リストラ
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リストラとは英語のリストラクチャリング(Restructuring)の略で、本来の意味は再(Re)構築(structuring)である。
日本語の文脈の中で使われるカタカナ語としての「リストラ」は、企業の経営に関わる行動としての意味合いのみを持つのに対し、英語における用法にそのような限定は存在せず、たとえば「労働市場をリストラし、完全雇用を実現しよう」といった使われ方もされる。
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[編集] 解釈
そもそもは事業規模や従業員数の増減を問わず、単に「組織の再構築」が行われることに対して使われる言葉であるが、実際の「リストラ」は、現状の事業規模や従業員数を維持、もしくは増強した上での組織(企業)再構築ではなく、組織再構築のために不採算事業や部署の縮小(ダウンサイジング)を行い、またそれに伴う従業員解雇(特に整理解雇)が行われる事が多かった。
このため、日本を含めた多くの国では、組織再構築の実施による不採算事業や部署の縮小に伴う「従業員削減」のみを意味すると言うように、本来の意味からかけ離れて解釈されるケースが多い。
また、日本においては、1990年代初頭バブル崩壊以降、デフレ経済の進行に伴ってリストラを行う事例が官民を問わず急速に増加したが、当初は意図的に日本語を英語で言い換えることで経営側の心理的後ろめたさを軽減することを目的にしていた。しかし現在ではこの様な解釈が一般的になったため、大手企業や外資系企業を中心にあえてこの言葉の使用を避け、「組織(事業)再構築」や「組織の建て直し」など、改めて日本語で表現する事も多い。
[編集] 事業再構築の歴史的変遷
[編集] ルックイースト(1980年代の事業モデル)
1970~80年代前半にかけて、日本企業は世界各地、特にアメリカで多額の利益を生むようになった。これを受けて、1982年、マレーシアでルックイースト政策が始まった。これは世界経済におけるアジア経済の成長に学ぼうというもので、
- 行政と企業が協力する『日本株式会社』
- 終身雇用制度(企業への忠誠・責任感を持てる)
という日本古来の2点を重要項目としていた。
[編集] 日本における米国流経営手法(プラザ合意後の日本の選択)
1970~80年代前半は、アメリカの視点からみれば、米企業が多額の損失を被り失業が増大した時期であった。1985年のプラザ合意で円高が進行すると、日本企業は利益を円に替えることで利益を薄めるのではなく、利益をドルのまま米国内で再投資することを選択、不動産買収などに走り、幹部(候補)社員には米国で必要な米国流経営手法の学習(MBA取得など)を推奨した。
この結果、海外ではルックイーストとまで呼ばれた日本流経営手法は日本では顧られなくなり始めた。まず、企業の青田買いが進み官の人材不足が囁かれるようになると、官民の協力関係においては民(企業)が優位にたつ傾向が生じるのに時間はかからなかった。次に、利益を確保するために終身雇用制度を放棄する企業が続出したが、官はこの流れを阻止できなかった。
1990年代にバブル景気が崩壊し、事業の再編成が必要になると、終身雇用制度を放棄して、必要なスキルを持つ人材を必要な期間だけ雇用する米国流人事管理手法(人員の最適配置・リストラ)を導入する日本企業が続出、「リストラ」は「人員整理・解雇」(整理解雇)を暗示する言葉としてとらえられ始めた。
数年たち、景気後退に対する数多くの対処法が試みられた後も、日本経済は回復しなかった。それだけではなく、下記のような弊害が見られるようになった。
- 国家経済と企業にとって
- 社員が会社への忠誠心を失うようになった結果、企業業績が悪化したという事例が極めて多くあげられている[要出典] 。米国流経営手法の導入開始時期が日本の景気後退の始まった時期と一致することを理由に、米国流経営手法は誤りであると断じる意見もある。また、社員の士気やモラルが低下したために、情報の流出や汚職などの犯罪が増えた他、会社内での足の引っ張り合いが横行しだしたのではないか、という指摘がされることもある。
- 個人にとって
- 実力主義(年俸制の導入など)が標榜される場合、企業間では安易に人材が流動するはずであるが、一部米国系企業にはプロジェクト途中に「退職後は全ての技術を放棄します」という誓約書をとるところもあるなど、同業他社への転職を禁じられてしまうことになる点、労働者には極めて不利な実態がある。
現在では、行政・企業がワークシェアなどの方法で全員に終身雇用を保証する方向で回復を試みることが求められている、という意見もある。
[編集] 本来のリストラ
本来、リストラは企業が事業規模(収入)にあわせて組織を再編成(出費の抑制)する意味である。「リストラ」を安易に「人員削減」「―整理」「クビ切りの容認」と解釈して、その他の十分な手を打たないまま安易な人員削減に走るのではなく、必要な手立てをとったかどうかの入念なチェックが求められる。本来の意味の事業再構築を合理的に進めないままに安易に整理解雇に走るのは、企業側および労働者側の双方にとって、そして法律上も、百害あって一利なしであり、経営者の責任が問われうる。
[編集] 実例
- 経理・管理
- 固定費用削減 - 帳簿上の全ての固定費用の見直し
- 不要なリース契約の見直し
- 業務効率化(例:間接部門統合・経理自動化・アウトソーシング・ERP:企業資源計画、SCM:サプライチェーン・マネジメント、KMナレッジマネジメントなど)
- 共有化 - (例:書類のコピーを各自1つ持つのではなく、共有棚に書類のコピーを数部保管・共有する。また、イントラネット化)
- ショッピングモール併設により、テナント収入・不動産収入増を狙う(例:丸ビル)
- 購買
- 人事・労務
- 総労働時間抑制(例:週30時間労働)
- ワークシェア(例:午前勤務1名と午後勤務1名を組み合わせ、1名分の仕事で2名分の雇用を創出する)
- 一時帰休
- 新規雇用の抑制
- 通信・ICT
- 営業
- アウトソーシング(外部委託)
- 短期プロジェクトの場合、プロジェクト終了後に社内失業者を抱えないために外部要因の活用が検討されうる。
- 不要なアウトソーシングの抑制 - アウトソーシングには情報流出・技術流出のリスクが常にある。
[編集] 関連項目
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