場の量子論
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場の量子論(ばのりょうしろん、Quantum field theory)とは、物理学における理論的枠組の1つであり、場という物理量に量子力学を適用した理論である。素粒子物理学、原子核物理学、物性物理学などの多くの物理学の分野で、多体系を記述するための基礎的な道具として用いられている。
特に素粒子物理学においては、場の量子論とは量子化された場(素粒子物理ではこれが素粒子そのものに対応する)の性質を扱う理論であり、それらの素粒子間の力の相互作用はゲージ理論によって描写される。
もともと場の量子化は量子力学の多体系への拡張を目指して発展された。多体系での反応では粒子数が保存するとは限らず、また時間とエネルギーの間にある不確定性原理により、粒子の生成/消滅が起きるので、それらも含めて扱う必要性があった。さらに、特に素粒子物理などにおいては高エネルギー反応を扱うので、相対論的不変性を課す必要性もあるが、多体系において波動関数に相対論的不変性を課すには、いろいろと問題がある。しかし、物理量としての場を量子化して扱えば(しかも反粒子が存在する必要性も生じる)、それらの問題を解決することができる。
なお、粒子の生成/消滅現象の代表例として対生成、対消滅などが知られており、この対生成により生じる粒子を仮想粒子と呼ぶ。この場合、この仮想粒子が物質の間でやり取りされる現象が力の相互作用に対応する。
[編集] 場の量子化
量子力学では運動量などの物理量を演算子で置き換える量子化をおこなうが、同様に電磁気学のような古典場の理論で電磁場のような場を演算子に置き換えることを場の量子化という。つまり場の量子化で量子化されるのは「波動関数」ではなく「物理量としての場」である。したがって、多体量子系を生成・消滅演算子で記述する(実用上は)近似的な理論である第二量子化とは異なる。ただ、歴史的な事情で場の量子化を第二量子化と呼ぶこともあるので注意を要する。