メール便
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メール便(-びん)は、宅配便のシステムを利用して、書類や商品カタログなどの、郵便法上の「信書」ではない軽量な荷物(郵政公社の「冊子小包」が競合商品に当たる)を運ぶため、1997年に、ヤマト運輸が 「クロネコメール便」の名称で開始。その後、他社も追随した。佐川急便「飛脚メール便」(のちに「佐川ゆうメール」も開始)、日本通運「日通メール便」、福山通運「フクツーメール便」などがある。また新聞販売店等がその配達網を利用して業務を受託していることもある。
急成長を遂げてきた分野ではあるが、2004年に日本郵政公社がメール便と競合する冊子小包郵便物の大口割引の割引率を上げたため、今後の動向が注目される。そんな中、佐川急便がこの制度を利用した「佐川ゆうメール」のサービスを同年に開始している。佐川ゆうメールでは、佐川急便は集荷までのみを行い、集荷したメール便を佐川急便が差出人としてまとめて郵便局に差し出し、郵便のネットワークで配達するものである。但し、各社ともメール便について土日配送しないケースが散見されたり、万一紛失事故が起きた場合も追跡に限度があるなど問題点も多いため、個人での利用では特に注意を要する。(通常は約款により、代品は無賃輸送のみの保障だけで、中身の価格については保障しない)
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[編集] クロネコメール便の例
長辺40センチ以内、厚さ2センチ以内、三辺計70センチ以内、重さ1キログラム以下で、郵便受けに入るサイズと規定され(その範囲内であれば封筒の種別・サイズは問わない)、料金は郵便と異なり外形寸法だけで規定され、
- A4(角2)厚さ1cmまで……80円
- A4(角2)厚さ2cmまで……160円
- B4厚さ1cmまで……160円
- B4厚さ2cmまで……240円
とされている(2006年10月1日改定。それ以前は重量により運賃が決まった)。ただし、大口顧客との契約単価はこれよりも大幅に安価なことが多い。時間指定は不可能。配達先のポスト投函をもって完了となる。また、宅配便では行っている判取(受領印の押印)も行わない。荷物一通ごとにバーコードシールが貼られており、荷物追跡が可能。
用途としては主に契約企業から個人に向けた、カタログやイベント告知などのダイレクトメールの大口発送に利用されるが、ヤマト運輸の場合他社と異なり個人利用者も積極的にターゲットとしており、掛売契約をしていない者であっても現金決済で利用できる。個人客でも集荷依頼に応じるほか、営業所や一部のコンビニ(全国のセブンイレブンやファミリーマート、スリーエフ等)で差し出すことが可能である。
[編集] メール便利用の際の注意点
ダイレクトメールや同窓会の配布物等にも広く利用されているが、転居先への転送サービスはないので(郵便局と異なり、宅配便会社に転居届を出す人は個人ではほとんどいない)、送付先が転居していた場合には、転居後に入居した他人に配達されてしまう場合がある(郵便受けに名前が書いていない場合もあるため)。クロネコメール便の場合、一応転居時は調査して無償で転送することになっているが、差出人を通じて転居先の調査をするため、発送店と配達店の連携が悪かったり差出人に連絡がつかない場合、かなりの遅延が発生する。
また、メール便では、一次業者が集荷し、委託を受けた二次業者・三次業者が配送するという形態を取る業者が多いため、配達日時が指定できず、近郊でも2日、連携がうまくいかないと1週間ほどかかることもある。企業によってはメール便を利用していたが出荷先からの要望で郵便に戻すケースも多い。ヤマト運輸は、クロネコメール便について自社ウェブページなどで翌日配達をうたっていたが、日本広告審査機構(JARO)が不当表示に当たるとして改善要望を出している(2006年10月より「3~4日で配達」(依頼日を1日目としての日数)に変更された)。
したがって、他人に見られては支障がある荷物や、確実に期日までに届く必要がある荷物については、宅配便や通常郵便物とは異なるサービスであることを認識した上で慎重に検討すべきである。