椹木野衣
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椹木野衣(さわらぎのい、1962年-)は、美術評論家。埼玉県秩父市出身。
同志社大学文学部(専攻は科学哲学)を卒業後、1987年から1990年にかけて『美術手帖』(美術出版社)編集部に在籍。1991年に評論集『シミュレーショニズム ハウス・ミュージックと盗用芸術』(洋泉社)を刊行。シミュレーション・アートとハウス・ミュージックを〈サンプリング・カットアップ・リミックス〉というキーワードで横断的に論じ、1990年代の文化を予見した。1992年にはレントゲン藝術研究所で展覧会『アノーマリー』を企画、村上隆やヤノベケンジを美術界の新しい波として紹介した。1995年の「地下鉄サリン事件」をきっかけに戦後日本美術の論考に転じ、1997年に『日本・現代・美術』を刊行。戦後日本には「歴史」がなく、蓄積なき忘却と悪しき反復を繰り返す「悪い場所」であると論じ、大きな波紋を起こした。2005年にはその続編というべき『戦争と万博』を刊行。大阪万博と太平洋戦争の類似性を「万博芸術」という観点から語り、話題となった。
実証的な美術史とジャーナリスティックな解説の二極分裂に陥りやすい日本の美術評論界にあって、例外的にアクチュアルな視点を提供している貴重な評論家といえる。日本の現代美術をリセットすると公言して賛否両論を巻き起こした『日本ゼロ年』(水戸芸術館)など展覧会のキュレーションを行っているほか、2003年のイラク戦争の際には〈アート=反戦ユニット〉「殺す・な」を組織し、アクティヴィストとしての面も見せている。現在、多摩美術大学美術学部助教授。
[編集] 著書
- 『シミュレーショニズム ハウス・ミュージックと盗用芸術』 洋泉社、1991年。
- 『ヘルタースケルター ヘヴィ・メタルと世紀末のアメリカ』 トレヴィル/リブロポート、1992年。
- 『資本主義の滝壺』 太田出版、1993年。
- 『神は細部に宿る 最新対論』 村上龍/椹木野衣著、浪漫新社、1993年。ISBN 4847011961
- 『テクノデリック 鏡でいっぱいの世界』 集英社、1996年。ISBN 408774129X
- 『原子心母 芸術における「心霊」の研究』 河出書房新社、1996年。ISBN 4309262902
- 『日本・現代・美術』 新潮社、1997年。ISBN 4104214019
- 『22世紀芸術家探訪』 エスクァイアマガジンジャパン、1999年。ISBN 4872950682
- 『平坦な戦場でぼくらが生き延びること 岡崎京子論』 筑摩書房、2000年。ISBN 4480823433
- 『黒い太陽と赤いカニ 岡本太郎の日本』 中央公論新社、2003年。ISBN 4120034712
- 『戦争と万博』 美術出版社、2005年。ISBN 4568201748
- 『美術になにが起こったか 1992-2006』 国書刊行会、2006年。ISBN 4336048010
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