ボランティア
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ボランティア(英 volunteer)とは、自発性に基づく活動、またはそれに携わる人のこと。無報酬での活動を指すことが多いが、有償の場合もある。ボランティアの3原則として、自主性、無報酬、公共性の全てが当てはまることが挙げられる。 有償ボランティアとは、ボランティアを受け入れることが唯一かつ最高の報酬であることを精神的に受け入れられず、ボランティアさえも受け入れられない心理的状況を解消するために考えられた、受け入れる側が対等になれる手法である。
(→ボラバイト)。
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[編集] ボランティアとはなにか?
[編集] 語源
volunteerの語の原義は志願兵であり(反語がdraft―徴募兵)、英語圏では活動自体のことではなく自発的に奉仕・労働する人のことを指す。歴史的には騎士団や十字軍などの宗教的意味を持つ団体にまで遡る事ができる。語源は、ラテン語の自由意志「voluntas」。
[編集] ボランティアの3原則
ボランティアの3原則として、自主性、無報酬、公共性の全てが当てはまることをボランティアと定義するのが一般的である。「自主性」に関しては強制力を受けない意味合いのほかに、たとえば街中で困っている人に遭遇し助けることは道義でありボランティアとは言わず、助けるために街中に居ることはボランティアといえるのであって自ら進んでという積極性を含む。「無報酬」とは主に対価を受けないということであるが、有償ボランティアはボランティアに含まないとする考えと、受け取ること自体がボランティアであるとする考えがある。特定の相手にすることは「人付き合い」との区別がつきにくいため、対象が不特定であることと、公共の福祉に資することが「公共性」と解される。
[編集] 言葉の用例
アメリカなどでは、日常的に使われる語である。たとえば、学校の授業でロールプレイング(役割演技)をするときに、前に出てやってくれる生徒を募るときに、先生は「Volunteer?(誰かやってくれる人は?)」と言う。
また英語圏では現在でも本来の語義通り志願兵あるいは義勇兵の意味でも使われ続けている。一部では傭兵(mercenary)の中で対価が極端に低い、いわゆるcheap mercenaryをvolunteerに含めてしまう場合もあるが一般的ではない。
動員・勧誘・強制などによる活動への参加は、本人の純粋な自由意思に基づかないので、厳密にはボランティアとは言えないが、日本では奉仕活動の同義語、無償で労働する意味の表現としてボランティアと呼ぶ場合もある。これは語源からすると明確な誤用だが、誤用のまま定着してしまっているのも事実である。
このように日本では奉仕活動として受け取られているが、ボランティアは謙譲(奉仕)の精神がなく、人に対するボランティアでは相手と対等である。また「無報酬」という認識が強く、自発的でなくともボランティアと用いる場合がある(=ただ働き)。
[編集] 商標登録について
「ボランティア」、「NPO」は2002年1月18日に株式会社角川グループホールディングス(当時は、株式会社角川書店)が商標登録出願、2003年4月25日に登録されたが、2005年5月10日に商標登録を取消されている。
[編集] 各国等におけるボランティアの現状
- 米国
- 超高齢社会に向かいつつある社会背景の中で、アメリカでは定年退職者や高齢者の社会参加の一環として、若者の発展途上国でのボランティアを平和部隊として組織した先例に倣って、高齢者が学校や障害者、引きこもりの児童などに社会的なボランティアを展開するのをアメリコー(AmeriCorps、アメリカ部隊)と名づけて、連邦政府から経済支援を与えることにした。
- web上のボランティア
- WWW上のボランティアもあり、Open Directory Project、Wikipedia、the Virtual Library、青空文庫
などもある。
[編集] 日本におけるボランティアの概況
日本では古くより五人組・町内会・自治会・消防団など、地縁・血縁によって強固に結びついた相互扶助の慣習があったため、外部からのボランティアを広く呼びかけ、受け入れる仕組みや必要性は少なかった。また地域では民生委員など無給で社会奉仕活動を行う制度が以前から構築されてきた。
しかし財政の悪化から行政コストの一層の低減が叫ばれ、一方では都市化・核家族化による人口の隔たり・流動化が起きているため、有事の対応が迅速かつ的確に行える仕組みを維持することが困難になってきた。ボランティアは上記の状況を改善する新たな相互扶助の仕組みとしても注目されている。
