護衛艦
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護衛艦(ごえいかん)とは日本の海上自衛隊が装備する自衛艦の分類のひとつ。兵器を搭載し、日本の防衛を行うことを主に、目的とした艦種である。
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[編集] 概要
「護衛艦」は自衛隊用語の一つ。1952年(昭和27)に発足した海上保安庁海上警備隊時代には警備船と呼び、1954年(昭和29)の自衛隊創隊以降は警備艦と呼び、1961年(昭和36)10月に護衛艦と改称する。なお、予算編成等においては現在でも「警備艦」の名称を使用している。艦の名称選出基準は天象・気象・山岳・河川・地方の名称となっている。
護衛艦という艦種は、日本独自のもの。空母や補給艦といった他の艦艇を護衛する任務に就いている艦を「護衛艦」と称する事もあるが、それは艦種としての呼称ではない。また、過去旧海軍においては、諸外国において駆逐艦(くちくかん=Destroyer)の一として「フリゲート」「コルベット」と分類されているものを一括し、護衛船団用の海防艦という分類が存在していたこともある。
現在、駆逐艦などの名称を用いず護衛艦と呼ぶのは、戦車を「特車」と呼んだり、自衛隊そのものの名称同様に、ある種の「配慮」においてのことだが、他国においては「デストロイヤー:駆逐艦」として称されていることもまた同様である(自衛隊用語)。装備は「外への攻撃」ではなく「外からの防御」に重点をおき、アメリカ合衆国の海軍が持つようなトマホークなど対地攻撃に使用できる巡航ミサイルを装備していないなどの特徴を持つ。
アメリカの艦隊は航空母艦を中心とする空母機動部隊を主軸として、艦隊を構成するが、空母を持たない海上自衛隊では、各護衛隊群を「八艦八機体制(俗にいう八八艦隊)」として運用している。護衛隊群は護衛艦8隻(DDH×1 DDG×2 DD×5)と対潜ヘリコプター8機(DDH×3 DD×1 DDGには搭載しない)で構成された艦隊で、その各護衛隊群にイージスシステムを搭載した護衛艦を1隻ずつ配備している。
護衛艦の設計は太平洋戦争(大東亜戦争)での経験を踏まえ、極めて生存性を重視した設計となっている。ダメージコントロールを重視し、火災などの際に容易に閉鎖可能な設計になっており、欧米艦などと比べ通路や居住区域が手狭であるといった傾向が見られる。また、被弾等があっても浸水し難い構造にした上で、被弾時の火災による延焼の拡大を防ぐため、止むを得ない部分以外の可燃物使用を徹底排除している点も特徴である。その為、艦内の金属品のほとんどが擦れ合っても火花が出ない真鍮を使用している。この事からイギリスの王室海軍などに見られる可燃性の艦内装飾品などは排除されているが、ハープーンなどの破壊力の高い対艦ミサイルの直撃を受ければ2から4発で行動不能となる可能性が高い。 実際、実弾実射映像で、たちかぜ型程度の艦体(基準4000t程度)にハープーンないしMM38級の対艦ミサイルが1発着弾したばあい、破孔ではなく喫水より上のブロック自体が30m程度消滅しており、かつ推進剤の残余で延焼する(英艦シェフィールドの事例)事も想定すると、より大型の艦船の事例、又225キロ炸薬級のハープーンと450キロ炸薬級のトマホーク、ペンギン等の小型ミサイルでの差は判らないがおそらく1発で海没処分になる事も想像される。
救助用器材も装備しており、艦内には簡単な手術設備もある。艦内には、衛生員、艦上救難員、潜水士、降下救助員が乗艦しており、レスキューオペレーションに対応が可能である。
もっとも、居住性に関してのみいえば、排水量に対する装備品比重の問題もある。そのためむらさめ型等の新鋭艦では、艦型を従来艦より大型化する事により居住空間を捻出し、その問題を解決した。
[編集] 護衛艦での生活
艦内の生活は、航海中は訓練、停泊中は整備作業が標準であるが、停泊中の訓練や航海中の整備作業も頻繁に行われる。
[編集] 一般生活
艦内の生活は、民間の船舶乗組員の生活と大きな差はない。以下、詳細を記す。
- 起床
- 午前6時(10月から5月の停泊時は午前6時半)
- 消灯
- 午後10時
- 食事
- 1日3回(かつては夜食もあり1日4回であった。現在は、行事訓練等の所要に応じ不定期に夜食が供される。)長期にわたる遠洋航海途上等において、乗員の曜日感覚を維持する為として、毎週金曜日の定番メニューはカレーである。海上自衛隊は、戦後も引き続き旧日本海軍の構成員で機雷掃海等の任務を遂行していた経緯から、陸海空の自衛隊で唯一、旧日本軍直系の組織であり、独特の伝統が受け継がれている。(航空自衛隊は、戦後初めて設立された組織である。陸上自衛隊は、戦後旧日本陸軍構成員の公職追放、解体された後に再設立された組織である。)
