杉山正明
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杉山 正明(すぎやま まさあき、1952年(昭和27年) - )は日本の男性歴史学者。静岡県沼津市出身。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。2006年現在、京都大学大学院文学研究科教授。専攻はモンゴル史、中央ユーラシア史。
モンゴル帝国史、特に東アジアを支配した初期のモンゴル帝国や元の研究にあたり、それまで日本のモンゴル史研究が中国史料の『元史』等に偏重していたと批判し、『集史』等のペルシア語史料やパスパ文字碑文等のモンゴル語史料をも積極的に利用して多角的に読み直すことによりモンゴル帝国史に新たな視点を見出し、多くの業績を上げている。2006年(平成18年)4月29日には紫綬褒章を受けた。
杉山は、1990年前後から、研究論文だけでなく、一般の読者向けに自身や日本の研究者の最新の研究成果を活用してモンゴル帝国史を説く概説書を数多く著すほか、複数の中国通史の概説書においてモンゴル帝国・元のパートを執筆しており、日本におけるモンゴル帝国史研究の第一人者と目されている。1995年には著書『クビライの挑戦 モンゴル海上帝国への道』(朝日新聞社)でサントリー学芸賞を、 2003年にそれまでの業績に対して司馬遼太郎賞を贈られた。
杉山は特に啓蒙書などの叙述において、モンゴル帝国主体からの視点によって中国史料やヨーロッパにおける叙述の視点の偏り、それを「鵜呑み」にしてきた旧来の欧米や日本の歴史学界におけるモンゴルへの視座を否定的にとらえ、モンゴル帝国の残虐性を糾弾する先人を批判し、モンゴル帝国の持っていた先進性を評価する。また、モンゴル帝国の時代における世界の各地域を、グローバルなモンゴル・中央ユーラシア世界と内向きな中国・日本・ヨーロッパ等という対立的な見方においてとらえる杉山は、彼の本来の研究領域である東アジア世界の叙述において、南宋・明などのモンゴル帝国に敵対した中国王朝の為政者や、耶律楚材などのモンゴル帝国に仕えた中国系官僚の役割をモンゴルのグローバルな視点から読み直す叙述を盛んに行っているが、こうした態度には「モンゴルに肩入れするあまり、モンゴルに敵対した者や、モンゴル支配の屈辱を晴らすために称揚された者を過度に軽視している」という批判も受けている。
[編集] 著書
- 大モンゴルの世界-陸と海の大帝国(角川書店 1992年6月 ISBN 4047032271)
- モンゴル帝国の歴史(著者:Morgan David 角川書店 1993年2月 ISBN 4047032344)
- クビライの挑戦―モンゴル海上帝国への道(朝日新聞社 1995年4月 ISBN 4022596252)
- モンゴル帝国の興亡(上)軍事拡大の時代(講談社 1996年5月 ISBN 406149306X)
- モンゴル帝国の興亡(下)世界経営の時代(講談社 1996年6月 ISBN 4061493078)
- 耶律楚材とその時代(白帝社 1996年7月 ISBN 4891742356)
- 世界の歴史9(中央公論社 1997年8月 ISBN 4124034091)
- 遊牧民から見た世界史―民族も国境もこえて(日本経済新聞社 1997年10月 ISBN 4532162297)
- 世界史を変貌させたモンゴル―時代史のデッサン(角川書店 2000年12月 ISBN 4047021040)
- 逆説のユーラシア史―モンゴルからのまなざし(日本経済新聞社 2002年9月 ISBN 4532164249)
- チンギスカンとモンゴル帝国(著者:Roux Jean-Paul 創元社 2003年10月 ISBN 4422211714)
- NHKスペシャル 文明の道5(日本放送出版協会 2004年2月 ISBN 4140807798)
- モンゴル帝国と大元ウルス(京都大学学術出版会 2004年2月 ISBN 4876985227)
- 流沙の記憶をさぐる―シルクロードと中国古代文明(著者:林梅村 日本放送出版協会 2005年3月 ISBN 4140810297)
- 中国の歴史8-疾駆する草原の征服者―遼 西夏 金 元(共著者:礪波護 講談社 2005年10月 ISBN 4062740583)