1995年は、阪神・淡路大震災で全国からボランティアが被災地に駆けつけたことから、「ボランティア元年」とも呼ばれる。当該震災の日(1/17)を「防災とボランティアの日」としている。その後の地震や水害などにおいても、ボランティアが活躍している。
[編集] 学校課程におけるボランティア
ボランティアに取り組むことで自己成長の可能性が高められるなど、人生を充実する活動の一つでもある。高校生の交換留学などは、もともとはボランティアによるものである。
ただ、高校受験などに際して、ボランティア活動を行ったことでその経験が調査書に記載されていると、評価点を高くする学校もあり、入学試験に合格しやすくなる場合がある。このために受験での利益を第一目的としてボランティア活動をする人が出ている。
同じことが、高等学校の課程においても懸念されている。高等学校の場合、上級学校への進学や就職における自己アピールの材料として使われるなど、卒業後の進路内定という「対価」を得るための手段とされる傾向がある。大学など高等教育の課程においても、ボランティアが就職活動でのアピールや単位取得の手段として使われることもある。
また、ボランティア活動を課程の中に組み込むなどして義務化している学校もある。例えば東京都では、2007年度から都立高校で「奉仕の時間」を義務化する予定となっている。このケースでは全員1単位以上の履修が求められているため、自発性に基づく活動 とは言えず、本来の意味ではボランティアとは呼べない(定義としてはむしろ戦時中の学徒動員に近い)が、誤用のまま慣習的にボランティアと呼称されている。
安倍政権における「教育改革」で、「ボランティア」を必修科目にする提案もあるが、野党からは「ボランティア活動は強制ではない」「将来、国に対する最大のボランティア=戦争に駆り出すための布石」という批判もある。
[編集] 宗教団体によるボランティア
ボランティアは歴史的に宗教団体に遡ることが出来るが、現在の日本でも(欧米ほどではないにせよ)宗教団体によるボランティア活動は活発である。慣習的には(専従の聖職者ではない)信者による無償の奉仕活動が一般にボランティアとされる。 たとえばプロテスタント団体である救世軍は、非常に活発な社会奉仕活動で知られているが、他の宗派では牧師に相当する士官以上の階級の者こそ専従職員でありボランティアではないものの、兵士から下士官とされる階級の信者の活動は原則的に無償のボランティアである。
[編集] ボランティア休暇
企業の社会貢献元年(フィランソロピー元年)と言われた1990年に、富士ゼロックスが「ソーシャル・サービス・リーブ」として開始した休暇制度が「ボランティア休暇」「社会貢献活動休暇」などの名称で、主に大企業を中心に普及した。単発的に取得する場合を「ボランティア休暇」と呼ぶのに対し、一定期間、連続して休暇を取得する場合は「ボランティア休職」と呼ぶ場合が多く、「ボランティア休暇」が有給休暇扱いであるのに対し、「ボランティア休職」の場合は雇用保障だけで無給対応となる場合が多い。阪神・淡路大震災におけるボランティアの役割が広く認知されたことから、国家公務員にも「ボランティア休暇」が導入されることになり、その後、自治体の多くも「ボランティア休暇」を設けるようになってきた。しかし、職員が休暇を取得することで業務進行や業績に影響するような場合、制度があっても取得しにくいという課題がある。業務の特性から、年次有給休暇ですら取得しにくい企業・自治体もあり、ボランティアは有意義な活動としながらも、ボランティア休暇はあまり取得されていない。
[編集] チョボラ
ちょっとしたボランティアの略。街頭で偶発的に遭遇した事象(例:困った人)に手をさしのべることで、社会的人間性の向上を促すキャンペーンで用いられた。ボランティアの持つ言葉のニュアンスを利用したものであって、チョボラ自体はボランティアの定義外である。
[編集] 関連項目
- 勤労奉仕
- NPO
- 市民活動
- 地域おこし
- コミュニティ
- 有償ボランティア
- ライオンズクラブ
- 学校支援ボランティア
- 災害ボランティア
- 国際協力機構(JICA)
- 青年海外協力隊
- 国際交流基金
- ボラバイト
- 社会福祉協議会
- 日本赤十字社
- ボーイスカウト
- ガールスカウト
- キャンプカウンセラー
- ボランティアコーディネーター
- ボランティアセンター
- 合同ボランティアネットワーク
[編集] 外部リンク
- NHKボランティアネット
- 社会福祉法人 全国社会福祉協議会(全社協)
- 社団法人 日本青年奉仕協会
- 東京ボランティア・市民活動センター
- 社会福祉法人 大阪ボランティア協会
- 特定非営利活動法人 日本病院ボランティア協会
- 合同ボランティアネットワーク