ガンダルフ
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灰色のガンダルフ (Gandalf the Grey) はJ・R・R・トールキンの中つ国を舞台とした小説、『ホビットの冒険』、『指輪物語』の登場人物。かれは魔法使(イスタリ)の一人で、白の会議の一員であった。シンダール語での別名はミスランディア(Mithrandir)。ドワーフの呼び名はサルクーン(Tharkûn)。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
白い顎髭に青いとんがり帽子、長い杖がトレードマークで、灰色のローブを身に纏っていた登場時点では灰色のガンダルフと呼ばれていた。かれは人間の老人のように見えるが、実際は人間ではなく、西の海の果ての神々の住む国アマンから、冥王サウロンに立ち向かう勢力を一つに束ね、かれらを助けるべく遣わされた5人の賢者イスタリの一人とされる。
その存在はマイアといわれており、アマンでの本名はオローリン(Olórin)で、マンウェとヴァルダに仕え、ニエンナから深い憐憫の心を学んだともいわれる。かれが中つ国に到達したとき、灰色港の領主「船造り」キーアダンから三つの指輪の一つナルヤを讓り受ける。
『ホビットの冒険』ではビルボにドワーフ達を会わせ、暫く旅路を同行している。かれは物語の途中で一旦姿を消し、その間に闇の森南部の死人占い師(モルドールに潜む以前のサウロン)を白の会議の一員として攻撃し、撃退した。この経緯は作中でも簡単に触れられていたが、『指輪物語』では更に詳しく語られることとなる。
『指輪物語』ではフロドら指輪の仲間とともに旅立ち、その途中で難敵と対峙して一行とはぐれ危うく消滅しかけるも白のガンダルフとなって復活、サウロンの勢力に対抗する人々を助け、指輪を葬った後のフロドらとも再会を果たした。後にフロドやビルボらとともに西の海の彼方、アマンへと去る。
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[編集] 性格・能力
かれは火や光・煙を扱わせたら随一の花火使い…だと平和なホビット庄ではみなされており、かれの扱う花火の技は、ビルボ・バギンズが最後にホビット庄で行った111歳の誕生日(フロド・バギンズ33歳の誕生日でもある)のお祝いに大いに華を添えた。
またかれは火薬に拠らずとも光と炎を操る力を持ち、こちらはボビット庄では余り知られていないものの、かれの元々の仕事である危険な任務に際し、重要な局面で発揮されている。名剣グラムドリング(『ホビットの冒険』でトロルの強奪品より発見された)を持ち、この剣を使う事も辞さない。
その性格は、かれの操る火にも関連付けられる。炎のように激しく・また熱く、火のように明るく・また暖かい人物である。激しやすくもあるが冷静でもあり、これと同時に広く古い伝承に光を当て、多くの危機に警鐘を鳴らす人でもある。だがしばしば、かれが先駆けて警告する様々な事象が極めて不吉な事件であるために、蛇の舌に至っては不吉の前触れと表現した。
かれは一つところに留まる代わりに、常に放浪の旅を続けており、人々を支配したり誰かに仕えたりするかわりにその友となって力を貸して歩いている。交友も広く、諸国の王侯・貴族に面識がある一方で、ビヨルンやトム・ボンバディル、グワイヒア、ドゥーネダインのような中つ国でも強い力を持ちながら知る人も少ない特殊な存在とも交流があり、またブリー村のバーリマン・バタバーのような一介の宿屋の主人とも親しい。この人脈の広さもかれの力となっている。
移動し続けている事から灰色の放浪者などという者もおり、その全容を知る人が当人以外にいるかどうかも不明である。
[編集] 「魔法使い」としてのガンダルフ
かれは「呪文を唱えるなどして敵を攻撃する」などといった魔法らしい魔法をほとんど使わないと最近のファンタジーから入った読者に指摘されている。かれの魔法は「望む形の火を起こす」というものであり、果たしてそれが超自然的な力によるものか、あるいは仕込み火薬によるものかに関しての明確な言及も無い。その一方で名剣グラムドリングを振るうなど「かなり魔法使いらしからぬ」活躍を見せている。
この「魔法使いらしくない」という視点は、現代ファンタジーに慣れている読者に顕著である。魔法が登場するゲーム(RPGなど)にガンダルフのような「万能な魔法使い」は登場せず、その制約を受け継いだ現代のファンタジー作品に登場する魔法使いも、総じて「剣は使わない・体力は控えめ・防御力も低い」というキャラクター類型が確立され、これらの「魔法使いのイメージ」に慣れ親しんでいる読者には、ガンダルフの活躍が奇異に感じられたようだ。
- ゲーム制作ではゲームバランス上にて魔法と剣の両方を使うキャラクターは他のキャラクターよりも強力となりやすく、『ウィザードリィ』シリーズでは「サムライ」という職業が「剣も魔法も使えるが成長が(かなり)遅い」難物として登場するほか、単に魔法使いと言うと「魔法使いは鉄を持てない(妖精は鉄を恐れるとする伝承の延長)」などの制限がRPGで行われることが一般化している。なお「呪文を唱える」というイメージもウィザードリィのゲーム上で「魔法名をタイピングする」というゲームシステム上の要素にその原型を求められよう。
ただ元より、かれは神格の一種をもつマイアとされており、その存在自体が既に人知の及ばぬところである。かれの親しみやすい性格は、それを周囲の者には意識させない所もあるのだが。
[編集] 備考
作品発表当時の60年代後半、ベトナム戦争で自国の支配層に失望したアメリカの学生やヒッピーたちに、『ガンダルフを大統領に!』をスローガンにしたムーブメントが盛り上がり、デモ行進なども行われた。
[編集] 語源
アイスランド語で、魔法を使うエルフ(gand alf)と言う意味だと言われている。元々はドワーフの名前だった様である。 また、サンスクリットで魔術師を表すガンダルヴァとも、何か関わりがあるのかもしれない。
エルフの呼び名である「ミスランディア」は、シンダール語の灰色と言う意味のmithとさまようと言う意味のranに人物などを現す語尾dirをつけたものと思われる(つまり灰色の放浪者と言う意味である。)
[編集] 参考文献
- クリストファ・トールキン編『終わらざりし物語』、河出書房新社、2003年。
- Edited by Christopher Tolkien, Unfinished Tales, George Allen & Unwin, 1980.
中つ国のアイヌア | |
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アイヌリンダレ(アイヌアの音楽) | |
男性格のヴァラール: | マンウェ | ウルモ | アウレ | オロメ | ナーモ(マンドス) | イルモ(ローリエン)| トゥルカス |
女性格のヴァラール: | ヴァルダ | ヤヴァンナ | ニエンナ | エステ | ヴァイレ | ヴァーナ | ネッサ |
暗黒の敵: | モルゴス(メルコール) |
マイアール: | エオンウェ | イルマレ | オッセ | ウイネン | サルマール | サウロン | メリアン | アリエン | ティリオン | ゴスモグ クルモ(サルマン) | オローリン(ガンダルフ) | アイウェンディル(ラダガスト) | アラタールとパルランド | ドゥリンの禍 |
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