ミット・ロムニー
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ウィラード・ミット・ロムニー(Willard Mitt Romney, 1947年3月12日 - )はアメリカの政治家、前マサチューセッツ州知事(第70代,2003年-2007年)。所属政党は共和党。
[編集] 経歴
ミット・ロムニーは、後にミシガン州知事となるジョージ・ロムニー の次男としてデトロイトで生まれた。ロムニー家は代々モルモン教徒である。ユタ州のブリガムヤング大学を最優等(summa cum laude)で1971年に卒業後、ハーヴァード大学のビジネス・スクール及びロー・スクールでMBAならびに法務博士(J.D.)号を取得した。ビジネス・スクールでは成績優秀者に与えられるベーカー・スカラーを得て、ロー・スクールの場合は優等(cum laude)で卒業した。
その後、ボストンのベンチャー・キャピタル、べイン・キャピタル社を共同で設立し、共同経営者として成功を収める。
1994年には共和党から上院議員選に立候補するも大御所のエドワード・ケネディに敗れる。しかしこの選挙は、ケネディの経験した選挙のうち最も接戦となった選挙であり、ロムニーの名を一躍全米に轟かせる。1999年に当時スキャンダルが発覚し、財政危機に陥っていたソルトレークシティーオリンピック組織委員会の会長に就任。組織委員会を見事に立て直し、オリンピックを成功に導いた。
2002年、ロムニーはマサチューセッツ州知事に選出された。
[編集] 知事職
ロムニーが知事選に立候補した当時、マサチューセッツ州は財政危機に陥っていた。知事就任後、ロムニーは州の予算を削減し、財政均衡を実現。増税なしで州の財政赤字を削減することに成功した。さらに彼は法人税を低率に抑え、カリフォルニア州などからのハイテク関連企業誘致を推進した。こうしたロムニーの財政・経済政策、手腕への評価は一般に高い。しかし一方で社会福祉・教育関連の予算を大幅に削減したことは一部州民の反発を招いた。ただ、教育に関しては、2005年9月、マサチューセッツ州内の全児童に100ドルパソコンを無料配布する法案を州議会に提出した。これは近隣のメイン州での成功を手本にしたもので、5400万ドルの予算を掛けている。
一方で、2003年11月にマサチューセッツ州最高裁判所が同姓婚の禁止を違憲とし、合法化を促した際には異議を申し立て、これに反発する姿勢を取った。同性婚を許可する修正案が州議会で審議された当時は、拒否権の行使をにおわせて、議会の多数を占める民主党との対決姿勢を鮮明にした。しかし修正案が大差で可決されたことから、拒否権発動は不可能となり、結果的に同性婚を合法化する法案に署名することを余儀なくされた。しかしロムニーは同性婚にはいまだ強固に反対しており、州憲法の修正条項で結婚を男女間のものと規定し、代わりに同性愛者に結婚同様の権利を容認するシヴィル・ユニオン法の成立を提唱している。また、2005年には死刑制度を復活させる法案の提出を計画していることを明らかにした。
[編集] 大統領選へ向けた活動
ロムニーは2008年アメリカ合衆国大統領選挙の潜在的な候補者の一人と看做されており、本人も大統領選に意欲があると報道されている。2005年には大統領予備選で重要となるサウスカロライナ州を遊説し(共和党ではサウスカロライナ州予備選を制した候補が1980年以来大統領候補に指名されている)、大統領選へ向けた運動を開始したと報道された。2007年2月13日、故郷のミシガン州で大統領選への出馬を正式表明。
ロムニーの全国的な知名度は他の有力候補に比して低く、現段階で大統領候補に指名される公算は低い。妊娠中絶問題でプロ・チョイス(女性の権利を容認する)の立場をとるなど党内の穏健派と一般に看做されており、モルモン教徒であることもあって共和党内で台頭しつつある保守派の支持を得にくいと考えられる。そのためロムニーは全米各地の保守派集会でさかんに遊説し、支持層を拡大すべく奮闘中である。しかし、州内で懸案事項が山積しているにもかかわらず州外への出張を繰り返していること、そして同性婚合法化等、リベラルなマサチューセッツの社会環境を度々揶揄する発言をしていることから、地元メディアや州議会の批判が高まっている。
しかし、同姓婚問題で強硬な姿勢をとったことは反同姓婚というイメージを演出し、その点でルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長ら他の穏健派有力候補より保守派の支持、理解を得られやすいとも考えられる。ジョージ・アレン、リック・サントラムといった、保守派の代表格が2006年中間選挙でことごとく落選、不在になっているためだ。最近では、ジョージ・ウォーカー・ブッシュ大統領が増派を決定したイラクへの2万人規模の米軍増派についても賛意を示している。また、サウスカロライナ州選出のジム・デミント上院議員が既にロムニー支持を表明している。
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