佐川急便
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
種類 | 株式会社 (非上場) |
本社所在地 | 京都府京都市南区上鳥羽角田町68番地 |
設立 | 1965年11月24日(登記簿上。会社創業は1957年3月22日) |
業種 | 物流 |
事業内容 | トラック輸送を中心とした配送 |
売上高 | 単体:7,280億円(2005年3月期) 連結:7,819億円(2005年3月期) |
関係する人物 | 佐川清 |
外部リンク | www.sagawa-exp.co.jp/ |
佐川急便株式会社(さがわきゅうびん)は、本社を京都府京都市南区に置く日本有数の大手運送業者で、SGホールディングス(持株会社)の子会社である。佐川急便は、大口向けの特別積合せ事業から成長した会社であり、宅配便事業を始めたのは、1998年と比較的後発である。
現在の代表取締役社長は栗和田榮一(創業者である佐川清の実の子息)である(会長兼任)。
目次 |
[編集] 来歴
佐川急便の創業は、1957年3月22日に佐川清が京都・大阪間を中心とする運送事業を興したことにある。
法人としての佐川急便は1965年に設立され(公式サイトでは1966年4月と表記)、まず北陸地方、近畿地方、中国地方、九州地方、四国地方に営業を拡大し、1988年までに関東地方、中部地方、東北地方、北海道にも営業を拡大した。
佐川急便は、もともと特別積合せ事業が主体であり、宅配便業者としては認識されていなかった。1990年代の運輸省の宅配便事業者の中に名前が出てこないのはそのためである。
1998年からは本格的に宅配便事業にも参入(ただし、通信販売などの大口企業より個人への配達は以前より行っていた)し、運送業界最大手とされるヤマト運輸を追い上げている。ヤマト運輸との顧客の奪い合いは熾烈で、同社への対抗上、売上向上月間のようなこともある(ヤマト運輸側は現在、比較的他社から奪うようなことは少ない)。商品名は社名と同じ「佐川急便」であったが2007年3月21日から「飛脚便」に変更した。
ただ、ヤマト運輸や日本通運などの他社と異なり、もともと特別積合せ事業者としてスタートした関係で、コンビニエンスストアや一般商店といった、一般個人からの発送窓口があまり多くないため、もっぱら発送元は、営業活動で開拓した企業(通信販売商品の発送が多い)に限定される(後述するローソンなどとの救援輸送協定の関係や、ローソンが現在「宅急便」から、「ゆうパック」に変更していること、「佐川ゆうメール」の取り扱いで佐川と日本郵政公社との関係も深いことなどから、今後ローソンで「飛脚便」を扱う可能性はある)。
強力な営業活動や発送条件に融通が利くことから、発送個数の多い通信販売企業の利用が活発である。一方で、柔軟な時間指定が可能なため(現在の所、宅配部門で深夜時間帯の配達が可能なのは佐川急便のみ)、個人の利用者も年々増加の傾向にある。しかし「飛脚便」に変更される2007年3月21日より指定時間はやや狭いものとなったが深夜時間帯の指定配達は「TOP便」扱いで継続されている。
また、「佐川急便」(宅配便)の規格を超える荷物は「佐川急便フリーサイズパッケージ」として「佐川急便」と同様の地帯区分で運賃を設定しており、運賃体系をわかりやすくしている。
業界のトラック運転手の間では、“佐川ダッシュ”(配送員は勤務中、危険箇所などを除き常に走る事を義務付け)に代表される厳格なマニュアルに基づいた労働条件と高額の給与で知られ、佐川急便での勤務経験は、いわば勲章ないしは実力証明ともなっているようである。また、大口業者の荷物がメインのため、個々の貨物はヤマト運輸などに比べて容積が大きく、重いものが多い。
佐川急便グループでは、店舗によってはすべての従業員が通勤に二輪車を使うことを禁止している(ただし自転車は可能)。
