明石の姫君
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明石の姫君(あかしのひめぎみ)は、紫式部の物語『源氏物語』の作中人物である。明石の女御(あかしのにょうご)、明石の中宮(あかしのちゅうぐう)と、これといった呼称がないため成長するごとに名称が変わる。五十四帖中「澪標」から「手習」まで登場。
光源氏と明石の御方との間に生まれた一人娘。祖父の明石の入道が見た夢によって、将来は国母となる運命を約束されている。出自の低い母から生まれたため、源氏は娘を京の屋敷に引き取り、正妻格ともいえる紫の上の養女とし、高い教育を施す。明石の姫君は紫の上とは実の母子でないことは承知だが、愛情深い養母に育てられて、美しく生い立つ。
やがて明石の姫君は裳着の式を終え、東宮(後の帝)妃として入内する(殿舎は桐壺)。その当時の光源氏の権力はほかに並ぶ者がおらず、彼女は戦わずしてあっさりと第一の妃として遇される。その点、父光源氏の実母桐壺更衣とは対照的に描かれている。
明石の女御と呼ばれるようになった彼女は、入内して間もなく東宮の子を懐妊する。その子が男皇子だったため、明石の入道は満願成就となり、現世を捨て入山する。出産した明石の女御は、祖父や実母の犠牲や愛を、そのとき初めて深く知り、思いやり深い女性に成長する。
東宮との間にあまたの皇子、女宮を生む、貴族にしては珍しい多産系の女性。宇治十帖では、自由奔放な第三皇子の匂宮を案じる、世間並みの母親として登場している。