初心者狩り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

初心者狩り（しょしんしゃがり）とは、対戦型の対人戦を目的とするコンピュータゲームにおいて、そのゲームの初心者を狙って勝負を仕掛け一方的な勝利をすることを楽しむ行為。または、他のプレイヤーキャラクターに危害を加えることが可能なオンラインゲームで、初心者の操るキャラクターを狙って殺害するなど妨害して楽しむ行為。

多くの場合マナーに反するものと認識されている。初心者にとって過酷なのはもちろんのこと、普通にゲームを楽しむ他のプレイヤーからもそのゲームからのプレイヤー離れを招く行為であるとして非難される。

目次 1 対戦型格闘ゲーム 2 オンラインゲーム 3 トレーディングカードアーケードゲーム 4 初心者狩りへの対策・ゲームセンター編 5 総評

[編集] 対戦型格闘ゲーム

『ストリートファイターII』をはじめとする対戦型格闘ゲームの大ブームによりゲームセンターに通信対戦台が普及し、筐体を挟んで反対側の対戦相手と顔を合わせずにゲームができるようになるとともに初心者狩りは散見されるようになった。コンピュータ相手にぎこちない動きをする初心者を見つけると即座に乱入して一方的に相手を蹂躙し悦に入るプレイヤーが存在し、当時から問題になっていた。より悪質なものになると、初心者がコインを投入しゲームを開始した直後に乱入し練習の暇も与えず負かすことさえあった。

この手のプレイヤーのほとんどは過程はともかく勝利することを至上とし、確実に勝利するために初心者を選んで対戦相手としている――裏を返せば中級者以上を相手にして勝てるほどの実力を備えておらず、このような行為を発見したより実力に勝るプレイヤーによって駆逐されることも多い。またこれを逆手に取り、ゲームに不慣れな様を装うことで初心者狩りをしようというプレイヤーを誘い込み返り討ちにするというプレイヤー・・・俗に言う「なんちゃって初心者」「初心者狩り狩り」も存在した。

標的となるのは一般的に「弱い」という先入観がある小学生や女性プレイヤーが多い。ただし女性プレイヤーの中には本当にとてつもない実力の持ち主もいたりする。

また中には逆のパターンとして、乱入した相手が初心者もしくは自分より格下だと分かった途端に、試合を放棄してその場を去る・・・つまり対戦相手にわざと負けるという人も少なからずいる。これは初心者に少しでも練習をさせるためというよりも、弱すぎる相手と戦って圧勝してもつまらないからというケースが多い。これは初心者狩りをする人とは完全に逆の思考だと言える。

[編集] オンラインゲーム

オンラインゲーム、特にMMORPGにおいては、初心者狩りは嫌がらせを目的とした愉快犯的な行為であることが多い。詳しくはプレイヤーキラー(以下PK)を参照。ただし、レベル差ゆえに反撃が不可能なプレイヤーを対象にしている点で特に卑劣な行為として忌み嫌われる。ゲームによっては初心者へのチュートリアルを行う施設が存在したり、また初心者の練習場として適したダンジョンなどが存在するが、このような場所が彼らの「狩場」になりうる。直接的な殺害が不可能なシステムでも、初心者では対応できないほどのモンスターを集める「MPK」が行われるなど、仕様の隙を突く行為も多い。

ファーストパーソン・シューティングゲームでも初心者狩りは見受けられる。しかしプレーヤー技術本位の、しかも対戦や国家などの勢力対立がゲーム内の重要な要素となっているゲームでは、初心者狩りとマナーに沿ったプレイは紙一重である。防止策として多くの場合、lv制を導入し規定のlv範囲のみが同じフィールドでプレイできる構造となっている。初心者狩りをする者は、あらたにキャラクターを取得して初心者に成りすます場合も多い。

これらの行為を行う者への対策については、問題プレイヤーとして運営者へ通報するのが基本であるが、万が一にも運営側による対処がなされない場合は、より強いキャラクターによって駆除されるのを待つか、さもなくば近寄らずに関わりを避けるしかない。また、PK可能なゲームであっても、最初の町と周辺など、初心者や低レベルのプレイヤーが中心層となる地域でのPKやMPK行為を禁止し、行った者についてペナルティを課すシステムを取っているタイトルは少なくない。

なお、初心者狩り行為については、そのゲームの初心者やライトユーザーのプレイ意欲を喪失させ、課金式のゲームの場合には課金の取りやめにも直結するものであり、ひいてはゲーム内世界の活性化を妨げるものとして、ほとんどのゲームでは通常のプレイヤーからの厳しい批判と軽蔑の対象になる。初心者狩りを繰り返すPKプレイヤーについては「チキンPK」などと呼ばれ、PK排除を行っている者たちからは最優先の攻撃と駆除の対象にされる事が多い。また、ゲームの運営会社にとっても、プレイヤーのプレイ意欲と課金の維持のためにも、ゲーム初心者や低レベルプレイヤーのPKからの保護がゲーム運営上の大きな課題となる事が珍しくない。

