有害情報
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有害情報(ゆうがいじょうほう)は、主に青少年がその情報に接することによって健全な発達・育成を阻害する恐れが有ると考えられているコンテンツの総称。日本においては第二次世界大戦後の悪書追放運動において「悪書」と呼ばれていたものが後に「有害図書」と言い換えられ、さらに情報技術の発達に伴いテレビ番組やビデオ、コンピュータゲーム、ウェブサイトなどを含めたコンテンツ全般を包含する表現として「有害情報」と呼ばれるようになった。
[編集] 有害情報の定義
- 狭義には性表現(わいせつ表現)や暴力表現を含むコンテンツを指すと考えられがちであるが、前者の場合は主に宗教的理由に基づく保守主義の論客から性教育に関する図書や教材自体が「有害情報」とみなされることもある(→性教育関連の事件)。
- また、韓国において「反愛国的」との理由で「親日派のための弁明」(金完燮)が有害図書指定を受けたり、竹島(韓国名・独島)を日本領とする記述を含むサイトが強制的に削除された事例のような政治的理由に基づき「有害情報」とされるものも存在する。この場合の「有害情報」の定義は、政権の姿勢や議会勢力・世論の動向などにより刻々と変化する点に注意が必要である。
- 近年では「完全自殺マニュアル」(鶴見済)が自殺を誘発するとの理由で有害図書指定されているが、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」も同様の理由で発禁処分を受けていた時代がある(→ウェルテル効果)。また、江戸時代には近松門左衛門の「曽根崎心中」や「心中天網島」など「心中物」の上演後に心中が増加したとの理由で幕府により上演が禁じられた。
[編集] 有害情報の指定主体
- 韓国やドイツ・オーストラリアなどの(主に、歴史的・宗教的背景を理由として)環境犯罪誘因説を自明とする世論が強い国においては国家や地方自治体が倫理審査機関を設置しており、漫画や映像作品・コンピュータゲームを中心に発禁処分が下されることも珍しくない。その一方で、環境犯罪誘因説に対しては青少年と有害情報の接触が犯罪に直接、結び付くことを立証した明確なデータが存在していないことから批判も多く、米国ではコンピュータゲームの提供規制を定めた州法が憲法違反で無効とされる事例が相次いでいる。
- 日本においては各都道府県が青少年保護育成条例に基づき有害図書指定を行う方式が採られている。憲法第21条には表現の自由が明記されているが、1989年の岐阜県青少年保護育成条例事件最高裁において地方自治体の有害図書指定は合憲とされており近年ではコンピュータゲームに対する有害図書指定も増加傾向にある。