医原病
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医原病(いげんびょう、英: iatrogenesis または iatrogenic disease)とは一般に、医療行為が原因で生ずる疾患のことを指す。「医源病」「医原性疾患」も同義。
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[編集] 概要
医療は未だ発展途上の段階にあり、すべての医療行為や医薬品の使用は副作用をもたらす可能性があり、それは現在のところ現在の利用技術ではゼロにはできていない。また医療技術の進歩に伴い新しい見地の発見により、従来の医療行為がなんらかの病原体を蔓延させる原因を作っていたケースがわかったりすることがある。それらの不利益によりなんらかの疾患に罹患した場合、その疾患を医原病と称する。医原病とは一般に、医療行為が原因で生ずる疾患である。
医者が患者を害する可能性は古代ギリシャの時代より知られ[要出典]、医療技術や医療哲学の確立の中で重要な概念とされてきた。
[編集] 医療器具を原因とするもの
医療技術の進歩により医療器具の使いまわしは、病原体や悪性細胞等を別の人にうつしてまう可能性があるということがわかった。そのために一度使用した医療器具の滅菌・消毒を行なったり、滅菌が不可能または困難な医療器具の使い回しをやめ一回使い捨ての医療器具を使用したりするようになった。
限られた医療費のなかで治療を行なう必要があることや、病院であっても利益を出さなければならないという理由などにより、その使い捨て医療器具をおのおのの基準によって再洗浄・再滅菌の上で再使用する病院も存在する。
再滅菌再使用は器具自体の設計上再滅菌再使用を想定していないものが多く、複数回の使用により、同様の方法でも同じ結果が得られなかったり(メスであれば切れ味が悪くなる)、使用が困難になったりする(レンズであれば、濁って見えづらくなる)場合がみられることがある。基本的に一回使い捨てタイプの医療器具の但し書きには「再滅菌禁止」とある。
使い捨てではないものに対しては、再使用際し基本的には滅菌・消毒を行なうこととなる。
医療器具の再使用を行うも、様々な合併症が見られるようになった。それは器具に消毒薬が残留していたもの、消毒薬の洗浄薬が残留していたもの、再滅菌中に医療器具が破損し期待された効果が発揮できなかったものなど多岐にわたる。また近年消毒方法は進歩したが、細菌・ウィルス・プリオンなどの研究が進み、医療用器具を消毒をしたとしても、菌やウィルス、プリオンが他に感染可能な状態で生き残り他の人に感染させてしまう場合があることがわかった。米国ではこれは社会問題化し、使い捨て器具をそのように再利用することに対して罰則が規定された。
上部消化管に使用する内視鏡などは一つ100万円以上し、それを再使用せずに使い捨てにすること自体が荒唐無稽であるという意見もあり、再使用は避けられないという一面もある。
[編集] 具体例
[編集] 注射器
かつて行われていた「注射器の使い回し」(一度ある人に対して使った注射針と注射器を別の人に対しても使うこと)により、ウィルス感染が拡大していたことも医原病にあたる。後になってから、注射器の使いまわしでウィルスの感染が起こるということが知られるようになり、使い捨ての注射器が登場した。
[編集] 内視鏡
日本では、胃カメラによる検査の後に胃炎を発症する事例が多くあり、「胃カメラ後急性胃炎」などの名で呼ばれていたが、近年になりようやく、胃カメラを介してある患者の胃の中のピロリ菌等を別の患者へと感染させていたことが主たる原因であった、と判明した。
その後現在でも日本では、すべての医療機関が内視鏡を1回の使用毎に十分に(あるいは完全に)消毒している、とは言い難い状態が続いている。また、使い捨て用の内視鏡処置具を医療機関が再利用している実体も明らかになっており、これも問題を孕んでいる。
[編集] 医薬品を原因とするもの
薬害を参照のこと。
[編集] 医療材料を原因とするもの
[編集] 具体例
[編集] プリオン
「クロイツフェルト・ヤコブ病(狂牛病)」の名により知られることになった異常プリオンは、消毒・高圧高温滅菌したとしても不活性化(いわゆる無害化)はできないため、穿刺針であれ内視鏡処置具であれ手術用メスであれ、一つの医療用の器具が複数の人間に対して使用されて組織内に挿入されたり組織を採取されたり切断されたりすることは、基本的に異常プリオンが転移し感染を引き起こすリスクを孕んでいる。
[編集] 参考文献
- 『治療は大成功、でも患者さんは早死にした』岡田正彦著、講談社、2001年。ISBN 4062720671
- 『医原病―「医療信仰」が病気をつくりだしている』近藤誠、講談社、2000年。ISBN 4062720507
- 『脱病院化社会―医療の限界』イヴァン・イリッチ著、金子嗣郎 訳、晶文社、1998年。ISBN 4794912625
[編集] 関連項目
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