大番 (小説)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
![]() |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『大番』(おおばん)は、1956年~1958年、週刊朝日に連載された作家獅子文六の小説、のちに加東大介主演で映画化される。
目次 |
[編集] 概要
愛媛県宇和島市の半農半漁の田舎から、昭和初期「謄写版ラブレター」が発端で家出、上京した田舎青年「赤羽丑之助」が兜町の株取引で活躍する痛快人情小説。
獅子文六が終戦直後、妻の実家である宇和島市津島町(旧北宇和郡岩松町)に疎開していた時の見聞が「てんやわんや」と共に小説の題材になったと思われる。
劇中、主人公赤羽丑之助が株取引で失敗し、夜逃げをして郷里の宇和島市に引き上げる場面が何度かあるが、その時の旧友や地元の名士との掛け合いを見ると、宇和島地方の人情、文化、方言などを詳しく知ることができる。
[編集] 映画
映画の地元ロケにはみかんを植林する前の芋畑「だんだん畑」や護岸のための石垣、頂上の松林(松くい虫被害のため伐採)が現存している九島など、また、米がほとんど取れないため代用食としていた芋をスライスして干したものを原料とした「かんころめし」【オツメ、オカチンとも言う1960年ごろまで主に村落での主食】や「かいぼし」(いわしの干物)【芋とは食感、栄養と共にベストチョイスとされる】の食品、ホケ(芋を原料とした密造酒)「若衆宿」と呼ばれた青年啓発学習制度など往時をしのぶ映像が多数存在する。
(監督:千葉泰樹、赤羽丑之助:加東大介、父丑吉:谷晃、母タネ:沢村貞子、妹タツエ:上野明美、勝やん:三木のり平、森家の番頭:多々良純、新どん:仲代達矢、チャップリンさん:東野英治郎、木谷さん:河津清三郎、おまきさん:淡島千景、森可奈子:原節子)
- 「続大番」(風雲篇)(1957年)東宝
(監督:千葉泰樹、赤羽丑之助:加東大介、父丑吉:谷晃、母タネ:沢村貞子、義弟長十郎:太刀川洋一、妹タツエ:上野明美、おまきさん:淡島千景、有島可奈子:原節子)
- 「続々大番」(怒涛篇)(1957年)東宝
(監督:千葉泰樹、赤羽丑之助:加東大介、父丑吉:谷晃、母タネ:沢村貞子、義弟長十郎:太刀川洋一、妹タツエ:上野明美、新任の署長:十朱久雄(十朱幸代の父)、おまきさん:淡島千景、新どん:仲代達矢、有島可奈子:原節子)
- 「大番」(完結篇)(1958年)東宝・ワイド画面
(監督:千葉泰樹、赤羽丑之助:加東大介、おまきさん:淡島千景、新どん:仲代達矢、竹林:有島一郎、川田廉太郎:山村聡、MP:ロイ・ジェームス、有島可奈子:原節子)
[編集] 方言
『現在はあまり使われないもの』
【~ですらい】「ます、です」の丁寧語。目上の人や改まった席などで使用される。
【やんなせ】 「ください」「~~してください」
【あのな~し】 「もしもし」「ちょっといいですか?」などの丁寧語
【お~~た】 感嘆詞、びっくりした様
【てんご】 理不尽な、法外な
【だんだん】 ありがとう
【とっぽ作】 間抜け者
【てんぽ作】 向う見ずな者
『現在も使われているもの』
【がいや!】【がいな!】
ものすごい」「おおげさな」この方言をちなんだ「ガイヤ・オン・ザ・ロード」(宇崎竜童作)という踊りがうわじま 牛鬼まつりの初日に「ガイヤカーニバル」として開催され年々参加者が増えている。
【おーとろっしゃ!】 「おぅ!なんてこったい!」(刑事コジャック風)
【どがいするぞ!】 「いったい、どうするって言うんだ!」
【かんまんです】 「結構です」「かまいません」
【そうてて】 「だって」「しかしながら」
【おことわり】 謝罪すること
【こらえてやんさい。(やんなせ】 謝罪の言葉。許してください。我慢してください。
映画で主人公がタンカをきる時は「お~た、がいやの、そうてて、な~しじゃ!」と言う。
[編集] その他話題
この映画を記念して作られた菓子「大番」は今も「唐饅」(映画中登場)「蜜饅」と並び、宇和島市の銘菓として知られ、獅子文学が発端で開発された菓子としては「てんやわんや」の「善助餅」とともに知られている。 映画で主人公が東京駅に立った時の姿が包装紙のデザインに使われている。