終了し、最後まで残ったのは105度数のものだった。
[編集] テレホンカードの値段(現在は磁気テレホンカードのみ)
- 50度数:500円
- 105度数:1,000円
- 320度数:3,000円(現在は販売なし)
- 540度数:5,000円(同上)