マルチ商法
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マルチ商法(マルチしょうほう、multi-level marketing)は、いろいろな定義があり、言い換えれば定義はあってないようなものとなっている。その中で使われている代表的な用法をいくつか示す。
- 連鎖販売取引のこと。(通常、この定義で用いる。警察、消費者センターなども、この用法を採用しているようである。)
- 連鎖販売取引と、それに類似したものの総称。
- 連鎖販売取引のうち商品を再販売するもの。
- 連鎖販売取引のうち悪質なもの。
- 不十分かつ間違った理解から犯罪である無限連鎖講(いわゆるねずみ講)と同義に考える例も稀に見られる。
マルチ商法は、無限連鎖講の防止に関する法律によって禁止されるねずみ講と組織の拡大方法で類似点が多いが、ねずみ講が金品配当組織であるのに対して、マルチ商法は商品の販売組織(役務のあっせんも含む)である点で区別される。 なお商品の販売が主と主張する組織であっても、その商材の実際の価値が販売価格に比べ著しく低い 場合には商品販売は主と見なされず金品配当が主と見なされねずみ講とされるので注意が必要である(判例多数あり)。
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[編集] 概説
昭和40年代にアメリカのホリディ・マジック社が、「Multi-Level Marketing (マルチ・レベル・マーケティング)」と呼ばれる商形態とともに日本に上陸したころから、国内における連鎖販売取引の歴史が始まったと言われている。 マルチ商法は、Multi-Level Marketingの日本語訳として定着し使用されていたが、当時、この商形態を規制する法律がなく、取引や勧誘に際しての問題や事件が発生し社会問題となったことから、1976年に制定された「訪問販売等に関する法律」において「連鎖販売取引」として定義され、要件に該当するものは、勧誘などの行為が法律による規制の対象となった。 「訪問販売等に関する法律」は、2000年に「特定商取引法」に改称され、以降数度の法改正を重ねて現在に至っている。
マルチ商法は、以下のような商形態をとっている。
- 加盟者が新規加盟者を誘い、その加盟者がさらに別の消費者を誘引するという連鎖により自己増殖する仕組みである(違法なねずみ講と間違われる所以である)。
- 組織に加盟している者は、契約上は独立した商人の立場である。
- 口コミ型営業と説明会により、商業活動に関して知識や経験が乏しい一般消費者が勧誘のターゲットになり加盟することが多い仕組みである。
- 新規加盟者を増やすことや、加盟者及び配下の加盟者(ダウン)の商品購入金額により、自分がランクアップしたり(ランク制度)、報酬(コミッション、ボーナスとも言われる特定利益のこと)の対象範囲が大きくなり、利益が増える仕組みがある(違法なねずみ講と間違われる所以である)。
- 加盟者の報酬(コミッション、ボーナス)の原資は、組織内で流通する商品の中間マージンや新規加盟者の加盟料等である
マルチ商法自体は違法ではなく、特定商取引法上の定義においても、特段悪い意味は含められていない。
しかしながら、マルチ商法は、数段階下からの不労所得的な報酬(コミッション、ボーナス)を勧誘時の誘引材料にしている場合が多く、ダウンと呼ばれる配下の加盟者を継続的に勧誘・加入させ、かつ一定額以上の商品購入を継続して行わなければならないことが現実(表面に現れないノルマとも言われてる)で、加盟者が期待する様な安楽な生活ができるほどの報酬を得られる者は、加盟者全体のごくわずかにすぎない。
このため、加盟者によって、虚偽説明・威迫(脅迫)行為などの法律違反を含む勧誘や、購入実績を維持するための過剰な買い込み、その購入資金捻出のための借金など、問題のある活動がなされやすく、各地の国民生活センターや消費者センターへ契約に関しての問い合わせ・相談が、多く寄せられたこともあり、国民生活センターや消費者センターでは、マルチ商法を悪質商法であるとして、注意喚起を行っている。
上記のように法律違反など様々な問題のある活動が相次いだため、社会一般でマルチ商法と言うとき、その印象は極めて悪い。 これらの状況から、連鎖販売取引の企業や参加者は、マルチ商法と呼ばれる事を非常に嫌っており、勧誘の場においても、「マルチ商法ではない、ネットワークビジネスだ(別の呼称を用いる事により、例えば「便所」と言うと汚らしいイメージがあるが、「トイレ」と言うと「便所」よりソフトなイメージに変わる)」と主張する事も少なくない。 ただし、これは呼称の違いに過ぎず、実際には特定商取引法にいう「連鎖販売取引」に該当していることが大半であることに注意を要する。
[編集] 連鎖販売取引とマルチ商法
連鎖販売取引は、「マルチ商法」をはじめとして、「ネットワークマーケティング、ネットワークビジネス、MLM」などの別称で呼ばれる事が多いが、連鎖販売取引がマルチ商法が同義であるかという件については、各省庁や消費者センターなどの公的機関においても見解が分かれてる。
- 経済産業省や警視庁においては、連鎖販売取引とマルチ商法を同義で使用している。
- 独立行政法人国民生活センターでは、連鎖販売取引とマルチ商法を同義として使用していない。国民生活センターは、マルチ商法をねずみ講的販売方式全般について広く総称することを基本としている。
- 地方自治体の消費生活センターでは、マルチ商法を連鎖販売取引と同義としている場合や、ねずみ講的販売方式全般について広く総称している場合など、消費生活センター毎に違いがあり、必ずしも統一して使用されているものではない。
このように、公的機関内であっても見解が一致しておらず、連鎖販売取引がマルチ商法、ネットワークビジネスをはじめとして、主宰する企業によって様々な別称で呼ばれる場合も多く、消費者にとって非常にわかり難い状況になっているのが現状である
[編集] マルチ商法とマルチまがい商法
2001年までは特定負担金の額(2万円以上)など連鎖販売取引の定義条件に当てはまらないものが「マルチまがい商法」と呼ばれていた。
当時の大手を含めた多くのマルチ商法企業は、規制逃れを目的に特定負担金を連鎖販売取引の定義条件以下(2万円未満)に設定していた為、連鎖販売を主宰している企業のほとんどがマルチまがい商法という状況であった。しかし2001年6月1日の法改正にて、連鎖販売取引の定義から特定負担金の条件がなくなった結果、規制逃れをしていた企業もすべて連鎖販売取引(マルチ商法)に該当する事になった。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
[編集] 相談窓口及び公的機関による解説
- 連鎖販売取引とは - 経済産業省ー
- 国民生活センター
- 消費生活センター
- 友人を紹介すれば儲かると誘うマルチ商法平成17年3月 - 関東経済産業局
- マルチ(まがい)商法 - 東京都
- マルチ商法相談事例 - 大阪市消費者センター