時定数
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物理学および工学において、時定数(じていすう・ときていすう)とは、線型系における1次の周波数応答を示す値であり、ギリシャ文字のτ で表される。 ※Time constantの邦訳語としては本来「ときていすう」であるとする説もあるが、学術用語としては「じていすう」が用いられる。
例として電子回路のRC回路(抵抗器-コンデンサ)、RL回路(抵抗器-コイル)がある。その値は磁気テープ、送信機、受信機、レコードおよび再生装置、デジタルフィルタなどの信号処理系におけるおける周波数応答の特徴を表すために用いられ、1次の線型系としてモデル化および近似される。
物理的には、時定数はシステムが最終値の約63.2%に達するまでの時間を示す。
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[編集] 微分方程式
1次の線型系は次の微分方程式で表される。
ここでは指数減少係数を表し、Vは時間tの関数である。
時定数は指数減少係数に関係している。
[編集] 一般解
微分方程式の一般解は次のようになる。
ここで
はVの初期値である。
[編集] 時定数の例
[編集] 電子回路における時定数
RL回路における時定数 τ (単位は秒)は次のようになる。
ここで、Rは抵抗(単位はオーム)、Lはインダクタンス(単位はヘンリー)である。
同様に、RC回路における時定数τ は次のようになる。
ここでRは抵抗(単位はオーム)、Cは静電容量(単位はファラド)である。
[編集] 神経生物学における時定数
ニューロンにおける活動電位において、時定数 τ は次のようになる。
ここで、rmは膜を横断する抵抗、cmは膜の容量である。
膜を横断する抵抗は、開放されたイオンチャネルの関数、容量は脂質膜の特性の関数である。
時定数は活動電位の上昇および下降を記述するためにも用いられる。上昇は
下降は
で表される。ここで電圧の単位はミリボルト、時間の単位は秒、τ の単位はミリメートルである。
Vmax は活動電位における最大の電圧として定義される。
ここでrm は膜を横断する抵抗、 I は電流である。
上昇において t = τ の時間が経過すると V(t) は0.63Vmax に等しくなり、時定数は Vmax の63%までに経過する時間であることを意味する。
下降において t = τ の時間が経過すると V(t) は0.37Vmax に等しくなり、時定数は Vmax の37%までに経過する時間であることを意味する。
時定数が大きくなるにつれ、ニューロンの電位の上昇および下降は遅くなる。長い時定数は時間的加算性、あるいはポテンシャルの反復の代数和に起因する。
[編集] 放射性元素の半減期
放射性同位元素の半減期 THL は時定数の指数関数に関係している。