原子力電池
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原子力電池(げんしりょくでんち)とは、放射性同位元素の原子核崩壊の際に発生するエネルギーを利用する電池である。
[編集] 原理
2種のタイプがある。
- 放射性同位体熱電対がある(アイソトープ電池とも言う (en))。これは放射性同位元素の原子核崩壊の際に発生するエネルギーを熱エネルギーとして利用し高温部を作り出し、それと低温部との間に2種の異なる金属線で結んで熱電対を構成することにより、起電圧を発生させるものである。
- 熱イオン変換方式。このタイプは実用化されていない。
[編集] 適用分野
実用的な電力を取り出すためには、十分な安定した低温部が必要である。このタイプの原子力電池の主な利用が、宇宙空間やシベリア北極圏に限られているのはそのためである。
技術構成的には、原子力発電などに比べると比較にならないほど簡単であるため、早い時期から実用化され、大量に使われつづけたが、近年は、その放射線による環境汚染が問題化している。シベリアの原子力電池の密集する地域では、3本角のトナカイなどが見つかっている。
[編集] 宇宙
宇宙空間で人工衛星に搭載されて使用されるものは、衛星の寿命が尽きた後、地球に落下したケースがあり、現在では、広範囲への放射能汚染の懸念があるため、利用されているケースは少なくなっている。
しかし、深宇宙探査の場合には太陽からの光も弱く原子力電池以外を使う事ができないため、 土星探査機のカッシーニなどに使われて現在も運用が行われている。長寿命という特性があるので、打ち上げから30年近く経つボイジャー探査機も現在太陽系外で稼動し続けている。 2006年1月に打ち上げられたNASAの冥王星探査機ニュー・ホライズンズにも原子力電池が搭載されている。