ハイ・ファンタジー
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ハイ・ファンタジーはファンタジー小説のジャンルの1つ。異世界ファンタジーといわれる事もある。
架空の世界(異世界)を主な舞台とし、現実世界とはかかわりが薄いのが特徴の物語で、ロー・ファンタジーと対比して使われる語句である。
明確な定義はないが、
- ハイ・ファンタジー:異世界(現実とは別の世界)を設定し、そこで展開する物語。
- ロー・ファンタジー:現実世界を舞台にし、そこに魔法や妖精など異質な存在(ファンタジー的な要素)が介入してくる物語。
と認識されている事が多い。この定義の上では、厳密に創り込まれた世界観を持つ『指輪物語』や、対してライトノベルに多い、作品の創り込みが比較的軽易な特徴を持つもの等もハイ・ファンタジーに属するが、後者を性質上ハイ・ファンタジーに含めない用法もある。このことは「ハイ(high:高い、上等な)」という言葉によって何らかの作品評価を行おうとしているからであろう。
この性質を分けて前者をハード・ファンタジー、後者をライト・ファンタジーと分けられることが多い。さらにハード・ファンタジーを、大人向けの読み物としてアダルト・ファンタジーや、青少年向けのヤング・アダルト・ファンタジーと分けられることもある。例としては前者は先にも挙げた『指輪物語』、後者は『ドラゴンランス』が挙げられる。
よってハイ/ロー・ファンタジーは作品の舞台によって分類する分け方で、ハード/ライト・ファンタジーは作風によって分類する分け方と定義できるだろう。
なおハイ/ロー・ファンタジー分類はの形成は(類似した分類はより溯れるにせよ)ヒロイック・ファンタジーという概念以降のものであり、同時にハード・ファンタジーやライト・ファンタジーといった分類はより近年、おそらくは前述の『スレイヤーズ!』の登場に前後して形成されたものであるとされる。そのため執筆時期によっても、その意味がずれているケースも存在している。
[編集] その他の定義
また、「ハイ・ファンタジー」には以下のような意味もある。
- 「ヒロイック・ファンタジー」の対義語。超人的な英雄が活躍するヒロイック・ファンタジーに対し、現代文学的な日常レベルの登場人物の物語。
- 異世界ファンタジーを「異世界だけで完結している物語」と「現実世界の登場人物が異世界を訪れる物語」に分けたときの、前者。前者を指輪型、後者をナルニア型とも呼ぶ。
- 上記の事を提示した上で、本稿では主にハード・ファンタジーを視点とした内容を記述する。
[編集] 主なハイ・ファンタジーの種類
- エピック(叙事詩)ファンタジー
- ヒロイック(英雄)・ファンタジー
- 神話・民話系ファンタジー
- 次元送還/タイムトラベル・ファンタジー(ロー・ファンタジーに含まれる事もある)
[編集] ハイ・ファンタジーの一般的な特徴
その世界に生きる人種、社会形態、言語、文化など世界の成り立ちそのものから創造されている作品が多く、作品傾向としては重厚なものが多い。
- 例:『指輪物語』
ハイ・ファンタジーの作品の特徴として、シリアスなトーンで進行し、しばしば叙事詩(エピック)的であること、また超自然的な「悪」に対する壮大な闘いをテーマとすることがあげられる。
ハイ・ファンタジーの典型的特徴としては、
などがあげられる。またこれらの項目によって、ハイ・ファンタジーとロー・ファンタジーとを区別することができよう。
いくつかの作品においては、「現実の(あるいは現代の)世界」に属するキャラクターが何らかの装置(例えば異世界への「門」)によって異世界に放り込まれるケースもある。
ハイ・ファンタジーのストーリーラインの主なものの1つは、「英雄」をめぐる物語(ヒロイック・サガ)である。 大部分の主な特徴は、彼の遺産(heritage)を中心に進行する。
多くの場合、彼はしばしば特異な境遇の孤児であったり、または普通とは違ったところを持った「奇妙な」少年少女で、特定の分野(多くは魔法)における信じられない能力や技術をもっている。 (例:テリー・グッドカインド「真実の剣」シリーズのリチャード・ラール、ロバート・ジョーダン「時の車輪」シリーズのランド・アル=ソア、レイモンド・E・フィースト「リフトウォー・サーガ」のパグ、クリストファー・パオリニ「ドラゴンライダー」シリーズのエラゴン、デイヴィッド・エディングス「ベルガリアード物語」「マロリオン物語」のベルガリオンなど)
ただし作品によっては、確立した自我と個性を持つ完全に成熟した大人であることもある。 (例:デイビッド・エディングス「エレニア記」「タムール記」のサー・スパーホーク)
大部分の物語において、英雄は自分の過去についての知識や遺産を、伝説、予言、家族の喪失と再発見、あるいはより不可解な遭遇から、ゆっくりと獲得していく。そうして得られた知識は彼に力と自信をもたらしていく。
主人公を取り巻く恋愛模様が描かれることも多いが、恋愛の相手となるキャラクターもまた主人公と同様に無個性であることが多い。
ストーリーラインが開始する際に、主人公の人生において重要な秘密やイベントが1つは存在する。
彼は、未知の力によって恐れられている場合が多く、悪の力を無効にできたり、または悪に対してなんらかの重要な脅威となる運命にある。
主人公に助言や援助を与える神秘的な人物の存在もまたしばしば見られる。こういった助言者は、強大な魔法使いや戦士であることが多い。 (例:レイモンド・E・フィースト「リフトウォー・サーガ」のクルガン、J・R・R・トールキン「指輪物語」のガンダルフ、テリー・ブルックス「シャナラの剣」のアラノンなど)
トレイシー・ヒックマンとマーガレット・ワイスによる「ドラゴンランス」とエド・グリーンウッドによる「フォーゴトン・レルム」のようなテーブルトークRPGのキャンペーン設定は多くのファンタジー小説のすばらしい基礎設定となり、そして多くの著者たちがこれらの設定の追加増強に貢献し続けている。
ロバート・ジョーダンやテリー・グッドカインドのように、同じキャラクターを用いた外伝を書く作家も多い。