価値形態
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価値形態(かちけいたい form of value)とは、商品の価値を他の商品と比較することによって表現されるその商品の使用価値の形態をいう。マルクス経済学の用語であり、論理的に貨幣の出現が必然であることを示した。
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[編集] 各種形態
[編集] 第一形態
商品の価値を表現する最も初歩的な価値形態は、ある個別の商品の価値が別種の商品の使用価値量によって示す場合である。例えば米10kg=衣服一着である場合、使米10kgの価値は衣服一着で表現される。ただし、この関係が普遍的に成立することはなく、あくまで一時的な所有者の交換の希望に基づくものでしかない。そのため、相対的な価値形態に過ぎず、貨幣としては成り立たない。
[編集] 第二形態
第一形態の不完全性を補完するためにより展開した一般的な価値形態として第二形態に移行する。第二形態ではある商品の価値が複数のあらゆる商品の使用価値の一定量として表現される。例えば米10kg=衣服一着=お茶0.1ポンド=金1オンス…である場合、米10kgはより社会的・一般的な価値形態を得ることができる。また米という商品がその他のあらゆる商品と等式関係で結合されるために、ここで抽象的人間労働という概念が明確にすることができる。ただし、すべての商品の等式関係を完璧な整合性で結合することはできず、また新種の商品が次々と生産されれば等式関係は無制限に拡大・複雑化し、また価値表現としては不明瞭かつ曖昧な部分を多分に持つ。
[編集] 第三形態
第二形態の価値形態をより一般化するために等式関係を一元的に整理し、米10kgを「一般的等価物」とすることで、あらゆる商品の使用価値を米10kgを基本単位として計るという価値形態に移行する。この形態を一般的価値形態という。これによってすべての商品の価値を統一的に表現できるようになり、量的な比較をする際も比較上の目安ができる。ここに貨幣という基本的な価値形態のシステムが完成する。しかし、すべての商品はこの一般的等価物を志向するために、時に価値表現が流動的なものになってしまう場合がある。
[編集] 第四形態
第三形態の価値形態で発生する問題を解決するためには、貨幣に客観的な固定性と社会的な妥当性を付与することが求められる。そのため、貨幣に最も適当な商品として、金が第四形態として選ばれた。なぜなら、金はその価値が極めて高く、輸送に便利であり、しかも時間と共に腐敗することもなく、加工・保存に便利である。加えて金は歴史的に人間が本能的にその光沢から貴重なものとして扱われてきたからでもある。
金が第四形態の価値形態として定着してから、金が元来貨幣であったかのような誤解が広がり、貨幣(金)に対する崇拝(物神崇拝)が生まれる。しかし商品世界において金も商品に過ぎず、その価値を相対的に見て最も普遍的に表示することができたからであり、生まれながらの貨幣というわけではない。