トリアゾラム
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トリアゾラム (Triazolam) は第3種向精神薬であり、商品名ハルシオン (Halcion®) としてファイザー(開発はスウェーデンのファルマシア社、2003年にファイザーが買収)から発売されている超短期作用型ベンゾジアゼピン系睡眠薬である。
最高血中濃度到達時間は1.2時間、半減期は2.9時間、作用時間は7時間であるとされている。ベンゾジアゼピン系薬物の一般的機序は、GABA受容体のサブタイプのω1受容体に作用することで、Clチャネルを開口させることでClの透過性を亢進させ、過分極を発生させることで、活動電位の発生を抑制することにより、催眠作用を発現する。
肝臓のCYP3A4という酵素で代謝されるため、この酵素を阻害する薬物やアルコールとの併用で、薬物の作用が高まる可能性があるので注意する必要がある。
この薬の服用により、めまい・ふらつきが起きる事が有るので、原則として就寝直前に服用するよう処方される。服用後の活動は、事故の原因となるので避ける必要がある。
副作用として最も多いものに、一過性前向性健忘、抗コリン作用、持ち越しがあるとされている。
また錠剤はSP包装に入っており、0.125 mg の規格と 0.25 mg の規格がある。0.125 mg の錠剤は薄紫(0.25mgより薄い青色のため薄紫であり、0.25 mg の錠剤は青色である。不眠症の他、麻酔前や手術前にも使用される。
臨床では、高度の不眠症の高齢者では1回服用量 0.25 mg までという制限があり、高度な健常人の不眠症では1回服用量 0.50 mg までという制限がある。ハルシオンの発売当初、アメリカでは 1 mg 錠も存在したが、様々な問題があり姿を消した。この制限量を越えて長期連用すると、精神依存を起こすことに加え、耐性が生じやすくなるので、注意しなければならない。
不法に入手しドラッグ遊び感覚で服用する者もいるが、麻薬や他の一部の向精神薬のような多幸感は特に発現せず、サイケデリックな夢を見るわけでもなく、ただ眠くなるだけである(酒に酔ったようなもうろう状態を生ずるとの報告例もあるが、いずれにせよ麻薬や他の一部の向精神薬のような多幸感は特に発現しないと考えてよい)。ハルシオン錠がいわゆる「ドラッグ」における多幸感作用を期待する者が多い背景には、「ハルシオン」という錠剤名が「幻覚」を意味する hallucination(英語:ハルシネーション、仏語:アルシナシオン) に由来しているからとも考えられる。
数千錠では致死量に至らない。この薬は前記の通り、第3種向精神薬に指定されており、麻薬及び向精神薬取締法により厳しく規制されている。
[編集] 外部リンク
(英語)ファイザー製薬による添付説明書(PDF)