- 調理
- 熱源は電気又は蒸気であり、ガスは使用しない。かつては米を研ぐ際は海水を使用していたが、現在は全て洗米器による真水を使用している。
- ゴミ・汚水
- 海洋汚染防止法の適用を受ける。ゴミについては基本的に寄港地で処理し、残飯はディスポーザーにかける。汚水は、処理した後に放流する。
- 真水管制
- 造水能力が向上し、かつてほど厳しくなくなったが、今日でも貴重である。よって航海中の入浴は海水を使用することも多い。航海中の洗濯を禁止している艦も多い。
- 娯楽
- 乗員居住区及び食堂に、テレビが1台以上設置されているが、陸岸から離れるとテレビの地上波は届かない。衛星放送は、比較的よく映るが衛星からの輻射は日本列島に合わせてあり、やはり遠方になると映らない。よって、乗員は読書、ビデオ、トランプのゲーム等で自由な時間を過ごしている。コンセントの電圧は一般家庭用より高く、ラジカセなどは痛みやすい。
- 家庭等との通信
- カード式公衆電話が設置されているが、状況によって使用を制限されることもある。停泊中であっても、金属で覆われた艦内に携帯電話の電波が届く箇所は限られており、最近は秘密保全の関係で持ち込むことができない区画も多い。郵便は、基地業務隊等の陸上部隊を経由する。例え長期の航海であっても、艦の庶務による手続きが行われれば、寄港地に転送することも可能である。
[編集] 当直
護衛艦は、航海停泊を問わず24時間活動しており、防衛省・海上保安庁以外の船舶で見られるような入港中の夜間、船内の出入口等に施錠し、乗員が不在になるということはない。したがって、停泊時は課業終了後も上陸せずに勤務に就く者がおり、乗員の内、海士は4日に1回、海曹は5日に1回の割合で当直勤務につく。なお、艦長及び副長を除く幹部と先任海曹は、6日に1回が標準であるが現員による。停泊中の当直には、当直士官、副直士官、当直警衛海曹、機関科当直海曹、発電機当直等数種ある。また航海中の当直には、乗員を2~4つのグループに分け当直勤務をさせる。これを艦内哨戒配備といい、第3配備から第1配備へと、状況に応じて変化させる。ただし、防火防水部署などの部署が発動された際は、訓練であっても総員配置となる。
- 配備
ここで言うところの配備とは、艦艇の警戒レベルの事である。 以下の4種類が存在し、上記のものほど警戒レベルが高い。
- 戦闘配備-交替は無い。戦闘状態下の配備。
- 第1配備-交替は無い。戦闘などの事態が差し迫っている場合の配備。
- 第2配備-人員は2交替で勤務する。
- 第3配備-人員は3交替で勤務する。
ちなみに、第1配備以上になると居住区画のベッドは取り外され、乗員は自分の部署で寝ることになる。ベッドが外された居住区画には、必要物資が積載される。
尚、陸上基地では、
- A(アルファ)配備=第1配備に該当
- B(ブラボー)配備=第2配備に該当
- C(チャーリー)配備=第3配備に該当
という用語が用いられる。なお、あくまでも海上での戦闘が海上自衛隊の主任務であるため、陸上基地に戦闘配備に準ずる警戒レベルは存在しない。
[編集] 主な装備
- 砲熕兵器
- ミサイル兵器
- 水雷兵器
- 電子兵装
- 水測機器
- 搭載ヘリ
- 搭載艇、搭載車輌
- 内火艇(人員輸送、救助、各種作業用)
- 公用自転車(書類受け取り業務用)
- その他艤装品
- 洋上給油装置(受油装置)
- デッキクレーン
- フィンスタビライザー(減揺装置)
- 精水装置
- 大型冷蔵庫
- 調理器具(蒸気調理器、電気調理器)
- ディスポーザー(残飯粉砕器)
- 空調装置
- CBR戦用散水装置
- 汚物処理装置(糞尿をバクテリアを介して自然分解させる)
- 筋力トレーニング器具一式
- 各種消火装置
- 注排水装置
- 警備用64式7.62mm小銃
- 自動販売機
- アイスクリーム販売機
[編集] 護衛艦一覧
護衛艦の一覧は以下の通り。
[編集] 現役
以下は現在就役している護衛艦の種別・名称である。
[編集] 自衛艦隊
[編集] 護衛艦(DD)
- 英語表記:Defense Destroyer(略称:DD)
- あさぎり型
- 151 あさぎり(種別変更 → 練習艦 TV-3516)
- 152 やまぎり(種別変更 → 練習艦 TV-3515)
- 153 ゆうぎり
- 154 あまぎり
