心中
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心中(しんじ(ぢ)ゅう)は、相愛の二人が一緒に自殺すること。情死。転じて2人以上で一緒に自殺することにも用いる。正確に意訳できる英単語はなく、日本独自の死生観と言われる。
心中とは他人に対して義理立てをする意味で用いられていたが、江戸時代には、刺青や切指等の行為と同様に男女の相愛を意味するようになる。情死を賛美する風潮も現れ、遊郭で遊女と心中する等の心中事件が増加して社会問題となる。
幕府は心中は漢字の「忠」に通じるとしてこの言葉の使用を禁止し、相対死(あいたいじに)と呼んだ。心中した者を不義密通の罪人扱いとし、死んだ場合は「遺骸取捨」として葬式、埋葬を禁止し、死ねなかった場合は非人身分に落とした。1722年には心中物の上演を禁止した。
情死を主題とする物語を「心中物」という。近松門左衛門の『曽根崎心中』、浮世草子『心中大鑑』等が知られる。
[編集] 心中の種類
- 情死
- 相愛の男女による心中。この世で結ばれないことから、来世で結ばれることを願う。
- 一家心中
- 一家そろって自殺する事で、家族心中・親子心中ともいう。子供に関しては、ほとんど無理心中の形であると考えられる。自分が自殺しようとしたとき、自分の子(稀に親)が現世に一人残されるのを不憫に思い、子(または親)を殺して自殺すること。実質的な無理心中だが、日本では悲劇として語られることが多かったため、分けて考えられる事も多い。
- 無理心中
- 相手の合意無く行われる心中で首謀者が相手を殺害する。実際には大半を占めると思われる。これは立派な殺人であり、首謀者が生き残れば当然殺人罪に問われる。特に親が子供の意志や人権を無視して殺害・心中に及ぶケースが多く、問題になっている。
- ネット心中
- インターネットの自殺サイト等で知り合った見ず知らずの複数(通常3人以上)の他人が、一緒に自殺すること。お互いに全く繋がりがないという点が、従来の心中とは異なっており、社会問題として取り上げられる事が多い。
[編集] 関連項目
[編集] 関連書
- 堀江珠喜 『純愛心中』「情死」はなぜ人を魅了するのか 講談社現代新書 講談社 ISBN 4061498258
- 小林恭二 『心中への招待状』華麗なる恋愛死の世界 文春新書484 文藝春秋 ISBN 4166604848
- 仲晃『「うたかたの恋」の真実』ハプスブルク皇太子心中事件 青灯社 ISBN 4-86228-003-X C1022