学生セツルメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
学生セツルメント(がくせい-せつるめんと、Student settlement)とは、大学生による貧民救済事業である。
19世紀、イギリスのケンブリッジ大学やオックスフォード大学の学生が、貧民街に入り隣保館(セツルメント)のボランティアとして医療相談や法律相談、学校に行けない子どものための教育事業を行ったのが始まりだと言われる。
日本には大正時代に紹介され、東京帝国大学の学生を中心に活動が開始された。
戦後は、日本共産党系の学生が中心となり、全国学生セツルメント連合(全セツ連)が結成された。武装闘争路線をとっていた日本共産党の、地域人民闘争の一環であるとともに、学生を「民主的知識人勤労者」に育てる場とされた。
1960年の朝日新聞社会面には、「全国学生セツルメント連合大会始まる」との記事がトップを飾っている。 当時はまだ極貧層が多く、学生セツルメントの社会的役割が大きかったのであろう。
しかし、高度経済成長の進展と共に、極貧層が非常に少なくなり、学生セツルメント運動の存在意義がなくなっていった。
まず事業内容から医療相談が消え、法律相談も消え、1980年代後半に残っていたのは教育事業だけになっていたが、それすらも存在意義は疑問視されていた。学生セツルメントでは老舗であった亀有セツルメントも、1987年には活動を停止している。現在では、ニューカマーが多い地域などで活動が残存している程度のようだ。