トリスタンとイゾルデ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『トリスタンとイゾルデ』 または 『トリスタン物語』 は、中世に宮廷詩人たちが広く語り伝えた恋愛物語。マルク王の妃となった イゾルデ(Isolde) と、彼女と媚薬の魔力で結ばれた 騎士トリスタン(Tristan) の悲恋を描く。イゾルデはドイツ語で、フランス語では『トリスタンとイズー』(Tristan et Yseut)
起源はケルトの説話であり、12世紀の中世フランスで物語としてまとめられた。まもなくドイツにも伝えられた。
目次 |
[編集] 流布本系と騎士道本系
『トリスタンとイゾルデ』の物語には異本が多いが、大きく流布本(俗伝本)系と騎士道本(宮廷本)系という二つの流れに分けられている。流布本系では荒々しい登場人物が情熱や衝動のままに動く物語であるが、北フランスの宮廷詩人(吟遊詩人)たちが、12世紀に新しくあらわれてきた「ミンネ」という語で表される恋愛思想に当てはめて作り直し、騎士道本系の流れが生まれた。前者の代表作としてはドイツの詩人アイルハルト・フォン・オーベルゲのもの(1170年頃)が、また、後者の代表作としてはフランスのトマのもの(12世紀後半)がある。
物語のなかで重要な役割を占めるのは母イゾルデが持たせた媚薬だが、その役割の解釈は流布本と騎士道本とで異なっている。騎士道本ではミンネの観念からいって、恋には一定の作法がなくてはならず、情熱に突き動かされた求愛は騎士にふさわしい恋ではない。ましてや薬のような外部からの力による恋は考えられない。しかし、流布本で既につくり上げられた物語は魅力もあり、定着しているため、宮廷詩人たちは解釈のほうを変えることにした。すなわち媚薬はもともと隠れていた感情を呼び覚ます薬であって二人の恋愛感情はもともと存在したが抑えつけられていたものだ、という解釈である。
[編集] 邦訳
- トリスタン・イズー物語(岩波文庫) トマなどの古い本文は完全な形では残っていないため、フランスの研究者ジョゼフ・ベディエが編集したテクストを底本としている
[編集] 映画化
2006年、ケヴィン・レイノルズ(Kevin Reynolds) 監督により映画化。トリスタン役はジェームズ・フランコ、イゾルデ役はソフィア・マイルズ。
[編集] ワーグナーの楽劇
上記の物語を題材とする、リヒャルト・ワーグナーの楽劇。(トリスタンとイゾルデ (楽劇)を参照)