また佐川急便もメール便事業に乗り出し、飛脚メール便を始めた。大手顧客としてはAmazon.co.jpがある。一方、日本郵政公社が冊子小包の大口割引率を引き上げた際には、これを逆利用する「佐川ゆうメール」を開始している。これは、佐川急便は集荷のみを行い、集荷したメール便は佐川急便が集配の上、同社を差出人として郵便局に出し、郵便のネットワークで配達するものである。
入社後は研修所にて概ね1週間の研修を受ける。携帯電話・金銭(小銭以外)は研修終了まで預けるようになる。この概ね1週間で佐川急便の社是や精神論、運転技術が徹底的に叩き込まれる。研修期間中にすべての検定項目に合格できないと、研修終了後も補習を受ける事となる。
1990年代までよく言われた、「長時間労働や『佐川ダッシュ』などの過酷な労働条件と引き換えに、業界でも高額の給与が支払われる」とされる労働条件(当時の佐川急便の求人広告の売りであった)については、監督官庁からの警告がしばしば発せられたが、2度目の汚職事件である奈良佐川急便事件の発覚後の2000年頃から、全社的なコンプライアンス(法的遵守)推進、給与制度の見直し等の抜本改革を行い、現在では過酷な労働条件と引き換えの高額の給与というのは過去のものとなっている。
2006年3月21日付で、佐川急便が株式移転で純粋持株会社「SGホールディングス株式会社」を設立し、佐川急便など各事業会社を傘下に置いた(SGとは「Sagawa Global」(Sagawa GalaxyやSa-Gawaの意味もある)の略称である)。大手運送会社が持株会社制に移行するのはヤマト運輸系列の持株会社であるヤマトホールディングスに次いで2例目である。
創業50周年を迎える2007年には、江戸時代の飛脚を描いたシンボルマークから、現代のセールスドライバーをイメージしてデザインした「新飛脚マーク」(短距離走のピクトグラムに似ている)の使用を開始した。宅配便のブランドとしての「佐川急便」を「飛脚宅配便」に変更、その他の「佐川」を冠した商品名は概ね「飛脚」に置き換えられた。ただし飛脚のシンボルマークは会社の社章でもあるので用途を限定して使用されている。同時に路線ドライバーによる営業店間の荷物の輸送(路線)などを行っていた「佐川ギャラクシーハイウェイズ」を吸収合併し、路線事業にも進出した。
[編集] 主な事件
[編集] 汚職事件
1992年には、裏金を使った政界工作のいわゆる「東京佐川急便事件」を引き起こし、また2001年には奈良県警を舞台とした汚職事件「奈良佐川急便事件」も発生した。その救済のため、近年では地域法人の完全統合(1992年~1994年にかけて実施。また2002年には別件で佐川急便グループ23社を合併)、コンプライアンスの推進を行った。
[編集] 虚偽登記事件
2002年12月25日、当時京都府会議員だった森田喜兵衛が佐川急便の全役員を解任し、自らを代表取締役とするなど計6名が役員に就任するという虚偽の登記(登録印鑑変更も)が行われた。森田は現法人成立からしばらくの間実際に佐川急便の役員になっており、その後独立したあとも取引があったが、2000年に取引をやめている。後日森田は逮捕に至り、解任登記された役員は翌2003年1月6日付で回復登記されている。
[編集] 出身者
- 渡邉美樹 ワタミ社長
- 高橋がなり ソフト・オン・デマンド前社長
- 藤王康晴 元プロ野球選手(中日ドラゴンズ・日本ハムファイターズに在籍)
[編集] 主な大口顧客
主な大手顧客は以下の通りである。
- 千趣会
- アムウェイ
- ジャパネットたかた
- ソフトバンクBB
- amazon.co.jp
- 日田天領水
その他。
[編集] トラックの塗装
1990年代までは肌色と濃青のトラックボディに飛脚マークと「佐川急便」の文字のみといった単純なものであった(最初期の天然ガス燃料使用のトラックも旧塗装であった)が、2000年代以後(それ以前にも少数あったが)は「TRAN'SPORT COMMUNICATION SAGAWA」の会社名ロゴに銀をベースとし、白・青色の波状のデザインのカラーの、銀河をイメージした新塗装車両も導入し、年々その比率を増やしている(これを「ギャラクシーカラー」と呼ぶ)。なお旧塗装で使用中のトラックの塗装変更の予定はない。
[編集] グループ統一スローガン
