ファン・カー
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ファン・カーとは、車体下部の空気を排気する装置(ファン)を備えることによりダウンフォースを発生させ、高速走行を実現させているレーシングカーである。別名、サカー・カー。
ベルヌーイの定理を利用した俗に「グラウンド・エフェクト」と呼ばれるウイングカー構造とは違い、単純に車体下部の気圧を減少させパスカルの原理によりダウンフォースを発生させている。この機構はウイングカー構造と比較した場合、速度に比例しないダウンフォースを発生させることが出来るため、半径の小さいカーブなど低速走行に非常に優れている。
[編集] 著名なファン・カー
[編集] Can-AM
- シャパラル シャパラル2J
- シャパラル2Jが、1970年に排気量無制限2座席のレーシングカテゴリであるCan-AM(米国)シリーズに出場した。この車はエンジンを2つ搭載し、タイヤ駆動とファン駆動に独立した動力を利用できたため、非常に効率のよいものであった。これを受けてCan-AMでは1971年からこの機構が使用禁止になっているため、1年限りの活躍であった。
[編集] F1
- ブラバムBT46B
- グラウンド・エフェクトを利用したウイングカー全盛の時代において、ブラバムは契約しているアルファ・ロメオの大きなエンジンのため、効果的なウイングカーの設計を出来ない状態であった。その状態を打開するため、、ゴードン・マレーはエンジンパワーの一部を使ってファン(建前上はラジエーター冷却が目的だとチーム側からアナウンスされていた)を駆動させ、車体下部の空気を強制排気することによって、ウイングカー構造と同等のダウンフォースを発生させることを計画し、BT46Bをデザインする。この車体はウイングカー構造に左右されない空力的形状と、ウイングカーと同等のダウンフォースを併せ持つ車体として、初出走の1978年のスウェーデンGPでニキ・ラウダが圧勝する。
- しかし、その圧倒的な旋回能力に対する他チームから「空力に影響を与える個所は固定されていなければならない」というルールを元にした抗議が高まり、後続車に石などを撒き散らすことが危険であるという理由から、リザルト取り消しこそ免れたものの以後同様の機構をもった車体の禁止が明文化された。明らかにルールに抵触していると見られたにもかかわらず出走できた上にリザルト取り消しにならなかったのは、ゴードン・マレーが当時スポーツのルールや結果について起きた紛争を仲裁する機関である国際スポーツ委員会に対してあらかじめ文書にて合法性を問い、合法であるとの宣告を受けていたためである。