- 155 はまぎり
- 156 せとぎり
- 157 さわぎり
- 158 うみぎり
- むらさめ型
- 101 むらさめ
- 102 はるさめ
- 103 ゆうだち
- 104 きりさめ
- 105 いなづま
- 106 さみだれ
- 107 いかづち
- 108 あけぼの
- 109 ありあけ
- たかなみ型
- 110 たかなみ
- 111 おおなみ
- 112 まきなみ
- 113 さざなみ
- 114 すずなみ
[編集] ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)
- 英語表記:Helicopter Defense Destroyer(略称:DDH)
- (13500トン型護衛艦)→ ヘリ空母
[編集] ミサイル護衛艦(DDG)
- 英語表記:Guided Missile Defense Destroyer(略称:DDG)
- はたかぜ型
- 171 はたかぜ
- 172 しまかぜ
[編集] 地方隊
[編集] 護衛艦(DD)
- 英語表記:Defense Destroyer(略称:DD)
- はつゆき型
- 122 はつゆき
- 123 しらゆき
- 124 みねゆき
- 125 さわゆき
- 126 はまゆき
- 127 いそゆき
- 128 はるゆき
- 129 やまゆき
- 130 まつゆき
- 131 せとゆき
- 132 あさゆき
- 133 しまゆき(種別変更 → 練習艦 TV-3513)
[編集] 護衛艦(DE)
- 英語表記:Destroyer Escort(略称:DE)
- いしかり型
- 226 いしかり
- ゆうばり型
- 227 ゆうばり
- 228 ゆうべつ
- あぶくま型
- 229 あぶくま
- 230 じんつう
- 231 おおよど
- 232 せんだい
- 233 ちくま
- 234 とね
[編集] 退役艦
以下はすでに引退している護衛艦の種別・名称である。
[編集] 護衛艦(DD)
- 英語表記:Defense Destroyer(略称:DD)
- ありあけ型 → 米軍フレッチャー級駆逐艦貸与
- 183 ありあけ
- 184 ゆうぐれ
- あきづき型
- 161 あきづき
- 162 てるづき
[編集] 対潜護衛艦(DDK)
- 英語表記:Anti Submarine Defense Destroyer(略称:DDK、K=hunter-Killer)
- あやなみ型
- 103 あやなみ
- 104 いそなみ
- 105 うらなみ
- 106 しきなみ
- 110 たかなみ
- 111 おおなみ
- 112 まきなみ
- やまぐも型
- 113 やまぐも
- 114 まきぐも
- 115 あさぐも
- 119 あおくも
- 120 あきぐも
- 121 ゆうぐも
- みねぐも型
- 116 みねぐも
- 117 なつぐも
- 118 むらくも
[編集] 多目的護衛艦(DDA)
- 英語表記:All Purpose Defense Destroyer(略称:DDA)
- むらさめ型(初代)
- 107 むらさめ
- 108 ゆうだち
- 109 はるさめ
- たかつき型
- 164 たかつき
- 165 きくづき
- 166 もちづき
- 167 ながつき
[編集] ミサイル護衛艦(DDG)
- 英語表記:Guided Missile Defense Destroyer(略称:DDG)
[編集] 護衛艦(DE)
- 英語表記:Destroyer Escort(略称:DE)
- あさひ型 → 米海軍キャノン級護衛駆逐艦)貸与
- 262 あさひ
- 263 はつひ
- いすず型
- 211 いすず
- 212 もがみ
- 213 きたかみ
- 214 おおい
- ちくご型
- 215 ちくご
- 216 あやせ
- 217 みくま
- 218 とかち
- 219 いわせ
- 220 ちとせ
- 221 によど
- 222 てしお
- 223 よしの
- 224 くまの
- 225 のしろ
[編集] 護衛艦(PF)
旧称:警備船、警備艦
- 英語表記:Patrol Frigate(略称:PF)
- くす型 → 米軍タコマ級フリゲート貸与
- 281 くす
- 282 なら
- 283 かし
- 284 もみ
- 285 すぎ
- 286 まつ
- 287 にれ
- 288 かや
- 289 うめ
- 290 さくら
- 291 きり
- 292 つげ
- 293 かえで
- 294 ぶな
- 295 けやき
- 296 とち
- 297 しい
- 298 まき