他方、オンラインゲームのタイトル間の競合が日本より遥かに激しい韓国では、オンラインゲーム会社の関係者が、ゲームのシステムが類似し、事実上の競合関係にある他社のオンラインゲームでPK行為、とりわけ初心者狩りを大々的に展開し、競合タイトルにPKが多い、モラルが低くプレイしにくいというネガティブなイメージを植えつけ、これによりプレイヤーのプレイ意欲喪失を引き起させ、競合タイトルに打撃を与える事を狙ったという、厳密に業務妨害とは言い切れないが、それに近い事を行ったケースが存在している。

[編集] トレーディングカードアーケードゲーム

トレーディングカードを使用するタイプのアーケードゲーム(トレーディングカードアーケードゲーム)のうち、対人戦の要素があるものについては対戦型格闘ゲームと同様の初心者狩りが存在する。

ゲームによってはそれまでの戦績を考慮したマッチングが行われ、実力に開きのありすぎる対戦カードが組まれないような仕組みがなされているが、例えば『三国志大戦』では勝ち抜くごとにプレイ料金が安くなるという特典があり、これのためにあえて戦績を破棄することで意図的に初心者を相手とするプレイヤーが存在する。また『WORLD CLUB Champion Football』では各種タイトル戦の出場条件を満たさないプレイヤー同士で対戦申し込みが可能であるが、初心者狩りをするためにタイトル戦の間ゲームをせずにゲーム台の一席を占有する（「飛ばし」と呼ばれる）という別のマナー違反行為を伴うケースもある。

アヴァロンの鍵でも稼動当初は初心者狩りが大きな問題と化していた。普段はプレイせずに筐体を監視し続け、低学年がプレイを始めた途端に乱入。右も左も分からない初心者に対して蟻デッキやスカルマンデッキなどの極悪な強さのデッキで叩きのめすという物だった。だがメーカー側もそれに対抗するかのようにゲームバランスの調整を繰り返し、現在の環境のＶｅｒ２．５０では俗に言う「強すぎるカード」「存在自体が卑怯」というようなカードが無くなった。さらにＶｅｒ２．００から一人用モードが搭載され、事実上初心者狩りは不可能になったと言える。

[編集] 初心者狩りへの対策・ゲームセンター編

ゲームセンターで初心者狩りに遭いたくないという人が取るべき防衛策として挙げられるのは、主に以下の通りである。

• 家庭用が出るまで待つ
• 客が少ない時間帯で遊ぶよう心がける

最近の新作アーケードゲームは、プレイステーション2などの家庭用ゲーム機に移植されるケースが多い。なので心の底から本当にプレイしたくて１人で思う存分遊びたいというのであれば、家庭用が出るまで待つというのも一つの手ではある。大体ゲームセンターで稼動してから半年程度で移植される事が多い。当たり前の話だが、家で遊ぶのであれば誰にも乱入される危険は無い。ただし移植されるのを待たなければならないという問題はあるし、確実に移植されるとは限らないのが難点である。

また、客が少ない時間帯…開店直後か閉店間際に店に訪れるというのも効果的ではある。ただし閉店間際に訪れる場合は店の迷惑にならないように、あまりやりこみ過ぎる事の無いように注意する必要がある。閉店の時間にはきちんとプレイを終えて店を出るように心がける事。出来れば平日の開店直後がベストなのだが、さすがに社会人には時間的に厳しい一面もある。

もっとも最近では、こういう初心者が訪れやすい時間を「狩り場」とする初心者狩りもいたりするので絶対的な対策では無い。

[編集] 総評

• 初心者狩りは基本的にある程度強くなった中級者、又は非常に強い人が、自分の力を誇示しようとする行為、または、簡単に倒せる初心者を利用して自分の利益を得ようとする行為である。このような行為は、始めたばかりの人がそのゲームに嫌悪感を抱き、そのゲームをしなくなってしまうという現象が起きる。これは、「皆で楽しむ」というコンセプトのゲームとは違ったものである。
• 格闘ゲームでは、
  • 「対戦台なのだから乱入されるのは当たり前」
  • 「そんなに乱入されるのが嫌なら対戦台でプレイするな」
  • 「対戦台というのは弱肉強食。強い者は生き残り、弱い者は去るしか無い」

と、いった意見もある。これは対戦系のゲームでは、共通で言える。

• 中には練習用として一人プレイ専用の筐体を設置している店もあるが、それは本当にごく僅かで、ほとんどの店では新作格闘ゲームは対戦台と化しているのが現状である。これは対戦台にした方が客の回転率が良くなり、インカムを効率よく稼ぐ事が出来るからである。