プルサーマル
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プルサーマル(plutonium thermal use: 和製英語)とは、熱中性子(thermal neutron)によりプルトニウムを燃焼させることを指す。もんじゅのような高速増殖炉では高速中性子によってプルトニウムが燃焼させられるが、軽水炉では熱中性子によって反応することから、このような名称が作られた(和製英語)。軽水炉では通常二酸化ウランを燃料として用い、この燃焼過程でプルトニウムが作られ、核分裂もするが、プルサーマルではプルトニウムとウランの混合酸化物(Mixed Oxide)を使用する。この燃料をMOX燃料と呼ぶ。
冷戦の終結とソ連の崩壊によって旧ソ連の核兵器の解体が進んでいるため、世界的なプルトニウムの剰余が核不拡散の観点から問題になっている。一方で、プルトニウム利用の主流である高速増殖炉については各国で計画の中止や遅延が相次いでおり、プルトニウム処理の有効な方法としてプルサーマルをとらえる向きもある。
欧州でのプルサーマルの実績は長く、1963年に開始したベルギーを始めとして、欧州諸国では1960年代からの経験がある。現在でも、フランス等において実施されており、また、核燃料サイクルを政策として放棄したアメリカ合衆国においても、上述の核兵器解体に伴うプルトニウム処理の観点から、プルサーマルについては実施しようとする動きがある。
アメリカ合衆国では2005年6月からカトーバ1号機でMOX燃料の試験運転が開始され、同年10月にはエネルギー省所有のサバンナリバーサイトで解体核用のMOX燃料加工工場の建設が開始された。また、同年11月にはこれとは別に使用済燃料再処理・MOX加工・廃液ガラス固化・中間貯蔵を目的とした複合リサイクル施設建設の予算が議会を通過、承認された。こちらは2007年までに建設場所を選定し、2010年までに着工する予定となっている。
日本においてもプルサーマルの開始に向けて国による安全審査や地元の事前了解が進んでいたが、住民投票による反対(新潟県)などにより、計画は遅れていた。他の反対の事例としては、佐藤栄佐久福島県知事(当時)が、発電所から距離のある地域を含めた県全体の観点や自身の戦略等から、地元を別に強く反対してきた、といったことがある。
一方で、2006年3月に九州電力の3号機で実施したいとの電力会社からの申し入れ後にその動向を注目されていた佐賀県で古川康知事は事前了解を出した。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- プルサーマル (文部科学省「原子力百科事典ATOMICA」より)
- 原子力政策の現状について(資源エネルギー庁)
- プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク(反対派)