宇宙
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宇宙(うちゅう)とは、広義では森羅万象(あらゆる物事)を含む天地の全体、世界(universe)の意味と、哲学・宗教あるいは何らかの観点から見て、秩序をもつ完結した世界体系、コスモス(cosmos)の意味を持つ。また、狭義では天文学的、物理学的にみた宇宙と、地球の大気圏外の空間 、宇宙空間(outer space)の意味での宇宙がある。
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[編集] 概要
漢代の書物「淮南子天文訓」によると「宇」は空間全体をさし、「宙」は時間全体(過去、現在、未来)を意味し、「宇宙」で時空(時間と空間)の全体を意味する。また、別の一説によると、「宇」は「天」、「宙」は「地」を意味し、「宇宙」で「天地」のことを示すと言う。
哲学、宗教的観点からみた場合、宇宙全体の一部でありながら全体と類似したもの(人間などをそう捉えるときがある)を小宇宙と呼ぶのに対して宇宙全体のことを大宇宙と呼ぶ。
天文学的に見た場合、宇宙は、すべての天体・空間を含む領域をいう。小宇宙(銀河)に対して大宇宙ともいう。観測できる領域は宇宙の地平線の内側に限定されるが、大宇宙はそれよりはるかに大きいと考えられている。
物理学的に見た場合、宇宙は、物質・エネルギーを含む時空連続体のまとまりである。現代物理学では「宇宙」はもはや物理学的な「世界」全体ではありえず、生成・膨張・収縮・消滅する物理系の一つにすぎない。理論的には無数の宇宙が生成・消滅を繰り返しているとも考え得るものになっている。
「地球の大気圏外の空間」という意味では、国際航空連盟(FAI、航空に関する記録を行う団体)では高度100km以上、米軍では高度50ノーチカルマイル(92.6km)以上の高空を「宇宙」と定めている。
この項目では、主として天文学・物理学的に見た宇宙について述べる。
[編集] 宇宙の年齢・大きさ
宇宙 (Universe) とはわれわれが暮らしている物理的に認知可能な最大範囲を指す言葉である。2003年に発表されたNASAの宇宙背景放射観測衛星WMAPの観測結果によれば、宇宙は約137億年前に生まれたと推定されている。
宇宙の大きさを定義することは難しいが、「我々の宇宙は一様かつ等方である」という宇宙原理が正しいと仮定し、「宇宙の天体は2天体間の距離に比例する速度で互いに後退している」というハッブルの法則が宇宙膨張に起因するものだとすると、我々から見た天体の後退速度が光速に等しくなる距離を、我々が認識できる範囲という意味での「宇宙の大きさ」と呼ぶことができる。この意味での宇宙の大きさは、光が宇宙年齢の間に進むことができる距離となるため、上記の最新の観測結果によれば約137億光年と言うことになる。 これよりも遠くに存在する「もの」は我々から光速より速く遠ざかることになるが、相対性理論によれば光速よりも速い速度で伝播するものは存在しないため、これらの「もの」に関する情報は我々には決して届かない。このため、この距離を宇宙の地平線と呼ぶことがある。
[編集] 宇宙の膨張
我々の宇宙は膨張を続けていることが分かっている。1929年にハッブルが遠方の銀河の後退速度を観測し、距離が遠い銀河ほど大きな速度で我々から遠ざかっていることを発見した(ハッブルの法則)。一方、これに先立つ1915年にアインシュタインによって一般相対性理論が発表され、エネルギーと時空の曲率の間の関係を記述する重力場方程式(アインシュタイン方程式)が見出された。これを受けて、宇宙は一様・等方であるという宇宙原理を満たすようなアインシュタイン方程式の解が、アインシュタイン自身やド・ジッター、フリードマン、ルメートルらによって導かれたが、これらの解はいずれも時間とともに宇宙が膨張(ないしは収縮)することを示していた。当初、アインシュタインは宇宙は定常であると考えていたため、自分が見つけた解に定数(宇宙定数)を加えて宇宙が定常になるようにしたが、後にハッブルによって観測的に宇宙膨張が発見され、膨張宇宙という概念が定着した。
[編集] 宇宙の誕生と死
宇宙の始まりはビッグバンと呼ばれる大爆発であったとされる。我々から遠ざかる天体の速さは我々からの距離に比例する(ハッブルの法則)ため、逆に時間を遡れば、過去のある時点ではすべての天体は 1 点に集まっていた、つまり宇宙全体が非常に小さく高温・高密度の状態にあったことが推定される。このような初期宇宙のモデルはビッグバン・モデルと呼ばれ、1940年代にガモフによって提唱された。その後、1965年にペンジアスとウィルソンによって、宇宙のあらゆる方角から絶対温度3度の黒体放射に相当するマイクロ波が放射されていることが発見された(宇宙背景放射)。これはまさに、宇宙初期の高温な時代に放たれた熱放射の名残であると考えられ、ビッグバン・モデルの正しさを裏付ける証拠であるとされている。
しかしその後、宇宙の地平線問題や平坦性問題といった、初期の単純なビッグバン理論では説明できない問題が出てきたため、これらを解決する理論として1980年代にインフレーション理論が提唱されている。
また、量子論によれば、発生初期の宇宙には、真空のエネルギーに満ちており、それが斥力となり宇宙膨張の原動力になったとされる。
膨張する我々の宇宙がこの先どのような運命をたどるかは、アインシュタイン方程式の解である宇宙モデルによって異なる。一般に、一様等方という宇宙原理を満たすような宇宙モデルには、空間の曲率が0の平坦な宇宙、曲率が正の閉じた宇宙、曲率が負の開いた宇宙の3通りが可能である。平坦な宇宙か開いた宇宙であれば宇宙は永遠に膨張を続ける。閉じた宇宙であればある時点で膨張が収縮に転じ、やがて大きさ0につぶれる(ビッグクランチ)。2005年時点での最新の観測結果によれば、宇宙は平坦な時空であり、このまま引き続き広がり続け、止まることはないと考えられている。宇宙が平坦であり永遠に膨張を続けるということは、最終的に宇宙は絶対零度に向かって永遠に冷却し続けることを意味する(現在は3K、-270℃程度だといわれている)。宇宙の終末に関するより詳細な議論は宇宙の終焉を参照の事。
[編集] 宇宙の階層構造
我々の住む地球は惑星のひとつであり、いくつかの惑星が太陽の周りを回っている。太陽とその周りを回る惑星、その周りを回る衛星、そして小惑星や彗星が太陽系を構成している。 太陽のように自ら光っている星を恒星という。恒星が集まって星団を形成し、恒星や星団が集まって銀河を形成している。銀河は単独で存在することもあるし、集団で存在することもある。銀河の集団を銀河団といい、銀河団や超銀河団の分布が網の目状の宇宙の大規模構造を形成している。網の目の間の空間には銀河はほとんど存在せず、超空洞(ボイド)と呼ばれている。
[編集] メガパーセク
天文的な距離を表すのには光年がよく用いられるが、銀河間の距離や宇宙の構造を語る時にはMpc(メガパーセク)が便利である。
- 宇宙の最大観測可能距離 137億光年=4200Mpc
- かみのけ座銀河団までの距離 90Mpc
- 超空洞ボイドの直径 30~10Mpc
- おとめ座銀河団までの平均距離 20Mpc
- アンドロメダ銀河までの距離 0.7Mpc
- 銀河系直径 0.03Mpc
[編集] 宇宙の歴史
宇宙の年表を参照。
[編集] 人類の宇宙観
以下の各項目を参照のこと。