量子色力学
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量子色力学(りょうしいろりきがく、Quantum Chromodynamics、QCD)とは強い相互作用を説明する、 SU(3) ゲージ対称性に基づくゲージ場の量子論である。
[編集] 概要
クォークとグルーオンは、カラーチャージ(color charge、色荷)と呼ばれる量子数を持つ。カラーチャージは、光の三原色との類推から「赤」、「青」、「緑」と呼ばれることがある。カラーチャージを持たない状態は「白色」であるとも呼ばれる。これは SU(3) リー代数の表現を分かりやすい言葉で表したものである。クォークは SU(3) の基本表現 (三重項)を作り、反クォークは基本表現
(反三重項)をなす。
は「色」の類推で言えば「補色」に対応している。グルーオンは随伴表現
(八重項)で、「色」と「補色」を共に持つ8つの状態がある。(
から、「白色」(一重項)となる組み合わせが取り除かれる。)
カラーチャージはグルーオンと呼ぶゲージ粒子を交換することでやり取りされ、これが強い相互作用の源になっている。この相互作用はカラーチャージ間の距離が小さくなる(交換される運動量が高くなる)と弱くなるという、漸近的自由性を示す。逆に距離が大きくなると相互作用が強まり一定の力に近づく。この結果クォークを単体で取り出すことはできない。これは、現実に観測されるハドロンの状態は「白色」に限られるという、クォークの閉じ込め現象を説明する。
「白色」状態を作るには、三原色を持つクォークと「補色」となるカラーチャージをもつ反粒子とでペアを作る(->メソン)か、3つのクォークを3つの三原色を重ねて「白色」となるようにトリオを作る(->バリオン)かが考えられる。SU(3) の表現論の言葉で言えば、
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に現れるがそれぞれメソンとバリオンに対応している。グルーオンのみからも「白色」の状態を作ることができる。そのような粒子はグルーボールと呼ばれる。また、これらの他の可能性もあり、それらはエキゾティックであると呼ばれる。2003年に報道されたペンタクォークはエキゾティックな粒子の例である。
カラーチャージを持つことは、強い相互作用をするということと同じことである。それゆえ、電子やニュートリノなどのレプトンはカラーチャージを持っていない。
[編集] 関連項目
- クォークと反クォークのペアからなるハドロン
- クォーク3個からなるハドロン
- クォーク、反クォーク合わせて5個からなるハドロン
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