トキ (北斗の拳)
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トキは、漫画『北斗の拳』に登場する、架空の人物。
[編集] 声の出演
[編集] 人物
カイオウ、ラオウの実弟。ジャギ、ケンシロウの義兄、サヤカの実兄であり、北斗4兄弟の中では最も紳士的な雰囲気を漂わせる。
北斗神拳史上最も華麗な技の使い手であり、ジャギすら伝承者として認めていたほどであったが、核爆発の際、ケンシロウとユリアをシェルターに入れるため(原作版ではシェルターが満杯の為となっているが、それには子供をおんぶすれば全員入れたと言うツッコミも成立した事から、アニメ版ではシェルターのドアが故障した為、自らの力で外側からドアを閉め続けた、と言う描写に変更。)自ら犠牲となって死の灰をかぶる。
被爆後、それによる病のために継承者争いから脱落。残された余生を生かして、「奇跡の村」などで北斗神拳の原理を応用した医療行為を行っていたが、実兄ラオウの野望を阻止するために立ち上がる。
ラオウやケンシロウの拳質が闘気を前面に押し出す『剛(の)拳』なのに対し、静水のごとく『剛(の)拳』を受けて、流れの隙を突く『柔の拳』の持ち主。病のため放浪できないと確信したトキは、あえてカサンドラに囚われの身になってケンシロウとの合流を待っていた。ラオウは部下に合流の阻止を厳命していたほど、トキの拳を恐れていた。
又、『剛(の)拳』を食らうと激痛の後絶命することが多いが、トキは苦痛を与えずに相手を葬る『北斗有情拳』を使う。特にトキの有情拳にかかると天国すら感じると言われ、トキが劇中最初に見せた有情拳(有情破顔拳)では、二人の敵が腕や脚が妙な方向に勝手に曲がっていくのを目にしても快感を覚えながら破裂していった。このように『北斗有情拳』は、どんな悪党に対してでも、必ず憐れみを持って葬り去る拳で、ケンシロウを上回る優しさを持つ彼ならではの持ち技である。
上記の通り北斗有情拳はトキの代名詞的技ではあったが、後にケンシロウが、聖帝サウザーにとどめを刺す際に、相手に情けをかける技として「北斗有情猛翔破」を使った。 この事から有情拳は、『柔の拳』特有のものではなく、北斗神拳の拳技か奥義のひとつと推測できる。
ラオウと同様、後付での設定もあって、リュウケンの養子になった経緯などにはいくつかの矛盾がある。
ラオウとふたり、養子に迎えるのはどちらかひとりとして崖に突き落とされたが、ラオウが彼を抱えて崖をよじ登ってみせたため、リュウケンの養子となった、というエピソードがその中でも有名である。当初はあくまで伝承者候補ではなく、ラオウがその面倒を見るという条件での養子入りであったが、リュウケンとラオウの稽古を覗き見しながら北斗神拳の技を体得してしまうほどの天与の才を発揮、彼自身の希望もあって伝承者候補となる。特に語られてはいないが、カイオウ、ラオウと共に北斗宗家の血を継いでいる筈である。
少年時代のラオウは、もし自分が道を外れたときにはトキの手で自分を倒してくれと約束し、この言葉をトキは終生忘れなかった。その野心さえなければ喜んで伝承者の座をラオウに譲っていたと涙したこともあった。
病を背負った身体でラオウに挑むために、最終決戦では、自らの残命を縮めても生を呼び覚ます秘孔「刹活孔」を突くことで一時的に剛力を得る。こうして死を覚悟して、ラオウと同じ 『剛の拳』で対抗し、「天翔百烈拳」でラオウに膝をつかせるまで追い詰めたが、「刹活孔」を突いて徐々に弱っていく拳では、悉くとどめを刺すに至らず、ラオウの涙と共に繰り出された拳により敗北した。このラオウ対トキの決戦は、ケンシロウの関わらない戦いの中では、「北斗の拳」のベストバウトのひとつであり、後の格闘漫画で多くリスペクトされることになった「せめて奥義で葬ろう」の言葉は、元々この決戦においてトキがラオウに発したものだった。(アニメ版でラオウがジュウザに対して用いた印象が強いためにか、「敵側の強敵が一抹の情けをかける台詞」として用いられることが多かった)
対ラオウとの決着の後、ラオウは『 自分を目指した男トキは死んだ。此処にいるのはただの病と闘う男。』とトキの命を取らず、体をいとうように告げ立ち去る。トキも「刹活孔」を突いてからは、もはや余命もわずかで、病の進行は著しいものがあり、村人たちへの医療活動すらも苦しい状況だった。そこに追い討ちをかけるかのごとく 天狼星のリュウガに襲われてしまう。しかし病んでなお眼力の高いトキは、リュウガの真意を読み取ると自ら甘んじて致命傷を受け、リュウガの居城へ連れて行かれる。トキは、危急の知らせを聞き駆けつけたケンシロウが、真の怒りを覚え、リュウガに対しとどめを刺さんとする刹那に現れると、ケンシロウに『 哀しみを怒りにかえて生きよ 』と諭し、彼に未来を託して、既に事切れたリュウガを腕に抱え、最期は立ったまま世を去った。
ラオウがついに見抜けず、ケンシロウも一度惨敗して二度目の戦いの中でようやく気付いたサウザーの身体の秘密も密かに察していたほどその才は図抜けており、病さえなければ…とラオウとケンシロウの両雄からも繰り返し惜しまれた拳士だった。ことにラオウの彼の宿命への憎悪は常人では計り知れないものがあった。
その風貌はイエス・キリストそのもので、得意技有情拳や弱者救済のエピソードなども、これに準じたものといえる。
ちなみに柳田理科雄によればケンシロウ達を守るために浴びた放射能の量は致死量の約1億倍とされ、北斗神拳抜きでも超人的な肉体を持っていた事が窺い知れる。(もっとも、架空の世界である北斗の拳の世界に、現実の科学的な検証を適用すること自体どうかと思われるが、そういった倫理的な問題は柳田氏自身も批判を浴びていて承知の上での事なので、ここではあまり言及しないものとする。)