早食い
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早食い(はやぐい)とは、食料や料理を兎も角早く食べる行為であるが、往々にして食べ方が見苦しくなりがちであるため、マナーに反する食べ方だといわれている。しかしその一方で、競技として確立しているなど、賛否両論がある。類型としては大食いがあるが、これも本記事で述べる。
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[編集] 概要
この食べ方は、特に忙しいサラリーマン等に多く見られる物で、以下の特徴がある。
古くから日本のサラリーマンの間では、早食いも芸(仕事)の内とする、一種の美学(?)があったが、近年では胃腸に負担が掛かり、消化器疾患を患う原因ともされているため、次第にそのような食べ方が改められるように成りつつある。しかし相変わらず忙しさのために食事の時間を削らざるを得ず、早食いに徹する向きも多いようだ。
[編集] 早食いと大食い
早食いの場合、満腹感を得るための消化・吸収と血糖値の上昇が間に合わず、多くの場合において満腹感を得た時点で大食いとなっている場合が多い事から、早食いは大食いと同義とされ、多過ぎる食品を素早く食べる行為は、一種の畏敬を持って語られる事も多い。
これは食事を楽しむ行為は人生における娯楽の、大きな部分を占めるにも拘らず、満腹に成ってしまえばどんな美食であろうとも中断せざるを得ないという事にも絡んでいると思われる。特に古今東西の美食家は、時に優れた消化促進剤を財に物を言わせて求めたり[要出典]、人によっては食べた傍から吐き戻して更に食べるなどの涙ぐましく、そして食に対する冒涜とも受け取られかねない行為を行っている。
[編集] やせの大食い
大量に食を摂取しても太らない体質の人を指す言葉である。原因は大きく二つある。一つは胃の形状である。胃が腸へと垂れ下がった形状をしている場合(胃下垂)、食べ物は胃に長くは留まらずに腸へと流れていく。もう一つは体温維持を図る褐色脂肪細胞を多く持っている場合である。これが活発な場合、摂取した余分なエネルギーは熱として放出される。
なお、マウス実験の段階ではあるが、大阪大学大学院医学系研究科の下村伊一郎教授の研究によると(2004年10月の報告、アメリカの雑誌ネーチャー・メディスンに掲載)、脂肪組織内にある酵素PTENを減らすことでやせの大食い体質になることがわかっている。
2005年05月19日、上記の下村教授の論文は捏造であるとの報道がなされており、米医学誌「ネイチャー・メディシン」に論文の取り下げを申し入れたということである。いくら食べても太らないマウスは幻となった。
[編集] 大食い・早食いの功罪
料理を作る側にとっても、常識の範疇内にある大食いや早食いは「作り甲斐がある」とも云われ、一部の料理好きな人には、大食いな人に対し喜びを感じることもあるとされる。特に大食いの者を称えて健啖(けんたん)とも云うが、良く食べ・良く働く事は一種のステータスと目されている。
もっともこれらは常識の範疇にある場合で、異常な早食い・大食いは時に非難される事がある。特に食事のマナーによる所が大きく、食べ方に見苦しい点がある場合は、特に嫌われる要因となりやすい。
[編集] 早食い競技
古くから、食に対する渇望から、腹一杯食べたいという欲求も根強く、それこそ無理矢理に腹一杯になるという催し物や競技は多い。日本ではわんこそば(岩手県)が良く知られているが、その他にも、特大のメニューを指定時間内で食べ終えたら代金は無料(その代わり食べ残したら実費を支払わなければならない)という飲食店の特別メニューや、テレビの特番物、地方町興しイベントとしての早食い競争は多い。特に近年にあっては食糧生産技術の向上により、食品が豊富にあることも、これら競技が成立する理由に挙げられる。
その一方で、飲食店においては大量の残飯(食品残渣)を生む可能性があることや、催し物に関しては早食いが元で喉に食べ物を詰まらせ窒息死する事件が起こる場合があったり、特にテレビ放送されるものについては、安全性などの観点からPTAや一般視聴者などから批判の声が多いため、これらを見合わせる動きもある。実際に2002年1月、愛知県の中学生が給食中にパンの早食い競争をし、喉に詰まらせて死亡する事故が起きた為、TBSやテレビ東京など当時早食い競争の番組を制作していたキー局は大食い・早食い競技を題材とした番組制作を取り止めていた。3年後の2005年4月に、テレビ東京が「元祖!大食い王決定戦」としてテレビでの大食い競技番組を復活させたが、依然としてこれらの番組に対する批判は根強い。
[編集] 競技としての早食いと大食い
早食い・大食いを競技として捉えた場合、一般的な定義(上記参照のこと)とはやや状況が異なり、
- 早食い競技 - 競技中に満腹感を感じないほどの短時間(通常は数分間)で競う
- 大食い競技 - 競技中に満腹感を感じるだけの余裕がある長時間(通常30~60分間程度)で競う
としており、早食いと大食いを別物とみなす場合が多い。土山しげるの漫画『喰いしん坊!』ではおおむね
- 早食い - 一定量の料理をごく短時間(目安として約30分以内)で完食する
- 大食い - ある程度時間(30分~60分程度)をかけ、その時間内にどれだけの量を食べられるかを競う
としており、「早食い=陸上の短距離走」「大食い=陸上の長距離走」というたとえで説明している。
特に早食い競技においては、非常に短い時間内で多くの食物を摂取しようとするあまり、喉に食物を詰まらせて呼吸困難に陥るなどの事故が起こる可能性が高いことから、素人向けの競技会においては近年早食い競技を回避する傾向が見られる。またかつて「日本大食い協会」(現在は消滅)会長だった岸義行は、「早食い競技と違い、大食い競技ではこのような死に至るような事故の起こる危険性は非常に低い」として「健全な大食い」という概念を主張していた。ただこれに対しては、小林尊が「水中毒に代表されるように、大量の食物や水分の摂取により体に異常をきたす場合もあり、そもそも『安全な大食い』というものは存在しない」と反論している。
一方で早食い競技を得意とする競技者(俗に「フードファイター」とも呼ばれる)の一部には、早食い競技をスポーツとして確立しようとする動きがある。日本では前記のテレビ番組中断のあおりを受けて現在その動きは停滞気味であるが、アメリカでは国際大食い競技連盟(IFOCE)という団体が存在し、『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』を始めとする数多くの早食い・大食い大会を主催しているほか、フードファイターの世界ランキングを定めている。近年アメリカのスポーツ専門テレビチャンネルであるESPNが『ネイサンズ~』の模様を生中継するなど、アメリカでは徐々に早食い競技がスポーツとして認知されつつある。
[編集] 大食い・早食いを題材としたフィクション
漫画・アニメ、ドラマなどのメディアミックスにおいて、大食い・早食いを題材としたフィクションも存在する。従来の料理漫画と異なり、料理を作るという描写はほとんどなく、食べるという行為の描写にウェイトをおいているのが最大のポイントである。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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