ハープーン (ミサイル)
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ハープーン(Harpoon)は、アメリカ合衆国のマグダネル・ダグラスが開発した対艦ミサイル。
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[編集] 概要
ジェットエンジンを動力とする対艦攻撃用ミサイル。配備開始は1977年で、海上自衛隊の護衛艦も含め、多くの旧西側諸国艦船に搭載されているベストセラー。なお、"Harpoon"は、捕鯨のモリのこと。
1960年代半ばから、アメリカ海軍は航空機から浮上潜水艦を遠距離攻撃する兵器を構想していた。1967年にエイラート事件が起きると、水上艦艇全般を目標とするミサイルとして計画は具体化した。1971年よりマグダネル・ダグラス社を主契約者として開発が開始された。初めは航空機発射型を開発することとなっていたが、開発期間中に水上艦艇発射型、潜水艦発射型も開発することとなった。1974年に誘導試射が行われ、1975年から量産が開始された。
[編集] タイプ
ハープーンには大きく分けて空中発射型、艦船発射型、潜水艦発射型があり制式名称はそれぞれAGM-84、RGM-84、UGM-84となっている。空中発射型は航空機から切り離されたあとジェットエンジンに点火され飛行する。艦船発射型はハープーン専用の発射機(キャニスターと呼ばれる)やスタンダードミサイル発射機などから発射され、翼は発射後に展開される。潜水艦発射型は専用のカプセルに入れられ魚雷発射管から発射される。海面にカプセルが到達すると、そこからミサイルが発射される。潜水艦発射型も艦船発射型と同様に発射後に翼が展開される。艦船発射型と潜水艦発射型は固体燃料ロケットエンジンのブースターを装備しており、約7秒間ブースターによって加速された後にブースターを切り離しジェットエンジンによる飛行に切り替える。
[編集] 派生型
1990年にはAGM-84などをもとに対地攻撃が可能なSLAM (Standoff Land Attack Missile)が開発された。
[編集] 誘導方式
発射時にはあらかじめ敵艦の位置などの情報をインプットしておき、発射後は慣性誘導によって敵艦の方向へ誘導を行う。最終段階では自らレーダーを作動させて誘導するアクティブレーダーホーミングとなる。なお発射時にはロックオンせず、発射後指定の距離まで達した段階でレーダーを作動させ、一番近くにいる目標へロックオンさせることも可能である。
敵艦までの飛行経路としては高空を巡航する方法と低空を巡航する方法(シースキミング)が選択可能であり、通常はシースキミングを使用する。
- 高空巡航:低空を巡航するのに比べて空気密度が小さく、抗力も小さいため射程距離は長くなる。しかし、かなり遠距離で敵艦のレーダーに探知されてしまい、対空兵器によって迎撃される可能性が高くなる。
- シースキミング:ミサイルは敵艦から見ると水平線下を飛行してくるため、敵艦に近づくまでレーダーで捕捉されず、対応時間をかなり減らすことが可能である。レーダーの設置位置によってある程度違いがあるが、大体水平線下から出てくるのは敵艦から30 km前後の位置だといわれる
シースキミングを使用した場合、敵艦着弾前には一度上昇してから降下しつつ敵艦上部に命中させる方法(ホップアップ)とそのまま敵艦側面に命中させる方法の二つが選択可能である。ホップアップは命中率が高まるが、そのまま命中させるのに比べ敵艦に迎撃のチャンスを与えることとなる。逆にそのまま命中させる場合は若干命中率が下がることとなる。旧型のハープーンではホップアップしか選択できなかった。
[編集] スペック(AGM-84D)
- 全長:3.79 m
- 直径:34.29 cm
- 重量:515.25 kg
- 翼幅:91.44 cm
- エンジン:テレダイン製 ターボジェットエンジン
- ブースタ:固体ロケットモータ (RGM-84, UGM-84)
- 推力:299 kgf
- 速度:遷音速、約970 km/h
- 弾頭:222 kg
- 射程:約120 km