「安全、環境、そしてサービス すべての品質を世界標準へ」
[編集] 店舗数
2007年3月27日現在では日本全国に351店舗が設置されている。
[編集] スポーツクラブ
- 佐川急便陸上競技部
- 佐川急便野球部(一時期元プロ野球選手の藤田平が監督をしていた。藤王康晴(現在は退社)も過去に在籍)
- 佐川急便東京サッカー部
- 佐川急便大阪サッカー部
- 2007年より上記2チームは統合され佐川急便サッカークラブとなる。
- 佐川急便ソフトボール部
- 関連会社・佐川印刷サッカー部
- 海外・広東佐川急便女子卓球クラブ
[編集] 所属スポーツ選手
- 畑中みゆき(フリースタイルスキー・モーグル)
- 福原愛(卓球)。広東佐川急便女子卓球クラブ所属(ただし同社の社員ではない)
[編集] スポーツ施設
[編集] CMモデル
[編集] グループ企業
[編集] 日本国内
- 佐川印刷
- 佐川グローバルロジスティクス(2007年3月21日より佐川グローバルエクスプレスを吸収合併)
- 佐川コンピューター・システム
- ギャラクシーエアラインズ
- 佐川引越センター(引越部門の分社子会社)
- 佐川ギャラクシーモータース(旧社名佐川自動車工業・佐川車体)
- 佐川アドバンス
- 佐川フィナンシャル
- 佐川林業
- ストーンウェル
- ロジスティクス・クオリティー・レジスター・インク
- ヌーヴェルゴルフ倶楽部
- 佐川コンピューターサービス
- 佐川物流サービス
[編集] 日本国外
- 佐川急便アジア
- 北京住商佐川急便物流有限公司
- 天津保利佐川国際貿易有限公司
- 上海保利佐川物流有限公司
- 上海大衆佐川急便物流有限公司
- 保利佐川物流有限公司
- 佐川急便(香港)有限公司
- 台湾佐川急便国際股ブン有限公司
- 佐川急便フィリピン
- 佐川急便ベトナム
- 佐川急便コリア
- 佐川急便シンガポール
- 佐川急便インドネシア
- 佐川急便タイ・コンテナ・ディストリビューション・サービス
- 佐川急便ハワイ
- 佐川急便マレーシア
[編集] 財団法人・外郭団体・関連施設
[編集] 国内での支社・営業部
全国9ブロックそれぞれに支社がある。()内は支社所在地。
- 九州支社(福岡県福岡市博多区)
- 四国支社(香川県高松市)
- 中国支社(広島県広島市南区)
- 関西・営業部(大阪府大阪市此花区) 旧・関西支社。2003年に大阪支社と本社敷地内にあった京都支社を統合。2007年3月21日より関西支社は廃止され本社の直轄下に関西・営業部を設置。
- 北陸支社(石川県金沢市)
- 中京支社(愛知県小牧市) 中部ハブセンターを併設。2001年に名古屋市港区より移転。同時に小牧店も小牧市内の別の場所に移転。
- 関東・営業部(東京都江東区) 2003年に埼玉県久喜市にあった北関東支社と東京支社を統合。2007年3月21日より関東支社は廃止され本社の直轄下に関東・営業部を設置。
- 東北支社(宮城県仙台市宮城野区)
- 北海道支社(北海道札幌市白石区)
[編集] その他
- 最近ではオリンピックの選手強化キャンペーンのスポンサーや、チーム・マイナス6%に参加している。
- 2006年7月3日には、災害時の救援物資輸送の体制を確立するため、日本赤十字社・ローソンと「救援物資搬送協定」を締結した。
[編集] 関連書籍
- 佐川急便 再建3650日の戦い―4万人の意識革命 ISBN 4879320307
- 不死鳥・佐川急便―不滅の帝王学 ISBN 4916007263
- 佐川急便の大変身―SD(セールスドライバー)を核とした「高収益経営」の秘密 ISBN 4757300204
- 青年社長 上 ISBN 4041643147 (ワタミフードサービス渡邉美樹社長の自伝的小説、上巻で佐川急便時代の事が触れられている)
[編集] 関連項目
- 日本の企業一覧 (陸運)
- 飛脚のふんどし(飛脚マークにまつわる都市伝説)
- 宅配便
- JR貨物M250系電車
- JR貨物U54A形コンテナ
- 佐川清
- 比叡の光(KBS京都開局以来の長寿番組)