ムト
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ムト (MWT,MuT) はエジプト神話の女神である。ヒエログリフでは、「禿鷹」で表され、このヒエログリフの読みは、また「母」をも意味する。元々、テーベ(カルナック)の地方神であったと考えられるが、アメン神と関連付けられ、アメンの妻とされた。また、コンス神の母ともされ、アメン、コントとともにテーベ三柱神となる。
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[編集] エジプトと天空の女主人
ムトの父は、アメン=ラーであるが、アメン=ラー神は、アメン神が太陽神ラーと習合されて、太陽神アメンとなったものである。アメンはエジプト新王国時代には、エジプトの主神となったので、「エジプトの主」であるアメンの妃として、ムトは、「エジプトの女主人」の称号を持つこととなった。また、アメンが太陽神となり、「天空の主」となったことより、ムトもまた「天空の女主人」となった。
[編集] 娘にして、妻にして、母
ムトはアメンとのあいだで息子を生むが、それはアメン=ラーであり、アメン=ラーはアメンでもあるので、ムトは、アメン=ラーの娘であり、妻であり、母でもあることになる。エジプトでは、父親と娘の結婚は、とくにファラオにおいては珍しいことではなかったので、ムトとアメン=ラーのあいだのこの自己循環しているような関係も、特段に奇異なこととは考えられなかった。
[編集] 母の母・万物の母
ムトは「天空の女主人」であるが、同時に「ラーの目」でもある。しかし「ラーの目」はラーの娘なので、ムトは「ラーの娘」となり、またラーの妻にもなった。ムトは最終的に、「太陽の母」となり、「万物の母・母のなかの母」となり、イシスと同一視された。